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あちらの悪役令嬢は前世が猫だったようです。  作者: 藤 都斗


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そんでもってこうなった

 



 女の子が可愛いのは必然である。

 そして愛猫が可愛いのも必然である。


 プラスされて、可愛いが天元突破するのも必然である。


 なんだ、俺正常だわ。

 なんもおかしくないね、普通だ普通。


「セン! 貴様、この俺を無視するな!! ジャス! 奴を捕らえろ!」

「かしこまりました、殿下」


 なんかキレ始めた王子が、ほぼ空気と化していた赤毛の次期王国騎士団長候補君を(けしか)けてくる。

 彼は元平民である為、王子の側近の中で一番低い地位にいる事もあり、逆らう事が出来ないのだろう。ある意味被害者である。めっちゃ可哀想。


 なんか視界の端に映った王様が口パクでやっちまえって言ってたのでやっちまう事にします。

 お許しが出たぜ! やったぜ! 俺の生存する可能性が大逆転してMAXになりました!


 赤毛君は、元平民であるが故に魔法の才能は余り無い。

 つまり彼は、近接戦闘以外で俺に勝つ事は出来ない。

 ならば、やる事は一つだ。


「うっせぇなクソ殿下この野郎、さっきから聞いてりゃグダグダとなんなんだよ?」

「なっ!?」


 赤毛君を拘束の魔法で無力化し、その辺へ転がしながら、堂々と言い放つ。


 まさに一瞬の出来事である。

 俺めっちゃ頑張った。すごい俺。


 なお彼は可哀想な人なので、後で何かしら救済措置を取ってあげたい所だが、まぁ、今は無理そうなので置いとこう。


 自分の出来る最大のカッコ良さを引き出すつもりで、バサッと貴族服のマントを(ひるがえ)した。


「この際言わせて貰うけどな、お前がやってる事は完全な弱いものいじめだぞ?」

「ふん、何を言うか、エトワールの苦しみに比べれば、こんなもの足りない位だ!」

「ほーん、じゃあ具体的に何されたん?」

「周囲の者を使い、エトワールに嫌がらせをしたのだ!」


 どーん! とか効果音が付きそうな勢いの王子の言葉がかなりの声量で辺りに響き渡る。

 ビックリしたクロがまたびゃっと飛び上がったので、その華奢な身体をそっと受け止めた。

 めっちゃいい匂いするしめっちゃ柔らかいしめっちゃ軽いどうしようずっとこうしてたいしかも可愛いし顔スリスリしてくる可愛いヤバい。


 いかんいかん、落ち着け俺。


「例えば?」

「悪評を振り撒き、エトワールを孤立させた!」

「いやそれさっき眼鏡から聞いたし、なんか別のやつ無いの」


 眼鏡!? とか眼鏡がビックリした声上げてるけど眼鏡は眼鏡なので眼鏡なのです。

 あれ、何言ってんだ俺。まあいいや。


「エトワールの制服を破き、本日着るはずだったパーティードレスまでも台無しにした!」

「いや、それ学園から貸し出しのやつだよね? 全部防護魔法掛かってる筈だけど」

「え?」

「え?」


 ポカーンとした間抜け面を晒す彼等に嫌な予感しかしない。


 うちの学園、下位貴族の制服は購入ではなく、貸し出し制なのである。

 購入するとめっちゃ高いから、仕方ないね。


 だがしかし、生徒手帳やパンフレットにも載ってる基礎知識にも関わらず、何も知らなかったらしいこの人達が怖い。待ってホントにどういうことなの。


「いや、え? じゃなくて、制服に防護魔法掛かってなかったら魔法とかの授業どうすんだよ」

「ぐっ、確かに……!!」


 いや、なんで言われないと気付かないんだよ馬鹿なの?

 もしかしてだけど、下々の生活とかに全く興味無いのかこの王子。


 え、やだ、こんなんが王様になるかもしれなかったとか恐怖しかない。


「だけど! パーティードレスはどう説明するのさ! 僕達は現にバラバラになったドレスをこの目で見たよ!」


 双子の内の、どっちか全く分からん片方がやいのやいの抗議の声を上げる。


「あのなぁ、学園の備品に防護魔法掛けない訳ないだろ」

「ち、違います! ドレスは、このパーティの為に、一年掛けて縫っていくんです!」


 思いっ切り溜息を吐き出しながらの俺の言葉に、意外な返答がエトワール嬢から返ってきた。


「え? じゃあもしかして女子のドレスって皆自分の手作り?」

「はい、だから、私、せっかく作ったのに……起きたらバラバラに……!」


 目に涙を浮かべ、何かを我慢しているかのように唇を震わせたかと思えば、両手で顔を覆い隠し肩を震わせるエトワール嬢。


 色々震わせ過ぎて一瞬バイブ機能付いてんのかと思ったけど違うよねこれ。


 そんなエトワール嬢を痛ましげに見詰めながら、王子はその肩をそっと抱き、キッとクロを睨み付けた。


「聞いただろう。その女は最低な、悪女だ!」


 怒りも(あら)わにキッパリと言い放つ王子。


 だがしかし、そんな事はどうでも良かった俺は、クロの頭をよしよしと撫でた。


「マジかよ、クロ、このすっごい綺麗なドレス自分で作ったん? めっちゃすげぇやん」

「なぅー?」


 ふおー!! 首傾げたよこの子めっちゃ可愛いいいいい!! あああ! 神様ありがとうございます!! 可愛い!! 何この子可愛い!! ヤバい!! 語彙力が死んだ!!


「おい、貴様、いい加減にしろ!!」

「あ、ごめんごめん、何の話だっけ」


 クロが可愛い過ぎて一瞬記憶が死んだわ、なんだっけ。


「エトワールのドレスの事だ!」

「あー、そうだったそうだった、クロ、なんか心当たりある?」

「んにゃあ、にゃうー?」

「うんうん、そうかー、分からんかー、しかたないねー、よしよしよしよし」


 わしゃわしゃと頭を撫でると、んなーん、と機嫌良さげに鳴きながらゴロゴロを喉を鳴らすクロ。


 何を言ってるのか全く分からんし、何も察することが出来んかったけど、めっちゃ可愛いからいいや。


「あ、あの……」

「はい、なんでしょう」


 観客(ギャラリー)の中から、一人の令嬢が手を上げ、何か言いたい事があるのを察した俺が先を促す。

 すると意を決したように、真剣な眼差しの令嬢が、口を開いた。


「エトワールさんのドレスですが、作っている所を見た事がありません」


 おっと、予想外の事実が発覚しそうだ。


 

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