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哀れなる貪欲の獣 もはや皇帝の姿とどめず

「男……なのかい?」

 リタがもつれる舌で尋ねた。

 裾の長い白銀のドレスに、淡い金の髪を結い上げた美女が、たよりなげにもたれていたはずの場所に、見知らぬ男が座っている。暗い、排他的な目をして。

「さっきまでは女だったぞ、間違いなく」

 その手を握って走ったウルは、じろじろと男を眺めまわしている。しかしどんなに見つめても気のせいということはなく、そこにいるのは確かに男だった。

 姿変えの魔術については本で読んだことがあるが、この目で見るのは初めてだ。それも、服装や性別まで変わるなんて。

 でも、きっとこちらが本来の姿なのだろう。グウィオンという名前が偽名でなければ。


「フィンが、星巫女の偽物は凄腕の魔術師に違いないって言ってたけど、詠唱もなしにこんなことができるものなんだねえ!」

 リタが興奮して言うと、グウィオンは皮肉っぽく笑みを浮かべた。

 こんなものはわけもない、とでもいうように。

「フィンは悔しがるでしょうね、これを見逃して」

 今は追いかけてきている最中だろうか、世界の不思議全てを愛する盟友がかわいそうになる。

「あいつは肝心なものを見逃す運命なんだろう」

 意地悪なウルの言い草は、そこそこ的を得ているのかもしれなかった。言われてみると彼には、絶妙な間の悪さがある。


 それにしても、魔術は不思議だ。魔術師というのはそもそもが希少で、目の当たりにする機会は少ない。

「ちょっとだけ触ってもいい……?」

 平らな胸のあたりを凝視しながら思わず口にすると、グウィオンは胡乱げなまなざしをよこし、ウルは頭を軽く小突いた。

「どんな神経してるんだ、お前は」

「だって! 信じられないんだもの。一体どんな仕組みなの?」

「突然女神になった女の言うことか?」

 言われてみれば確かに、と妙な納得をしていると、リタは丸い目をますます丸くして、頓狂な声をあげた。

「女神? は? どういうことさ?」

 説明を求めたり求められたりするうちに、馬車は次第に人気の少ない田舎道に入り込んでいった。少し速度を落としたのは、道が悪いせいだろう。気を抜くと、揺れで頭を打ちそうになる。


 状況はややこしくなるばかりだが、色々な説明はフィンとも合流してから、ということになり、ようやくこの馬車の行き先が気になり始めた。ファニーがいるのだからおかしなところに連れていかれることはないだろうが、あとどれくらいかかるのかも分からない。

「まだしばらく走るのですか?」

 ゲルダも同じことを気にしていたらしい。初対面のリタに、おずおずと尋ねている。

「どうかねえ。侍女さんはあてがあるみたいだったよ。あの人、エルスターのお嬢さんなんだろう?」

「ええ、ファニーなら、そこら中に伝手があるわ。……もしかして、国外ってこともあったりして」

 国外逃亡の可能性だってあることに気づくと、何だかそわそわしてきた。王宮の外へ出るようになったのもここ数か月のことなのに、急に世界が開けたみたいだ。

 もうあの宮へ帰ることはないのだと思うと寂しいような気もするが、まだ見ぬ世界にわくわくする気持ちも否めない。


「モリやノラたちに、お別れを言えなかったわ。すごくお世話になったのに」

 それだけが、唯一の心残りだったが、

「いつか会えるよ。死んだわけじゃないんだからさ」

 リタがさも簡単そうに言うので、そうかもしれないと思えた。これが今生の別れとは限らない。

 何といっても、今のトゥランは神なのだ。まだ自分の力の全てを掌握したわけではないが、会いたい人に会うことなんて、案外何でもないことなのかもしれなかった。


 そんなことをあれこれ考えながら窓の外の闇を眺めていると、揺れたはずみに窓枠へ打ち付けそうになった額を、アロイスの手がすんでのところで止めた。

「おいで。何も見えない外よりも、僕を見てほしいな」

 ごく正直な願望を口にしながら、トゥランを膝に抱き上げる。

「遠慮という言葉を忘れたようだな」

 途端に呻りだしたウルも、抑止力にはならなかった。会うごとに文句を言われ慣れているアロイスは、聞き流してトゥランの顔ばかりのぞき込んでいる。馬車の中だって明るくはないのだが、頬を愛おしげに手のひらで包むと、満足げに息をついた。


「やっと目があった」

「アロイスったら。これから一緒なのよ。顔なんていつでも見られるのに」

「一生見つめても、見つめ足りないよ」

「そんなに面白い顔かしら……」

「ふふ、きみは自分の可愛さに無頓着だね」

 自分が不細工だとは思わないトゥランだが、可愛いと思ったこともないので、目をぱちくりさせる。アロイスのこの褒め言葉は、何度言われても自分のこととは思えない。


「お前変わった趣味だな……」

 黙って聞いているのが堪えられなかったらしいウルが呟くと、ゲルダがぺちんと額を叩いた。

「失礼ね。さては、可愛い妹がとられて面白くないのかしら」

 思ってもみなかったのだろう、ウルはもはや絶句し目をむいている。

 そこへアロイスが大真面目にトゥランを抱きしめ、「渡せませんよ」などと言うものだから、ウルはもう相手にもしたくないとばかり、顔を背けてしまった。

「もうどこでもいいからさっさと着いてくれ」

 ウルにとっては、なかなか辛い旅路になりそうだった。



 夜も更ける頃、馬車は灯りの付く屋敷の前で止まった。周りは鬱蒼とした森が繁り、民家の気配はない。

 きょろきょろしながら馬車から降り、すっかり固くなった肩や首をまわしていたトゥランは、屋敷の中から現れた人の顔を見て頓狂な声をあげた。

「モリ!」

 すっきりと伸びた背筋にきびきびとした痩躯。宮で出迎える時と同じ角度で頭を下げた姿は、見間違えようもない。

 思わず駆け寄って抱きつくと、モリは多少驚いたようで、何度か無言でまばたきをした。

「どうしてここに? どうやって? ファニーのおかげなの? ノラはいる?」

 立て続けの問いにひとまず「落ち着いてください」と宥めると、モリにしてはごく珍しく、柔らかな笑みを浮かべた。

「ここにいるのは私だけです。ノラは家に帰らせました。どうやって、というのはまた後ほど。ひとまず、中へお入りください。部屋の準備ができています」

 トゥランの荷物を引き取ると、まるで長年そこに住んでいるかのような迷いのない足取りで、屋敷の中へ入ってゆく。


 質問攻めにしたいのをぐっとこらえて着いてゆくと、屋敷にはモリの他にも幾人かの使用人がいた。

「お嬢様、無事にお付きで」

 真っ先にファニーへ声をかけたところを見ると、やはりここはファニーが手配してくれたらしい。

「ファニー、ここはエルスター家の別邸?」

 尋ねると、案の定だった。

「はい。滅多に使ってないんですけど、周りに民家はないし、隠れるにはうってつけの場所でしょう? 昼間に急いで使いを送ったんですが、準備が間に合って良かったですわ。さ、とりあえず居間で落ち着きましょう。追っ手は来ていませんし、当分は大丈夫だと思います」


 避暑のための別邸らしく、内装は涼しげな色合いで、瀟洒にまとめられていた。とにかく重厚で豪奢な貴族の屋敷と違って、間取りや装飾品にはところどころ斬新さがあり、遊び心が見て取れる。

「素敵な家なのに、普段は使っていないのね」

「ええ、年に一度も訪れない別邸も多いですわ。でも、こうして思わぬ時に役に立つこともあります」

 何気ない口調で言うファニーは、王宮を出れば桁外れの「お嬢様」なのだと改めて思い知る。そんなことも知らなかったことが少し寂しい。長い間一緒にいて、主従を越えた関係だと思っていただけに。

 もっとも、単なる主従を越えているからこそ、こうして危険も顧みず助けてくれたのだろう。それもちゃんと理解してはいる。


 勧められるがままに居間のソファに腰かけると、隣にはアロイスが、向かいにはウルとゲルダとリタが、そして隅の椅子にグウィオンが無言で続いた。

 グウィオンには拘束具を何もつけていないが、特に反抗もせずについてくる。弱っているとはいえ、逃げ出すこともできそうなものだが、何か思惑があるのかもしれない。ひとまず、危害を加えてくる気配はない。


 やがてモリが軽食と飲み物を運んできて、自分も端の席についたので、おやと思った。宮でのモリは、いつも部屋の隅か別室に控えていて、同じ席についたことはなかった。

 さらに驚いたのは、開口一番にファニーが、モリに尋ねたことだった。

「まずは無事で良かったですわ、モリ。でも、どうやってここへ来たんです?」

 てっきりファニーが手引きしたのかと思いきや、違うらしい。

「屋敷の場所は教えましたけど、馬車は断られたんです。だからどうやって来るつもりかと思っていたんですけど」

 と補足されて、トゥランはますますわけが分からなくなった。勝手知ったる場所のごとく振る舞っているのに、モリがここへ来たのは今日が初めてだという。


「私に馬車は必要ありませんので」

 モリの説明もまた、説明になっていない。

「元々、場所も知っていました。念のため確認しましたが、定められたとおりに事は動いています」

「どういう……」

 そう尋ねかけた口はぽかんと開いたまま、しばらく閉じられることがなかった。

 椅子に座したモリの姿がにわかに輝き、もやがかったかと思うと、痩身の老女の姿は消え、美しく若々しい女の姿に変わったのだ。白髪交じりの髪は輝くような銀髪へ。生真面目なまなざしはそのままに、神経質な皺の刻まれていた肌も若木のような瑞々しさを取り戻している。

 その日二度目の姿替えを目の当たりにして、リタが声を裏返した。

「あんたも魔術師だったっての!?」


 しかし、そうではなかった。いや、それ以上のものだった。

 モリはじっとトゥランを見据えると、十二年越しの秘密を打ち明けた。

「私はアウレリア様の侍女でした――あの方が天にいらっしゃった時から」

 その一言で、たくさん積もっていた謎が、少しずつ動いて流れ出すようだった。

 トゥランのことを何でも見透かすように知っていたモリ。王宮の者は誰も信じるなと言いつつも、侍女だけは信用できると断定していた母。

 モリだけは何もかもを知っていたのだ。それなのに、自分からは何も教えてくれなかった。トゥランは何もかも、報告していたのに。聖堂で母の気配がしたことも、ヒエロニムスの詩が母の字で残されていたことも話したのに、初めて知るような顔をしていた。母が無事で、いつか会えることも、トゥランの持つ本当の力のことも、知っていて言わなかったのだ。


「どうして……言ってくれなかったの」

 ようやく知った真実なのに、嬉しいと思えないことが悲しかった。騙されていた、という思いが湧いてきてしまうことも。

「アウレリア様が望まれたのです。誰かに言われたからでなく、あなた自身が自らの意志で選び取るものを見たいとと仰られた。そのために己の存在まで、あなたの前から消したのです」

「どうして? どうしてそんなこと」

「あなたが新たな守護女神だからです、トゥラン様」

 モリの答えには、少しも納得できない。

「……女神だと、お母さまに会えないの? 黙っていなくなられるのが当たり前なの?」

「人の子として生きてこられたあなたには、まだお分かりにならないでしょうが、神には神の生き方があります。その手に帯びた力の分だけ、重いものを負っていらっしゃることをよくご理解ください」

 言葉は恭しいけれど、口調はよく引きこもり姫を叱っていた侍女頭の頃と変わりない。


「だって知らなかったもの。最初から教えてくれていれば、もっと自覚を持ったと思うのに。私、もうみんなを守る気はないと言ってしまったわ。何もかも、急だったんだもの」

 つい恨み言を口にしてしまう。本当は、伝えたい相手は母なのに、この期に及んでも現れてはくれない。

“力が充ちれば会える”と言っていたのに、それはもしかして、祝福を与えに来た、あのたった一瞬のことだったのだろうか?


「答えのみ得ようとしても、意味はないのです、トゥラン様」

 モリの口調には宥めるような響きがある。

「焦ることはありません。ようやく予言は成就し始めました。あなたはこれから多くの人と出会い、事を成し、やがて全き力を取り戻すでしょう。その時、アウレリア様は必ず会いにいらっしゃいます」

「予言って……ヒエロニムスの? それとも、ヒエロニムスはお母さまなの?」

 そこが一番、よく分からなくなっているところだ。

 それについての答えも、モリは携えていた。


「ヒエロニムスは、人間です。かつてある女神と交わって、未来視の能力を得た男……。彼は、やがてこの世に新たな守護女神が現れることを知り、詩に残しました。アウレリア様は、その詩を利用したのです」

「利用?」

「自らその詩を書き写すことで予言をまじないに変え、ある制約を設けたのです。この予言が成就するごとに、あなたの力が取り戻されるようにと。それまで、あなたの力を封じられ、しばらくはただの人の子として生きるようにと願われたのです」

 トゥランは粟立つ腕を押さえながら、ヒエロニムスの詩を思い出そうとした。


 女帝去る

 いまだ輝かぬ星

 暁も宵闇も知らずまどろみ

 恋人の囁きに目覚めん


 虚ろな唇に玉座は傾き

 哀れなる貪欲の獣 もはや皇帝の姿とどめず

 星待たずして朽ちる黄昏 夢は叶わじ


 この中の「星」は、自分のことだったのだ。とすると、「恋人」はアロイスで、「皇帝」は父王のことに違いない。そして、「女帝」が母アウレリアだ。

 父の死に様は、これまでの威光が嘘のように呆気なく、惨めだった。「哀れなる貪欲の獣」という容赦のない表現が妙に腑に落ちて、ますます悲しくなる。

「……王様はどうなったの?」

 静まり返る中、恐る恐るリタが尋ねた。

 馬車で待機していたリタやファニーは、聖堂で起こったことを知らないのだ。

「死んだ」

 ウルは簡潔に答えてから、ちらりとグウィオンを見やり、言い直した。

「殺された」

「……そう。じゃあ、本当に予言の通りになったんだね」

 いつになく歯切れ悪く言うと、リタは気づかわしげにトゥランを見た。ほとんど名ばかりとはいえ、父が死んだのだ。冥福を祈るべきかどうか、考えたのだろう。


 だがリタが再び口を開く前に、ウルは続けた。

「聖堂が大騒ぎになってる最中、こいつが突然女神の力に目覚めた。アウレリア妃殿下が一瞬現れて、祝福を授けて、消えて……」

 こうして振り返ってみると、確かに予言通りになったのだと実感する。そして、空恐ろしくなる。まるで、何一つ選ぶことが許されないような気がして。


「私の未来は全部決められたものなの……?」

 物語の登場人物になりたいと思ったことは何度もあった。勇敢な女騎士に憧れ、世界を股にかける吟遊詩人をうらやんだ。けれど、実際に誰かの書いた物語の登場人物になってみると、これほど絶望的なことはない。

「どうあがいても、予言の通りにしかならないの?」

 ヒエロニムスの詩は抽象的で、具体的に何が起こるのかはよく分からない部分が多い。それでも、これから起こることが分かっているというのは、ひどく気持ちが悪い。自分の思考回路を誰かに乗っ取られたようで。


「ヒエロニムスは、ただ未来を視たのです。あなたを従わせようとしているわけではありません。未来はあくまでも、トゥラン様が選び取るもの。恐れることはありません」

 モリの言葉に納得するようなしないような、奇妙な心持でいると、アロイスが肩を抱き寄せた。そのぬくもりに包み込まれると、少しずつ気持ちが落ち着いてくる。何があっても大丈夫だと思える。

 けれどこの「恋人」の存在だって、予言されていた。それがアロイスだとは書いていなかったけれど。ヒエロニムスは、アロイスと寄り添う自分の姿を、ずっと昔に見たのだろうか。

 何だかうまく言い表せない気分だ。


「アウレリア様の伝言を一つ、預かっております。今日ここへ来たのは、それを伝えるため……。私の仕事はここまでです」

 突然、話を切り上げにかかったモリに驚いて、声をあげる。

「待って、まさかこれでお別れなんて言わないでしょう?」

 まだ聞きたいことはたくさんあるのだ。それに、ずっとそばで見守っていてくれた人がいなくなるのは寂しい。厳しいこともよく言われたけれど、公明正大なモリのことは好きだったのに。

 だが、モリの瞳に揺らぎはなかった。

「今生の別れではありません、トゥラン様。ですが、私はアウレリア様の元へ戻らなくては。あなたの力と時が充ちる時、またお会いしましょう」

「どうして? これまでずっといてくれたのに」

「あなたはもう、お一人ではありませんから」

 そう言って一同を見回したモリの口元には、微笑みが浮かんでいた。


「人の世を謳歌なさいませ、トゥラン様。あなたの変容の力はあなた自身をも翻弄するかもしれませんが、必ず望むところへたどり着けます――アウレリア様のお言葉です。私自身もそう思っています」

 モリは立ち上がると、両手を胸の下に揃え、几帳面にお辞儀をした。引きこもり姫の侍女頭だった時のように。

 そして引き留める間合いも与えず、その姿は見る間に掻き消えた。一筋の風が、カーテンや服の裾を揺らして吹きすぎたのを最後に、モリの気配はなくなっていた。


 呆気にとられて、誰も何も言えないでいると、おもむろに使用人が入ってきて一礼した。

「お連れ様がおいでになりました」

 まだ、頭がうまく働かない。呆然としたまま入り口をのろりと見つめれば、気取った足取りのフィンが片手を上げて入ってくるところだった。

「遅くなって申し訳ない。これでも飛ばしてきたんだ。おかげでもう尻が痛くて……失敬。女神や貴婦人の前で言うことではありませんね」

 上機嫌で再会を喜ぼうとしていたフィンは、そこでようやく、異様な雰囲気に気が付いた。

「……どうして無言なのかな? それに幽霊でも見るような目で見て、そんなに待たせてしまったかい」

 

 一気に、その場の空気が弛緩した。

 はあ、と誰からともなくため息が伝染する。

「つくづく間の悪いやつだな」

「肝心なところで外すんだよねえ、フィンってさ」

 誰も説明してくれないものだから、フィンはファニーのそばまで歩いてゆくと、跪いて手をとった。

「素晴らしい屋敷ですね、ファニー嬢。首尾よく事を運ばれたその手腕に感服いたします。賢く美しく、最良の女性とはあなたのような方を言うのでしょう。どうかあなたの崇拝者たるわたくしめに、接吻のお許しをいただけますか?」

「挨拶の許可を得るのは無粋でしてよ」

 ファニーはそっけなく言うと、手を引っ込めてしまった。

「これは失礼。お会いできた喜びで少々舞い上がってしまいました。ところで、あちらの御仁はどなたです? それに、偽星巫女もとい、魔術師殿が一緒ではないのですか?」


 聖堂で起こっていた一部始終を見ていたフィンは、グウィオンが起こしたことやトゥランの覚醒を知っている。その代り、その後に起こったことを知らない。

 一方でファニーとリタは、聖堂で起こったことを知らない。

 結局、最初から最後までをもう一度おさらいする必要がありそうだ。

 一行は再びため息をつくと、まだまだ長くなりそうな夜を前に、ひとしきり腹ごしらえをはじめるのだった。


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