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味噌汁's『ME SO SHE LOOSE』(2014年)

●所詮企画ものと言わせない


味噌汁'sはジョン(Vo)、ポール(G)、マッカー(Dr)、トニー(B)から成る4人組。なんともふざけたメンバー名だ。

最初に身も蓋も敬意もなく言ってしまおう。味噌汁’sはRADWIMPSの4人がやっているバンドであると。その方が論が進む。

そして言ってしまおう。一見馬鹿げているように見えるこのアルバムが実は傑作であると。最近のRADWIMPSよりも好きかもしれない。


「バンドを組んだぜ」と何度も繰り返して歌う超短い最初の曲「OKAN GOMEN」でまず唖然とする。単純明快なパンキッシュな演奏の裏で光る計算、センス。パンキッシュというとRADWIMPSの初期が思い浮かぶが、その頃の演奏よりも湿り気のないカラッとした演奏なのが特徴だ。


味噌汁'sは2005年、リハーサルスタジオで担当楽器を交換して遊んでいたときにボーカルになったマッカーが「こんばんは、味噌汁’sです」と言ったのが始まりだ。


RADWIMPSを名乗る前は、ライブの度に適当なバンド名をつけて出演していたという彼ら。味噌汁'sもそのノリだったのだろう。


2005年の結成から苦節9年、ようやくのデビューアルバムである。


近い音楽性のバンドを挙げれば、ブルーハーツ、クロマニヨンズ、ラモーンズあたりが思い浮かぶ。ただ、味噌汁'sの音楽は彼らよりも更にバカな音楽だ。きらりと光る単純で子供じみていて天才的なアイデアを音にしながら、バカ殿様のように全力でバカになろうとしている。


ボンキュッボンをリズミカルに連呼する「B.Q.B」、「変人」「奇人」「台湾人」など「人」のつく言葉でまくしたてる「HENJIN2」と「HENJIN」など、言葉遊びも巧みに織り交ぜながら全速力でバカに興じる。


変てこりんなコーラスからTHE DOORSのようなギターリフが鳴り響き、奇妙で摩訶不思議な世界が展開していく「ミソシレ」など、そのバカさ加減は近年稀に見るお馬鹿さんなのだ。


70年代、プログレとハードロックへのカウンターとしてパンクが出てきたように、複雑化・シリアス化していくRADWIMPSへのカウンターとして、味噌汁'sの音は聞こえる。そう考えると、味噌汁'sの音楽性がパンキッシュなことにも説明がつく。


RADWIMPSのメンバーは、成長と進化・深化を求めるあまりに行き詰まるほど感じる切迫感から自由になるために、その息抜きとして味噌汁'sの音を鳴らすことを必要としたのだろう。


バカを絵に描いたような音楽に聴こえるが、実は知性が隠れており、そして、単純で一直線である音楽であるがゆえに、人間の心の美しい部分がにじみ出してくる。「ふうてん」の涙腺をくすぐる美しいメロディー。「君」と暮らす何気ない日常を、愛とユーモアですくいとった歌詞が光る「柿ピー」。味噌汁'sの代表曲である「ジェニファー山田さん」をピアノバージョンにした最後の曲の愛おしさに僕は今度こそ泣きそうになった。


所詮企画ものと言わせない、本気でオススメしたいアルバムです。


評価★★★★(星5つが満点)

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