冒険者会敵する
少しづつ、主人公視点ではなく第三者視点で語れるようになってきました。
冒険者になって一年たって13歳になりました。この一年で身体強化の扱いにも慣れ、瞬発的であれば狼と肉薄できますし成人男性と並みの力もだせますがそこまで魔力量が多くないから1分持たせるのが限界です。ですが、あれから薬草採集だけでなく魔物の討伐も多々こなせるようになりました、何度がカムさんやほかの懇意にしてくださってる冒険者の方々とパーティーをくんで依頼をこなしているおかげでEランクになれましたが基本は一人で薬草採集です。
お母さんはあれから薬で症状は抑えていますが、効果的な治療は出来てないせいでちょっとずつ病気が進行しているみたいです。お母さんの病を完全に治すには高位の神官が使える上位治療術が必要なんですがそれは金貨10枚はするそうでとても手が出せません。ちょっとずつ弱ってくお母さんを見ているのはとてもつらいです。
そんなある日、あるうわさをカムさんの妹さんルージェちゃんが話してくれました。
曰く、その薬草は私が普段薬草採集する森の奥の湖に満月の夜にのみ咲く花で、万病に効く薬の元とのこと。そして今日は満月。私はいてもたってもいられず準備をしました。森の奥の湖の場所は以前森の生態調査のとき臨時パーティーで向かったことがあるので問題なしです。入念な準備をし、お母さんが眠るのを確認した後森へ向かいます。
夜の森は昼とは違いかなり危険で、夜は常に死の危険が付きまとい少しでも気を抜けば一瞬で死んでしまうような感覚すらあるが、限界まで警戒を高めて会敵しないように湖へ向かう。
湖に到着したとき思わず場所を忘れて呆けてしまう。それほどに幻想的で美しい光景がそこにはあった、森の中にぽっかりと空いた空間に湖があり、その中心の小島に月の光を浴びるように白い花が咲いていて、あまりの幻想的な雰囲気による夜の森であることも花を取りに来たことも忘れて見入ってた所に、葉擦れの音で彼女の意識は現実に戻る。
(いけない...早く花を取らないと。お母さん待っててね)
湖の冷たさに体を震わせながら小島に近づき、花に手を掛け丁寧に根を掘り起こす。
(花のどこが聞くのかはわからないんだったら全部持って帰ればいい)
花を掘り起こし、壊れ物を扱うように用意した容器に移し、帰るために湖から上がった瞬間全身に鳥肌が立った。
「っっ!!??」
(とんでもない殺気!?なんで突然!?どこから!?)
突然降りかかった体の芯まで凍えそうな殺気に膝は笑い全身の血の気が引ける。
葉が擦れる音がし、そちらのほうに顔を見やるとそこには全身を真っ黒に染めた2メートルはある真っ赤な目の狼が居た。
(なんで魔獣が!?魔獣はさらに奥にいるはずなのに!!)
魔獣、それは先天的或いは後天的に獣が多量の魔力によって強大な力に進化した魔物よりもはるかに恐ろしい化け物。何故本来はさらに森の奥の魔力が濃い場所にいるはずの化け物がここにいるのかはわからない、わからないけどその化け物や明らかに目の前の少女を捉えており隠れるといった選択肢がないことを叩きつけられる。
人間の生存本能が無意識に彼女を後ずらせるも震える脚では上手く下がれずもつれさせて尻をついてしまい、恐怖で体はすくんでしまう。
(怖い、怖い....なんで?どうして?っ!逃げなくちゃ....お母さん....)
尻もちをついた拍子に背嚢にいれた花の存在を思い出し、震える体に激を入れ無理やり立たせる。その間も狼はゆっくり距離を詰めてくる。
(ここから身体強化して走っても森の外へは届かないし、なにより追いつかれる!なら少しでも動きを止めてその隙に逃げるしかない)
逃げるという目的に冷静になった頭で必死で考えながら装備を確認する。
(武器は短剣と投げナイフ数本、治療薬と...これ!これならもしかしたらいけるかも!!)
自分の装備に活路を見出し、その切り札を確実に決める為必死に頭を働かせる
(問題はこれを確実に当てるには動きを止める必要がある..最悪腕の一本くらいは覚悟しないとかしら)
策を練る間も両者の距離はじりじり縮まり、自殺紛いの策しか思い浮かばない中で彼女は覚悟を決める。
(ッッ~~!!命あっての物種ね、腕の一本で生きられるなら安いものね。やってやろうじゃない!!)
覚悟を決めた彼女は確かな決意を目に宿し、不敵な笑みを浮かべる。
「やってやろうじゃない!来なさい化け物!ただでは食べられてやらないわよ!」
自分を奮い立たせるため彼女は吠える、それを皮切りに両者は動き出す