間違えられたお姫様は攫われなかった。
※主人公はとても口が悪いです。つっこみはポンコツ、エセ関西弁から〇子口調までなんでもありです。心の広い方のみお読みください。
書きたいネタはいっぱい浮かぶんですけど文才がないのですみません。
そしていろいろな部分で不快になられたらすみません。
毎回同じような残念な子が誕生するのは作者の頭の中がそんな感じだからなのかもしれない。これはもう仕方のないことなのでご了承下さい。
攫うって漢字、合っていると信じております。
先に沢山謝っておきますけど、誤字脱字、文がおかしい等いろいろ見逃しながらマイルドにお読み下さい。それでは、よろしくお願いいたします。
「じゃっじゃーん!! 見て見てヒスイ!! スーパーパミコン!! 買っちゃった!! 懐かしいな~小学生の時によくやったもんよー、あの頃はお父さんもまだ生きてたし、よく一緒に遊んだな~攻略本も一緒に買ってね…って! こらこらこらー!! アダプターの線かじっちゃダメー!!」
あたしの愛する翡翠は、それはそれは可愛い灰色のオスウサギである。あたしは愛する彼と二人暮らし(一人と一羽ともちろん知っている、気持ちの問題です! キリッっとな)
「今プレイしようとして思うけど…、お姫様って楽だなぁ~、攫われても助けてくれるの待ってるだけでいいし、魔王からも勇者からも愛されて条件良いほう選べばいいわけじゃん、このゲームのお姫様なんて15歳だよ!? 15歳で攫われて、助けられて結婚してハッピーエンドって、まぁ今考えると全部他人任せのそんな人生どうなのって思っちゃうよね。ねぇ、ヒスイは魔王と勇者どっちがいい? えっあたし?? ふふっやっぱ勇者でしょー! まさに王道だし!!」
そう、全部独り言だ。それもわかっている(泣)
ヒスイは聞いてるよーって感じに私の足元に寄り添ってくれてるもん。
ヒスイはあたしが20歳の時に一人暮らし記念に貰ったミニウサギ(雑種)だ。かれこれ11年も連れ添っている、人間でいうと超おじいちゃんな年齢な長生きウサギさんである。最近彼はじっとしてることが増え、食も細くなってしまった。あたしは毎日、彼との別れに怯えていた。
ある日会社から帰ると、ヒスイはお気に入りの座布団の上で苦しそうに丸まっていた、今朝あげた食事がまるで減っていない、水も飲んだ形跡がない、うんちも出ていない、意識はあるけれど、呼吸はなんだかいつもより早く、苦しそうだ。
あたしはヒスイのかかりつけの動物病院へと急ぐことにした。
ウサギを看れる動物病院へは車で20分。
「ヒスイ? 大丈夫? 苦しい? 待っててね、もうすぐ動物病院につくから」
死なないでヒスイ、あたしを独りにしないで
ここであたしの記憶は終わっている…。
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「おー! ティムじゃねぇか! ずいぶん久しぶりだなー! 1本買ってけよ!!」
「おっちゃん!! そこは奢るとこじゃないのかねぇ? しゃーないなぁ、じゃあ一本もらうわ、いくらだ?」
代金を払い、おっちゃんから肉の串焼きを受け取る。久しぶりの城下町を探索した後の肉の串焼きはうまいね~と呑気に肉をかじりながらのんびり城のほうへと歩く。
完璧に少年に見えるがあたしはこの国の王女様である。
今日はお忍びで男の子の恰好をして城下町をぶらぶらしているのだ。愛読書の新刊発売日である。
身代わりになってくれた仲良しメイドさん、イヴリンへのお礼は今城下町で人気のお菓子とマルみっこベリーティーを買った。愛読書の新刊も買えた、串焼き肉はうまいし、ほくほくだ。
さてそろそろ帰るかと、城への帰り道、城壁に近づくにつれ、ざわざわと人が集まりだして、兵も増えてきた。
なんだか様子がおかしい?
やばい、男装して抜け出したのがばれた?
ここ一年くらいは週一くらいのペースでやってるけど一度もばれたことないのに…??
あたしと兄様(現国王)は二人兄妹。
あたしは王位継承者の兄様に何かあった時用の保険中の保険。
保険として、それは大事に大事に育てられた。なんと王城の中でも守りが堅いと言われる西塔の最上階で生活しているのだ。まぁほぼ監禁状態。
ただあたしは魔力がすごくあるので、たまに窓から飛んで抜け出したりしている。
今日は息抜き設定の日、王女の休日である。
いつもの抜け穴から城壁の中へ、薔薇やらなんやらの茂みに隠れて様子をうかがう。
どうやら騒ぎの中心はやはりあたしの部屋のある西塔のほうだ。
煙!? あたしの本!!
「急げ!!姫が攫われたぞ!!」
「誰かっ!!火を消せー!!」
「魔族だーーーー!!奇襲だぁ!!」
んん!? ヒメガサラワレタだと…
「お逃げください!! カイン様!!」
「待て、妹が! 姫が!! ティアナーー!!!」
「ティアナ様はもうここにはおりません! ここは危険です! 床が崩れるかもしれません! カイン様っ!! お逃げくださいっ!!」
「ティアナーーーー!!!!」
そんなに燃え盛ってはいないけど煙が出てる所もある。あっでも寝室だけか、今にも崩れそうな塔。
壁が破壊されて半分丸見えの私の寝室。部屋のギリギリで上空に手を伸ばし叫ぶ兄様。ちょっと遠いけどあたしの視力は抜群、あれは兄様だ。
あたしの部屋の構造は塔の最上階の二階部分、天辺が寝室、その下が生活スペースである。よかった、あの感じ壊されたのは寝室の壁だけか~。
あう、本の無事はとりあえず置いといて。
やばいやばいやばーい!!
はーいって言ったら殺されるな…。 あらやばい。
やばいやばいやばいやばい、これはやばいぞー!!
こりゃあのゲームの魔王の姫誘拐イベントだ。
なんてこったい、イヴリンが攫われてしまった!
おきるはずの予定だった一昨年おきなかったから、もう来ないのかなーと思って油断してた。
いやだってあのゲームのお姫様15歳でしたよね? あたしもう17歳なったがな。
今日かよー、聞いてないよー。
もう! ちゃんとアポとってよー。そんな予定ないからあたし外出してたやん。
間違えて誘拐してんじゃないよ! そりゃイヴリン美人だし、ナイスバディだし、今日はあたしの髪色のカツラかぶってあたしのドレス着てんよ? でもさぁ普通間違えるかなぁ…。
イヴリン32歳だよ? 十代じゃないって、よく見りゃわかるよね!?
あたしだって15歳だった二年前まではちゃんと休まずお姫様モードで頑張ってたのよ? ちゃんと毎日それっぽいドレス着て、毎日平和を祈ったり民に笑顔ふりまいたり、おしとやかな美少女演じたわけよ。
城からもほとんど出なかったし。
でも来なかったじゃんかー、イベントがゲーム設定の二年後ってどういうことよー。
もう誰かが未来変えてくれて魔王なんていない感じなのかしらって思ってたわー。
なんで忘れた頃に? しかもあたしの中で休日に襲ってくるかなー、今日はOFFの日なの!
やめてよ~、代役の人攫われちゃうと困るよ~ほんと、どうしよ…。
魔王アホなんじゃん、あたし無事なんですけどー。
イヴリン孤児だし、なんの人質効果もないんですけどー。
あっでも兄様の初恋ってイヴリンって噂とかあったかも。
いやでもお姫様ではないからな、イヴリンのために勇者探ししてくれたりはしないだろうな。
いやいや待てよあたし。イヴリンに罪はない。しかもあたしのわがままに付き合ってくれて、姫様はもう、仕方ないですね、って入れ替わってくれたやん。
美人だし、たわわなおっぱいのナイスバディだし、きっと魔王城で魔族達から卑猥な攻撃を受けて怯えると思うと…。
魔王許すまじ!! イヴリンの美しい身体は見世物じゃねぇぞ!!
皆様こんにちは、あたしはティティアナ・メリストーン。花の17歳でっす。
このメリストニア大陸、メリストーン国の王女様なのです。メリストーン国は山にも海にも面した美しい大国です。最近父様が引退して兄様であるカインが王になったばっかな平和な国でっす。
あたしの外見は金髪に水色瞳、背は少し低めだが今は標準(だと信じている)体型。
黙っていい感じの表情さえしていれば、それはもうなかなかの美少女でっす。
そしてお約束、あたしには前世の記憶がある。自分の名前は忘れてしまったけれど日本人女性。愛してたペットの名はヒスイ。断片的な記憶だが、前世では事務職で必ず定時で帰る生活をしていた。
趣味はゲームとアニメと漫画と二次小説と…オールマイティなオタクでもあった。特にゲームは昔のゲーム機が好きで、スーパーパミコン、プネイステーニョンのファンタジーゲームが好きだった。
あたしがメリストーン国に生まれて、3~4歳かなぁ?なんとなく物ごごろついた頃、兄様と隠れんぼして遊んでて、ノリでつい忍び込んだ宝物庫、そこで厳重に保管された豪華な剣を見つけた。
あっあれ勇者にしか鞘が抜けない聖なる剣やんって。
すごーい!! 説明書のイラストに描いてあったのと同じだぁ!!
ティティアナ・メリストーン……メリストーンって!!
あのゲームの国と同じじゃん!!
これはもしや噂の異世界転生ってやつ?
前世何度も遊んでいたあのゲーム、『メリストリア・ファンタジー』通称メリファン。
主人公が勇者系のファンタジーゲーム。
剣のイラスト思い出せたけどキャラクターのイラストを思い出せないのはなぜだ…。
ドットの状態ならちょっとわかるかも
ゲームの大まかな流れは、美しい姫様が魔王に攫われる→兄である王様が伝説の剣抜ける人国中から探す→主人公が伝説の剣抜く→剣抜いたから勇者ってことでに姫奪還依頼する→勇者と聖女と魔法使いと盗賊と武道家とかと一緒に旅に出る→頑張って魔王討伐する→姫救出して王国帰る→姫嫁にもらってハッピーエンドてきな…。
おやーそうなるとあたしはあれか?
攫われるお姫様かーい!!
てことは15歳で魔王に攫われるってことじゃないかーい。
ほんと、昔ながらのすごく平凡なゲームだった気がするの。道中いろいろあるけどとりあえず魔王は魔王城にいるし。姫が攫われる理由はそれはそれは美しい姫様だからってはず…。
それはそれは美しい姫様て…笑
うそでしょーあたしが?
確かにさらさらの金色の髪も鮮やかな水色の瞳も透き通るような白い肌も、いい感じな外見じゃんとは思ったよ。兄様美形だしね!
なるほど今はまだ幼すぎるけど、攫われる予定の15歳にはきっと絶世の美少女になっているだろうな、うん。
はい! そう思ってた頃もありましたー!
17歳の現在(現実)はもう、なんかちんちくりんよー。
背は低いし、胸は綺麗なお椀型だけどそんなに大きくない。そんなに細くもないちょいむちっとしてるし、いや、これは標準体型! 顔は整ってるんだけどねぇ…。
なんだろ? 表情かな? 基本ニヤニヤしちゃうからかな? なんかちょっと残念なのよね。
いや15歳の時はもうちょっと痩せてたし、あんまり大口開けて笑わないようにとか気を付けてた、うん、15歳の時はすれ違う時に、「姫…ほう…美しい…」とか言われてた、うん。たぶん。
いやだってもう誘拐来ないし、いいかなってなるじゃん、うん。
はい! 回想は置いといてー。
よしっ、このままイヴリン助けに行こう!!
そんでちょっと頑張ってイヴリンと入れ替わろう、そうしよう。
ストーリー通りお姫様が攫われたってことにしといて、勇者頑張ってもらおう!
しれっと入れ替わってイヴリン助けて、魔王にあたしで我慢してもらって
助けられたら勇者と結婚しよう!!
行くぞー!! おー!!
でも一人ではなんか寂しい…。
こっそり誰か拉致ろうかな?
あたしがイヴリン助けて入れ替わっても、帰り送ってあげる人いないと心配だしな。
魔術はあたし一人で十分いけるし…剣士だな。
今日はお忍びで散歩に出ただけだから、つまみ食いできる程度のほんのお小遣いしか持っていない。
こんなはした金じゃギリ魔物倒せるレベルのCランクの冒険者すら雇えないぞ。
むむむぅ……。
とりあえず見つかる前に出発して道中考えるかな、と風の精霊の力借りて、ふわりと浮く。
そんなこんなで考え事をしながら王都を出発。
あたしは王女なのでこの大陸の地図はアバウトに頭に入っている。
恐らく魔王城があるはずの北のほうへと飛行して急ぐことにした。
ギリギリ魔王領とメリストーン国との境目にある村、ノンビリィネ村が見えてきた。
ノンビリィネ村には冒険者ギルドがあるし、適当に剣士さんでも雇おうかな。
今のあたしの恰好は魔法で髪を茶色にして一本に結び、すっぴん、胸はさらしで潰して、大き目シャツにベスト、太い黒ベルトに茶色ズボンに黒ブーツ。誰がどう見ても少年である。
まあ大丈夫だろう。ノンビリィネ村に寄って行こっと。
村に近づく。
あっあれー?
なんと村の入り口から顔なじみの騎士が出てきた。
ジェード・ロックイル。27歳独身。
灰色にも見える銀髪は背中までの長さを一本結びに、浅黒い肌色、美形だが基本無表情。眼光鋭い系、青緑の瞳。長身でがっちりめだけどギリ細マッチョ的な図体。イケメン。全体的になんか黒いけど騎士っぽい恰好してる。邪魔らしくマントはなし。
そう、人々に恐怖とも畏怖ともいえる感情をもたらす男。現在我がメリストーン国、騎士のトップ、騎士団長で、兄様である王様の親友である。
なかなか過保護で融通聞かない性格。父様にあたしを塔に閉じ込めろと助言したのはこの男だ。
あたしが物心つく頃には王族の護衛騎士をしていて、父様とも兄様とも仲がいい。
あたしには口は悪いし態度も悪いけどなんか一緒にいるとすごく落ち着く…頭堅くてムカつくけど。
あたしの魔法の先生でもある。
会うたびやたらとお菓子や果物を食わせたがり、ダイエットの敵である。そのせいでちょっとぽっちゃりしてきたわ!
あたしはこいつをロックと呼んでいる。小さい頃はロックイル団長とか呼んでたけど、だんだんめんどくさくなってロックになった。
なんか兄上のみが知る過去があるっぽいけど、とりあえず鬼のように強い。
現在は騎士団長として王族護衛、のんびり王都暮らし、の予定だったが最近魔族の動きが活発で様子見としてノンビリィネ村に派遣されたんだっけ。
忘れてた。「俺がいない間に城を出たら殺す」とか言ってたかも。いやだってまだ一か月もたってないし、ロックのことだから三か月くらい帰ってこないだろうと思ってつい気にしてなかったや。
これはまずい、見つかったら捕まってお説教&強制送還だ。
よしっ剣士がいないのは心もとないが、魔王領へと乗り込んでしまえ!! とロックから背を向け飛行速度を速めようとしたら…
こちとら上空、届くはずのないあたしの耳に、地鳴りのような低い囁きが。
「ティム…。今すぐ降りて来い。」
ギクッと固まった。なぜその名を!! 町人しかしらないはずなのに!!
振り向いてロックへ視線を向ける。獲物を見つけた猛禽類のような眼があたしを見ていた。
そしてもう一度囁いた。こんな上空にいるのになぜ聞こえる…。こわっ。
「ティティアナ姫、降りてこい。」
ひっっ、ばーれーてーるー
降りろ、さもないと殺すぞとでも言ってるかのような眼だ。
こわい。こわいよー。あんたそんなんじゃモテないよーって関係ないか…。
あたしは前世からなのか、なかなかのМ。だからそんなあんたが結構好きよって、ちっがーう!!
うお~、どうするっと一人もんもんしてたら、風の魔法が切れ、あたしは真っ逆さまに落っこちた。
これも前世からなのか、あたしはジェットコースターとか落ちる時あの独特のフワッと感がダメなのだ。
飛んどいてなんだが、ほんと飛んどいてなんだが、今まで一度も落ちたことはない。
必ず集中して最後まできれいに着地していた。なので落ちるのは今世で初体験である。
恐怖っ!!目をつぶる!!
「うきゃあぁーっ!!」
ドッスン!! シーン…。
んっ、んんん? 痛くない?? あたし死んだか??
なんだか身体全体が温かく、誰かに包まれているような…。
「おい小娘。」
ぱちくりと目を開ける。
「ひっっ!! おっおほほほっ!! あらー、ロック、ぐっ偶然ねー。見回りかしらご苦労様。」
なんとあたしはロックの腕の中だった。ナイスキャッチ。最近ちょっと体重の増えたあたしを真下で受け止めるとは…すごいな、こやつ。
安定の無表情。お姫様抱っこである。近い…
「なぜここにいる? お前は攫われたと聞いたが」
「やっやぁねー、なんで今日の今さっきの出来事なのにもう知ってるのよ? 」
「魔道具で王から伝令が来た、姫を攫った魔族の群れが通るはずだから姫を取り戻せと」
「あっそっそうなんだっ! でっ通ったの!? 」
「通ってない。先にお前が来た。」
えー、うそん、ちょっといつの間にか追い抜いたのか?
それともワープてきなのでもう魔王城に行ったのかな?
ゲームだと城襲われて攫われる所しかでないからなー。
魔王城までどう連れてかれたのかわかんないんだよねー。なんか黒い翼つけて飛んでる魔王の腕に気絶した姫抱えて飛んでった気がするんだけどな。そしたら空じゃん、会うはずじゃん、途中でワープ地点でもあったかな?
「とっとりあえず降ろしてよロック!」
「ダメだ。なぜここにいるのかの説明が先だ」
「説明するから降ろしてー、近い、近すぎなのよ!! そんなアップじゃ話せない!!」
こちとら箱入り娘だぞ! 無表情でも怒っててもイケメン。ドキドキするがな。しぶしぶロックは降ろしてくれた。
「いやぁ、あのですね…今日は本の発売日だったから町に行きたくて…イヴリンに変装してもらって身代わりしてもらいましてですね…その、城に帰ったら、なんと兄上があたしを呼んで叫んでまして、部屋が軽く半壊してまして、どうやら私が攫われたらしいんですよね……それで推測するにイヴリンが攫われたんだと思いまして、こりゃあまずい、となりまして、いやだってイヴリン孤児だし、攫われたのがあたしじゃないってバレたら助けに行ってくれなくなっちゃうし…ストーリーが…ごにょごにょ…」
「ほう。」
「まぁとりあえずちゃんとイヴリンと入れ替わろうと魔王城行くところです」
「……」
はぁ~とため息をついてこめかみを抑えるロック。なんだろ灰色っぽい銀髪が白髪に見えてきた。お爺ちゃんかな。
「入れ替わる…阿呆だな。…ティアナ、お前がここ数年頻繁に城を抜け出しているのは知っていた。お前には探知魔法がかけてあり、俺が追跡できるようになっているからな。」
「えっなにそれ、こわっ! てかロック、あんた毎回話し方! あたし王族! 王女様だかんね! ほんと会うたびお前お前って、あたしのが身分上なんだからねー!」
ぶーぶーお前とか呼び捨てとか騎士としてどーなのよー、おっと思わず小言が…
このストーカーめ!
「お前へのお前呼びは王であるカインから許可を得ている。お前より俺のほうが強い、以上だ。」
キー!! 兄様めっ!!
「魔王を殺しに行ってやるからお前は今すぐ城へ帰れ。ついでに生きてれば侍女も連れ帰ってやる」
「いやいやいや、無理だから、魔王特殊な結界張ってて通常攻撃効かないし、伝説の聖剣でもないと攻撃きかないから! そういう感じだからね! 勇者のみ! 倒せるの勇者か聖なる魔法のみ!」
んっ?聖なる魔法? 魔王の周りに貼ってある闇の防御結界だっけ?
光の魔法か聖剣でしか切れないっていうやつ。
あれー、あたしもロックも光の魔法使えるんでね?
なんか昔光の精霊様とも契約した気がするぞ?
あんま怪我しないし、アンデットと戦わないしで最近使ってはないけど…使えるな。
聖剣いらなくね?
「どんな奴だろうが俺は殺せる。」
「あったぶんソウデスネー」
「お前は必要ない、城に帰れ」
「ダメだよ! あたしいなかったら魔王と一緒にイヴリンまで殺しちゃいそうだもん!」
それにあたしが今帰ったら、あとはロックイルに任せて大丈夫だろうと言われる。王様(兄)が国中の剣抜ける人探して、剣抜けた勇者が旅に出る目的がなくなってまう。
我が国の勇者出現イベント自体がなくなってまう。
大好きなゲームが台無しよ。
どんな勇者かとか気になるし!きっと黒髪の美少年とかだろうし!
ドット絵の感じならわかる! やはり黒髪だ!
魔王様は赤い髪して黒いマント着て角ある感じ!
見たい!せっかくなら見たいし、結婚してもいいんじゃないかな!
ひとりでニヤニヤ考えて笑っていると。
「ろくでもない考えばかりだな」
ロックの呟きが聞こえた。
「とっとと行くぞ、お前が外にいるとろくなことにならない」
「はーい!! 待っててね! イヴリン!!」
攫われた姫にあたしはなる!!
ところ変わって魔王城
はやっ!はやいよ!
さっきまでノンビリィネ村の入り口だったのに、冒険もなにもあったもんじゃないよ!
ロックがチートすぎて笑えないよ!あたしを右肩に担いだと思ったら、左手でパチンとならしただけ。
場面が変わって魔王城らしきとこの魔王の部屋てきなとこに出ちゃったよ!
えっなに、この人、マジやばい。
魔王逃げてー
てか魔王の部屋かな?謁見の間かな? 誰もいないんだけど…
早く来すぎてまだ帰って来てないのでは…
フライングじゃん、おかえりー魔王様じゃん! なにそれこわっ!
魔王からしたらめっちゃこわーい!
「ろっロックさんや…降ろしてくだせぇ」
さっきから腹が苦しい、あんたお姫様を樽のようにかかえるってどうなの。
確かにお姫様抱っこは恥ずかしいと言った、でもこれはないでしょ、頭に血が上るわ!
そっと降ろされた。
「誰もいないな」
いや、いないだろ!
あーちょっと気持ち悪、肉の串焼きが戻ってきそう…
「いや、まだ道中なんじゃないかな、うっぷ、にしてもロックみたいなワープ魔法?って誰でも使えるもんなの?」
「知らん、気づいたら使えるからな、カインに教えたがこんなん無理だと言っていたな」
「ならあたしも教えてー」
兄様に比べたらあたしのが魔力あるし、できるかも!
「ダメだ、お前に教えたらロクなことにならん」
「ふんだ!」
なにやらロックがごそごそと懐をあさっている。
「それよりティアナ、クッキーがある、食え、」
なんでやねーん!
「いりません! ちょっと今そういう状況じゃないでしょ!? しかもさかさまになってたからちょっと気持ち悪いっての!」
「そうか…」
しゅんってなった。まったく、所かまわず美味しいお菓子をくれちゃってもう!
最近二の腕がプルプルしてきたし、ドレス苦しいし、しゃがむとお腹ひっかかるし、明らかに太った。原因は顔合わすたびに菓子を差し出してくるコヤツのせいじゃ。深窓の姫が呆れるわ!
「帰ったら食べるから、持ってて。…お土産ありがとう」
「あぁ」
ちょっとだけ嬉しそうだ。長年の付き合いで無表情が読み取れるあたしすごいな。
バーン!!
と入口の扉らしきものが開いた!!
「はっはっはっー!!ついに姫を手に入れたぞ!!」
「むぐーっ!!」
魔王様とイヴリンの登場である
イヴリンは目隠しと猿ぐつわされて、魔王様にお姫様抱っこされている
ドレスの胸元は少し破れ魅惑の谷間が、スカートがめくれあがって魅惑の太ももが見えている
うっわセクシー
大人の魅力全開、さすが30代! 十代の小娘には出せない色気だわ…
そっと自分の胸元を見る、さらししてるし、ぺったんこ。
「俺はお前くらいがちょうどいいと思っている」
と聞いてもいないのにロックが呟く。さらししてるんだからね! いつもはもっとあるんだからね!
ぱちりとあたしと魔王と目が合った
「なっ!! なんだ貴様らは!?」
あっ気づいた。
「ここが魔王城と知っての!!!!?」
ドーン!!
まぶしっ!!
魔王&イヴリンが吹っ飛んだ
セリフ言う前である
「いっ!!イヴリーンっ!!」
いきなり特大光魔法ぶつけるとか!こわ!!
あわわわわ
「大丈夫だ、侍女には結界を張ってそこに移動させた」
「えっ!?」
いつの間にかイヴリン横にいた
「えぇえ!! すっご!」
っと、イヴリンの目隠しと猿ぐつわを外す
「えっ……、姫様? なぜ…」
イヴリンは周りを見渡し
「これは、どういう…」
あたしは、はははーと汗。
衝撃で瓦礫に埋もれた魔王、瓦礫から手だけ出ている、
あっピクピクしてるー
冷めた眼で魔王見てるロック。
えっ、登場のセリフも言わせてくれないとか、コワイ。
「ふむ、もう一発いるか」
「やめてー!! やめたげて!! なんか可哀想だよ!!」
ロック、こわっ!どっちが悪役かわかんないよ!!
チートすぎるよ!
「ひっ」
と怯えるイヴリン。
ほんと、どっちが魔王だかわかんないって
こういう人が冷酷無慈悲ってやつ?
あんまり怒らせるのやめよう。
「お前が言うなら殺すのはやめてやろう、目的は達成したし、帰るか」
「うっうん…そうだね、イヴリンに怪我もないようだし…」
なんか騒がしくなってきたし
「魔王様ー!!」
「なっこれは!?」
「魔王様はどこに!?」
わらわらといろんな魔族達が集まってきた。魔王様を掘り起こした
目をつぶって瀕死の重傷だ…
なんか可哀想
「貴様がやったのか!! よくも我らの魔王様を!! 人間の分際で!!」
あっなんか仲間やられた勇者とかのセリフ…
「ふん、だとしたらどうするのだ?」
えぇ…、大変、魔族滅ぼしちゃうよ!絶滅しちゃうよ!
ゲーム始まらな…あれ?
このままでは勇者に会えないのでは?
結婚…ハッピーエンド…
「待って待ってロック! あたし勇者見てみたいんだって!」
「は?」
「攫われたお姫様助けにくるはずなのよ!」
「…いつ来るんだ?」
「わかんないけど、ゲームだと…、うーん…、勇者選抜して仲間集めてって考えると、一か月はかかるんじゃないかなぁ」
「かかりすぎだろ、無駄な時間だ」
せっかくの『メリストリア・ファンタジー』、メリファンがぁ
いや別に結婚してハッピーエンドとか、現実は結婚してからのが大変だからいいのかもだけど、
やっぱせっかくゲームの世界に生まれ変わったなら主人公には会ってみたいじゃん
そもそもロックのような最強騎士はゲームにいないぞ。
まぁお姫様が間違えられるのもおかしいんだけど…
でもストーリー変わっても主人公とその仲間たちは会ってみたい!!
このまま帰ってまたお城で引きこもりとかつまんない!!
「無駄でもいいじゃん!!会ったら帰るから~、お願いします」
「はぁ、仕方ない、また脱走されたら面倒だしな。その代わり、勇者とやらに会ったら城に帰って俺の言う通りにしろ」
「はーい!! わかったー!!」
「おい、魔王とやら、起きろ!」
とロックが魔王に黒い塊を投げ、魔王が吸収
ぴしっと起きた
「はいっ!! ロック様!! お話は伺っておりました!! すぐにお部屋をご用意させていたします!!」
と土下座した、他の魔族達も魔王にならう。
「ロックイル様とよべ。ティアナ、そこの侍女はどうする?」
「あっイヴリン!」
「私も残りとうございます、ロックイル様、元は私の責任、私だけ国に戻るわけにはまいりません。姫様の身の回りのお世話をさせていただきたいです。」
「じっ侍女だと!? 姫では!?」
「あっそっか魔王さん気づいてなかったんだっけ、姫はあたし」
えっ!!と魔王があたしとイヴリンを見比べる…、主に胸部を
「絶世の美少女…これが…少年ではないのか…」
魔王が小さく呟いた。
聞こえてるよ! 失礼だな! やっぱり殺しちゃおうかな。
一か月後
「は~い、魔王様、クッキーですよ~、あ~ん」
「あ~ん」
平和だ…。
いちゃこらする魔王とイヴリン。最初自分を攫った魔王に怯えていたイヴリンだが、
魔王が「だって、すごく美人だし、声もきれいだし、女神様のようで好みだったんだもん」とか、イヴリンが30代と知っても「だからこんなに若くて美しいのか…、」とか実は魔王は120歳で全然年上なことを明かし、イヴリンは美人さんだけどたまに後輩から年増の行き遅れとか陰口言われてたらしく、角はあるけど、美形でイヴリンにメロメロな魔王様に絆されてしまった。
姫の立場は複雑…
ここはあたし達に与えられた豪華な部屋。さらしは苦しいから取ったけど楽だから男装のまま。ベッドの上でゴロゴロ本読むあたし、長いソファで魔王を膝枕したイヴリン。
ロックは暇らしく近くの洞窟にドラゴンを狩りに行っている。
もはや突っ込みまい。
「あっ姫様、そういえば勇者一行とみられる者たちがモースグダーの洞窟あたりに到着したとの報せがありました」
「あっそうなの、それってあとどのくらいで魔王城に着くのかしら?」
「そうですねぇ、実力にもよりますが、勇者となると、あと一か月というところですかね」
「え~、まだそんなにかかるの? もう~、長いなぁ~、退屈だよ~」
「ロックイル様とご一緒に行かれたらよろしかったのでは?」
「ロックと行くと太るから嫌」
そう、ロックと行動すると、歩かせてくれない、すぐ休憩させてくる、菓子を食わせる、運動してないからお腹すいてないのにずっと食べさせてくるのだ。過保護め。
「魔王様~、今度はプリンですよ~、は~い、あ~ん」
「あ~」
「きゃっ」
イヴリンが食べさせようとしたスプーンがすっとんだ。タイミング合わなくて歯にでもぶつかったのか?
「も~う、魔王様ったら!」
イヴリンが魔王を膝に抱えたままかがんで床に落ちたスプーンを拾おうとする。
お分かりいただけるだろうか…このままいけば…イヴリンのおっぱいが…
「ぐふふ…」
「きゃっもう、魔王様のエッチ!」
うぜぇ…
「ちょっとちょっと! あなた達いちゃつくなら違うとこ行ってよ! 思春期の少女の前できわどいイチャイチャしないでよねー!」
「まぁ、姫様、申し訳ございません! ですが私、姫様のお傍を離れるわけにはいきませんわ!」
「我もロックイル様のいない今姫様を守らねばならん」
「あ~はいはい」
ガチャっ
「おい、ドラゴンの近くに居たから連れてきたぞ」
うぇーい!っと風魔法で一瞬開いたドアを閉めるあたし
固まる魔王とイヴリン。
こらー!!空気よめい!! 今一瞬見えたのはロックと、その後ろに五人くらいの人達。
なんか金色の髪飾りつけた黒髪の少年とか。白いローブした美少女とか。
「なぁ、今…魔王と姫がいなかったか?」
「え、…えぇ…膝枕している方がいたような……」
いっかーん!!
そっとロックだけが入ってきた。
「なぜ閉めた?」
「ちょっとロック! 馬鹿なの!? ねぇ!? 馬鹿でしょ!! 勇者様たちいきなり連れてくるんじゃないわよっ!! まだ準備してないでしょーが!!」
「会えば帰ると言っただろう、約束の一か月は待ったし、もういいだろう」
「あー!! まぁ、ねっ!! ロックに空気とか、雰囲気とか察してとか無理よねぇ!! もうっ!! 来ちゃったもんはしょうがない!! 魔王!! イヴリン!!」
「はっ!! 姫様!! 至急着替えて王座の間を整えさせます!!」
と魔王
「姫様のご衣裳はこちらに!!」
とイヴリン
一瞬にして魔王は消え、イヴリンは私の服を脱がせにかかる
「ロックは勇者ご一行を王座のとこに案内しといて!」
「わかった」
あーつかれた…
ところ変わって魔王城、王座の間
「はっはっはっー!! よく来たな勇者よ!! 」
魔王の迫真の演技が始まった
「……ま、魔王め!! 姫様を返せ!!」
……の間は勇者さっきのイヴリンの膝の魔王見たからだろうなぁ。
「姫を返して欲しければ我を倒してみよ!!」
「倒してみせる!! 魔王!! 覚悟ー!!」
あっでもちゃんと戦闘始まった。
ちなみにちゃんと化粧してドレス着て姫バージョンのあたしと、メイド服のイヴリンと、そのまんまのロックは三人で部屋の隅っこで見てるよ~
勇者様やっぱり安定の黒髪イケメン、きっと17歳だ。ファンタジーゲームの主人公はだいたい17歳が定番だからね。若いなぁ…。
んっ聖女様っぽい少女かわいいな!
武道家も女の子か!
あれっ盗賊も女の子?
んっ? 魔法使いも?
あっれーハーレムパーティじゃん!!
美少女しかいないし! これで姫助けて結婚とか…
ちょっとなんかそれってどうなの?
ゲームの時、気になんなかったけど現実問題として…
嫌かも…
あたし男友達ちゃんといるタイプの人のほうが好き
勇者様、ないわー。
まだ一途な魔王のがいいじゃん。イヴリンのだけど!
どーん!!
飛ばされた魔王、
膝をついて
「くっやるな…勇者…、我の負けだ……」
パタリ
うつ伏せに倒れてやられたフリ
「姫!!」
とこちらに駆け寄ってくる勇者様
キラキラした笑顔が眩しいイケメンだ
後ろの女子パーティの睨んだ目がこわいけど!
「姫! ご無事でしたか!」
とイヴリンの手をとる勇者様。
うおーい!! 勇者! 貴様もか!
メイド服のイヴリンを姫って! 腹立つ!
「あっあの、困ります…」
「おい! 貴様! イヴリンは我のだ!!」
あっ魔王が起きた。
なんかもう…、いっかな。うん。
「気はすんだか? ティアナ?」
「うん、もういいよー。帰ろっか! ありがと、ロック」
ロックがパチンっと指を鳴らした。
一瞬にして光につつまれ、場面が変わる。
懐かしの我が城の兄様の執務室だ。
「驚いた…!ティアナ!!無事か!!」
まだ目が少し眩しい、兄様に抱きしめられた。
「無事でよかった!! ジェード! 感謝する!」
兄様の執務室、結構広いのに、魔王、イヴリン、勇者、聖女、舞踏家、魔法使い、盗賊とその他にお仕事中だったのだろう大臣とかいるからめっちゃせまい。
魔王まで連れてきちゃダメでしょうが…
もう、ロックは規格外すぎでしょ、しょうがないなぁ。
「カイン、これでお前の願いは叶えた、あとはそこの魔王に直接話せ、約束通り、ティアナは貰うぞ」
「あぁ、ありがとうジェード。妹を頼む」
「任せろ」
あのぅ…話が見えないんですけども…
あっロックはジェード・ロックイルだよ☆
「ティアナ、幸せにね」
「えっ? 兄様?」
ロックがあたしを樽のように抱える
おうぇっちょっと!!
「まぁ近くにはいるからいつでも来い」
「えっちょっとロック! 兄様!?」
こうしてあたしはまたしても移動するのでした。
イヴリンにも魔王にもなんの言ってないのにぃ…
しょぼん。
どこだここは…森?
小さい一軒家がある
ロックがあたしを降ろす
「まだわからないのか? カヲ。」
カヲ…?
「俺の目の色を見ろ」
言われてロックの瞳をよーく見る
青緑の瞳…懐かしい…
優しい優しい瞳…
翡翠の瞳の色だ。
そうだ、髪も灰色で…
「うそ…、ヒスイ?」
「そうだ、カヲ、いや、ティティアナ姫。」
「なんで…、だってヒスイはウサギさんで…」
「前世のお前の恋人だろ」
そうだ!
うそうそうそ…、
いつの間にかあたしは涙を流していた。
「うぞっ一緒に生まれ変わってたのっなんでっなんでもっど早くにっ」
ロックは優しい顔をしてそっとあたしを抱きしめた
「泣くな…、お前をこの世界に呼んだのは俺だ…、お前を独りに出来なかったからな」
「だっで…ヒスイうざぎでっお爺ちゃんでっ苦しそうで…急いでっ」
「あぁ…、あの時の俺は寿命を終えようとしていた、だがお前を残すことが心残りだった、種族は違ったが俺はお前のすべてを愛していた、本当に恋人だと思っていたよ。あの日、お前の運転した車はスリップして、電柱に突っ込んだ、潰されたお前は最後に俺に手を伸ばして言ったんだ…」
だんだんと最後の記憶が蘇ってくる
そうか…
「ヒスイが無事でよかった…また、会えるといいな…」
「そうだ、お前は最後まで俺のことばかり考えていた」
ロックの抱きしめる力が強くなる
「俺は前世は気まぐれでウサギだが、その前もその前も神のような精霊のような存在だったんだ、ヒスイとして死ぬ時に、次はお前が言っていたゲームのような世界で、お前と過ごそうと決めた。お前より先に生まれ、基盤の人生を作り、それがジェード・ロックイルだ。そしてお前の魂を転生させた。なりたがっていたお姫様とやらにな」
なるほど…ちょっ急展開…、すごすぎて頭がついていかない…
「そしてこれからは、お前を愛し、守り、どろどろに甘やかし、囲い、孤独を感じないように子をたくさん作り子孫を繁栄させていく予定だ。今度は俺がお前を食わせてやろう」
さらっと言ってることこわくねっ
ヒスイと両想いだったのは嬉しいけど、ウサギだよね!? 愛してたけど!
ちょっとやっぱりほんの片隅にはペットって思ってたよっ、ウサギだしね!
愛してたけど! ヒスイの愛がすごい! 嬉しいけどね!
なんでロックっていつもお菓子くれるんだろって思ってたよ
まさか!? ペット時代にあたしがヒスイにペット用お菓子あげてたからか!?
すっごいストーカーなの?ってくらいに監視してくるし。
考えだすと納得の内容。
「そしてここが俺とお前の巣だ、入ろう」
愛の巣ってやつですね! いつの間に用意したのか…
「うっうん…。あの、ヒスイ?ロック?」
この場合どっちで呼べばいいのだろうか?
「ジェードと呼べ、旦那様、あなた、でもいいが」
うっわ~
「じゃっジェードで。えっと…兄様との約束って」
「あぁ、魔王と和平を結んだら、お前を貰っていいって約束だ、予想外にお前が誘拐されに行ったから途中からお前を連れ帰り、魔王と和平に変わったが。まぁ褒賞はお前だ」
「なるほど、それで魔王様も持って帰ったのか」
ロックを恐れる魔王様は逆らわないだろうしね…
「あぁ、あと、結婚の書類は提出して受理されているから、お前はすでにティティアナ・ロックイルだ」
急展開すぎて何も言えまい…
「あっハイ。…不束者ですがよろしくお願いします」
兄様もロックいれば、勇者とかいらないって思ったけど、あたしのせいでロックに勇者を用意しろって言われたんだろうな
なんか巻き込んでごめんよ勇者! もうハーレムで幸せになってね!
「お姫様になれてよかったな、もう満喫しただろう」
「う~ん、そうかな…、まぁありがとね、ロック! ストーリー通りにはならなかったけど、なんだか楽しかったし、満足だよ!」
「ジェードだろ、そうか、あとは俺だけのために残りの人生を使ってくれ」
「はっ…は~い。」
ちょっとひくようなセリフだな…
でも、顔は恐いけどイケメンだし、この世界で最強だし、甘やかしてくれるし、前世からずっと愛してくれてるなんて…嬉しいし。
まぁ! いっかな!
これはこれでハッピーエンドだし!
魔王から救われたお姫様は助けてくれた騎士と結ばれて幸せに暮らしましたとさ。
ちゃんちゃん!
このあとイヴリンと魔王が遊びにきて、帰らないってごねてロックがキレたり。
勇者がイヴリン追ってきて魔王と戦闘が始まったり、勇者追ってきた聖女たちがロックにアタックしてきたり。前世ウサギなロックのせいか、双子や三つ子が毎年産まれ、王国一の大家族になったり。なかなか騒がしき愛しき日々は続くのです!
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「ヒスイー! うさちゃん用のクッキー買ってきたよ! こないだ先生にヒスイ君はちょっと肥満ですって言われちゃったけど、やっぱりちょっとぽちゃっとしてるほうが可愛いよ☆ 大好き!」
最後までお読み頂きありがとうございます。
前半部分書いてから長らく放置してまして、最近無理やり書き上げたので変な箇所があるかと思いますが、少しでも楽しんで頂けたなら嬉しいです。
「アポ取ってよ~」が気に入ってます。
もうお気づきですね?作者はとっくにアラサーをこえている…。
今の自分を若いって思わないと若い時は二度とこないのよ!と自分に言い聞かせている。
なのでこれからも思いついたらいろいろ書いて自己満足していこうと思います。
※ペットの肥満は病気になっちゃうので過度なおやつはやめましょう。