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公安部公安総務課魔術係   作者: JUN
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人類の淘汰(2)広がる騒動

 いくら不穏な発言を削除しようと、魔術士に暴力を振るったり脅したりする人を逮捕しようと、騒動は沈静化しない。

 そればかりか、溝が深まってさえ行くようだ。

「魔術士は新しい人類だ。旧人類の中に新人類が生まれて来た時も、きっとこんな風だったに違いない」

「今は少なくとも、その内魔術士が普通になるだろう。そうすれば、世界に適応していくのは魔術士だ」

「魔術士と能無しは、種として別物になっているのかもしれない。だから魔術士は魔術士同士で子孫を残し、人類を淘汰していくべきだ」

 そんな発言も出始めた。

 それに、研究者まで真面目な顔で、

「魔術士が新しいヒトの形だというのも、あながち笑い話ではないかもしれない」

などと言い、騒動は収まる気配がなかった。

 そして実際に結婚でも、「相手が魔術士だから」という理由で反対する親も出ているという。


 そんな中、公安の別の部署が、新しい情報を掴んだらしい。

「新しい警備会社ができたらしいわ。現場の隊員は全員が魔術士の、少数精鋭をうたう部署が売りの」

 笙野が言った。

「それは、時期が悪かったんじゃねえの」

「魔術士が攻撃されるんですものね。

 あ。でも、そういう魔術士から警護の依頼が来るんですか?」

 ヒロムとマチが言う。

「それはどうか知らないけれど、奇妙な事があるわ。SNSで魔術士が危険だと吹聴したり、そういう意見のグループを焚きつけるような書き込みをしている人が、解析班の仕事で、この警備会社の関係者にもいるって確認された」

 しばし、全員が考え込んだ。

「え、何で?」

「自分で自分の首を絞めるだけでしょう?」

「あ!やっぱり魔術士からの警護依頼目当てですよ!」

「何かそれってなあ」

 どうにもしっくり来ない。

 と、笙野がまた口を開く。

「それと、今朝若手政治家のリーダーとか言われている大前議員が、『これからは、魔術士もそうでない人も、上手く共存していかなければいけない。それがこれからの世界の姿だ』って言って、魔術士と容認派の一般人から支持を集めたわよ。

 それでこの大前議員は、そのマギ警備会社の麻木社長とズブズブの関係だって事も掴んだわ」

 あまねは、それがどういう方法で得た情報なのか少し気になったが、公安的手段に違いないと思い、訊くのはやめた。

「それでも、この意味がわかんねえなあ」

 ヒロムの言う通り、なぜマギの社員がそういう動きを取ったのかがよくわからない。

「まあ、裏がありそうだから用心しろって事よ。取り敢えずは。つまらない言いがかりを与えるんじゃないわよ」

「何でオレを見てるんだよ、係長」

「解散」

「おい」

 ヒロムは文句を言っていたが、笙野の机の前から離れる。

 その時、また新しいニュースが飛び込んで来た。

「おい、昨日玉突き事故があっただろ、中国地方で」

「ああ。8台が絡む事故だろ」

「現場に魔術士がいたのに魔術を使って助けなかったってえらくネットで叩かれてたんだがな。本人が、魔術士とバレたら何をされるかわからないのに、そんな怖い事できないって反論したのが昨日の深夜だ。

 それに、人道的でないとか噛みついて、それに対して、今までやって来た事が人道的かどうか胸に手を当てて考えてみろとかいう意見が出て、あとはもう、言い合いだ。

 で、さっき、とうとう居合わせた本人の家が燃やされて、大騒動らしいぞ」

 皆驚いて、各々パソコンやスマホを開き始めた。

「ますます、大変な事になって行くなあ」

 しこりを残さずに、元のような関係に戻れるのだろうか、とあまねは心配になった。

 ヒロムも、真剣な顔で唸る。

「ここまでこじれるのも、マギや大前の計算通りなのか」

「だったら、ますます理由がわからん」

 ブチさんが唸って溜め息をついた。



 

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