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[ALEXANDROS]『Sleepless in Brooklyn』(2018年)

●二枚目な音楽


クールでスタイリッシュでどこを切り取っても二枚目な音楽だ。気持ち良い横揺れの「LAST MINUTE」から始まって、アンコールの力強く感動的なラスト「明日、また」まで息もつかせぬハンサムぶり。音楽に三枚目的なユーモアを求める僕でも、この二枚目ぶりにはシビれた。


三枚目的なユーモアを求めるからこそ、二枚目にも三枚目にもなれる神聖かまってちゃんを僕はよく聴くが、僕みたいな人は少数派で、昔から多くの人は二枚目なカッコよさを音楽に求めていると思う。三枚目な音楽は傍流なのだ。そして、アレキサンドロスの音楽は、メインストリームの二枚目音楽の中のまさに王道。キングオブ二枚目音楽といって良いと思う。


また、違和感がなくスッと最後まで聴ける。違和感をフックにして曲を作る神聖かまってちゃんとは、ここでも対照的だ。しかし、『Sleepless in Brooklyn』は二枚目的なスタイルの良さが流れるように最後まで貫かれ、全く飽きない。


ニューヨークのブルックリンで制作するなど、海外を意識した音作りをする彼ら。音は洋楽的であり、J-Rock的でもある。J-Rock的でもあるからこそ、日本のバンド音楽の中で覇権を握れたのだろう。しかし、世界進出を狙っている彼らにとってJ-Rock的であることは邪魔になりかねない。そもそも、エレクトロ全盛な最近の世界の潮流の中で、バンド音楽で世界進出を狙うのは厳しいだろう。それに、ボーカルの川上洋平の声質はイノセントな響きを持ち、少年的であり、海外市場では少年的なボーカルは好まれない。以上から、『Sleepless in Brooklyn』の音で世界のヒットチャートに入るのは難しいと僕は考える。しかし、リアリストな戦略家である彼らは何か策を持っているはず。今後の展開に期待したい。


やけにリリカルな曲があると思ったら、詩人の最果タヒが歌詞を担当していた。「ハナウタ」という歌。そして、プロデュースと編曲は小林武史。ボーカルが抜かれた時のストリングスの美しさにハッとする。この曲が本作で一番好きだ。終始紡がれる美しいアルペジオがダイナミックな展開を運んでくるリード曲の「アルペジオ」よりも、終盤の「Your Song」「SNOW SOUND」「明日、また」の名曲連打よりも好きだ。


ラウドな曲よりも、いかにも名曲な曲よりも、「ハナウタ」のようなリリカルな曲を増やしてほしい。しかし、僕のように考えるリスナーは少数で、アレキサンドロスの多くのリスナーはJ-Rockの王道を彼らに求めているだろう。だけど、本作を聴き、「ハナウタ」という曲に出会えて、僕は嬉しかった。


『Sleepless in Brooklyn』を通して聴いて、今の売れ線はこんな感じなんだなと思うと同時に、表現したいことが見えてこない感じもした。どんな抑圧を跳ねのけようとしてロックを演奏しているのか、日本の第一線で闘っているバンドなのに、闘っている内容が見えてこないように思えた。だが、アレキサンドロスが伝えたいのは「笑ってほしい」や「僕は味方さ」といったシンプルなメッセージなのだろう。リスナーに何かを考えさせるよりも、逆境でも前に進んでいくこのバイブスが伝わってほしいと願っているに違いない。シンプルなメッセージだからこそ、これほど強度のある音楽が産まれる。聴いていて、ただただ気持ち良かった。

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