マトリの戦い
館林和則ことイチは、報告書を書き上げてから、チョココロネに手を伸ばした。
美しいらせんを描く円錐形のパン。チョコレートもカスタードクリームも好きだが、やはりチョコレートが、色といい、味のコントラストといい、最高だと彼は信じて疑わない。
それを、あいつは、「ぎっしりと先まで詰まっているかどうか」の方が大事だと抜かしやがった。
イチは――いや、本名、菅野正高はサンを思い出してムスッとした。
「どうした、スガ」
同僚が声をかけた。
「ああ、いや。一緒になった公安の捜査官なんですがね。メロンパン推しなんですよ。チョココロネをお子様と言いやがったんです」
「何?ケッ!これだから警察のやつらはだめだってんだよ」
「そうですよね!」
「一番はジャムパンに決まってるだろうがよ!」
「は?」
「いや、聞き捨てならねえな。焼きそばパンだろうが?」
「待てよ。ベーグルだろう?」
「ベーグルだあ?真ん中の穴がどうも食べづらくていけねえよ。やっぱりカツサンドだと俺は思うね」
そして厚生省でも、仁義なきパン戦争が始まろうとしていたのだった。
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