ツナ缶とカマボコとワサビ醤油
登場人物
紫さん…………私だね。
りゅーくん…………旦那様だよ。
霧島たん…………芋焼酎の霧島たん。
「りゅーくん、美味しいおつまみが欲しいって言ったじゃん。これは何よ」
「カマボコだ」
コタツの上にはお気に入りの芋焼酎の霧島たん、真ん中には薄切りのカマボコとワサビ、小皿にお醤油。
カマボコは美味しいけど、美味しいんだけど…………何か違うんだよ、さっぱりし過ぎなんだよ。
「違うのぉ、もっとコッテリさんが食べたのぉ、私の霧島たんは今コッテリさんと合体したいのぉ」
「…………」
「いゃぁ、無視しないでぇ」
「知らん」
酷い。
酷いりゅーくんはそう言うとコタツから出て何かを取りに行ってくれる。
やったよコッテリさんなおつまみが出てくるよ。
ほどなくりゅーくんはコトリと私の前に缶詰めを置いた。
「何かな?」
「ツナ缶だ…………」
えー…………。
ツナ缶は美味しいしコッテリさんだけどさぁ…………。
とりあえずカポッとな。
油に沈んだツナがカロリーの自己主張をしてるね。
ところでツナって何のお魚?
それは置いといて霧島たんを湯飲みに注ぐ、んでツナをお箸で摘まんで一口…………お魚の旨味が口の中で溢れる、そこに霧島たんを一口…………。
「んはぁ…………」
「せめてお湯で割れ」
「んー、はいはい」
最初はストレートがいいんじゃん。
「…………」
「あ、ちょっとりゅーくん何すんの」
ちょっと無断でお湯入れないでよ、ああ…………。
「私の霧島たんに入れられたー」
「紛らわしい言い方をするな」
火照った霧島たんをズズーっと。
霧島たん温かいなり。
「お湯割りも美味しいね、さすが霧島たん」
「…………」
何か言ってよ。
んー、しかし物足りないね、こうおつまみにパンチが欲しいね。
「あ」
お醤油があるじゃん、ワサビを溶いてツナ缶にタラリ…………ふむ、ツナ缶ワサビ醤油味の完成。
さっそく一口…………。
「むふぅ」
霧島たんが進むぜい。
「塩分の取りすぎだ」
「気にしない気にしない、りゅーくんも一口、はい、あーん」
「…………」
「ちょっと口開けてよ」
「…………」
もう、往生際が悪いなあ。
ちょっと開けたから捩じ込んでやる。
「少し辛いな」
「それがいいんじゃん」
霧島たんがほどよくしてくれるからね。
そうだ、カマボコも仲間外れは可哀想だから一緒に食べたげよう。
「のせるのか?」
「うん…………」
はむっ…………こ、これは…………ツナの旨味がカマボコの食感と合わさってツナ油でマイルドになったワサビ醤油と奇跡的なマッチングをしてる。
「んふぅ」
お刺身は苦手だけどこれは美味しい、これは新発見だね。
「旨いのか?」
「んむんむ」
美味しいよ。
ってちょっと私のツナ缶にお箸突っ込むなー。
「旨いな」
「ツナ缶までりゅーくんに入れられちゃったよ」
「…………」
なによ。
「あー、ちょっと何でどんどん食べるのよ、私のツナ缶でしょ」
「…………」
「ちょっとー」
私のツナ缶が蹂躙された。
「むう…………」
霧島たん私を癒して。
「飲み過ぎだ」
まだ二杯目じゃん。
「んー」
「飲み過ぎだ」
そんな事無いもん。
「にゅー」
「何か食べるか?」
「うー、ちゃまごごはん」
しばしして私の前にホカホカご飯が、すぐさまコンコンとタマゴが割られてホカホカご飯にデロンとのっかる。
りゅーくんは殻を捨てに行ったね。
まぜまぜー、あ、この残ったツナ缶ワサビ醤油掛けたら美味しいに違いない。
タラリ。
そして一口。
「むふぅ」
「太っても知らんぞ」
「ぶー」
何て事言うのよ。
りゅーくんが温かいお茶を二人分持ってきてくれながら酷い事を言う。
「太ったらダイエットするもん」
「続くのか?」
「大丈夫大丈夫、りゅーくんも付き合ってもらうから」
「…………」
それにいざとなったら夜のダイエット大作戦があるし。
「ねえ」
「何がだ?」
んふふ、ツナタマゴかけご飯美味しい。
「んん?」
今日もフワフワとしたほろ酔いで私は晩酌を切り上げた。
レシピ
ツナ缶ワサビ醤油
ツナ缶にチューブのワサビ、醤油を混ぜた物をかける。
カマボコにのせたら美味しい。
油で塩分や辛味がマイルドになるので食べ過ぎ注意だよ。