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ゲスの極み乙女。『好きなら問わない』(2018年)

●後半の深みとカタルシス


これまでのゲスの極み作品と同様で、気持ち良いファルセットとスリリングな演奏には即効性や中毒性があるが、バブルガムポップスとしては消費されない切実さを持った作品だと思う。


しかし、ヒップホップ的に言葉が詰め込まれたバースと、ファルセットを用いたサビ、そして、アップテンポで疾走する同じようなテイストの曲が続いて、僕は飽きてしまった。音楽性に深みはあっても、幅広さはないのだ。オープナーの「オンナは変わる」はまさにこのタイプの楽曲で、サビのファルセットが即効性があって気持ち良くても、間奏でベートーヴェンの「運命」のフレーズを入れる飛び道具を用いても、飽きてしまう。


続く#2「はしゃぎすぎた街の中で僕は一人遠回りをした」の孤独なセンチメンタリズムも、#3「イメージセンリャク」のノンフィクションかと疑ってしまうような攻めているリアリズムも、#4「もう切ないとは言わせない」で見せる恋愛ソングで良曲を量産するお家芸も、僕の心を捉えるに至らなかった。


#5「戦ってしまうよ」の音楽性は前述した理由で食傷気味。#6「sad but sweet」の曲名通りの哀しくて甘いフィーリングは良いなと感じたけれども、リピートするほど新奇性のある曲かと問われれば微妙。#7「僕は芸能人じゃない」の心の叫びも、叫びのコンセプトは良かったのだけれども、別の音楽性の曲でやってほしかった。#8「颯爽と走るトネガワ君」は、曲で描きたいテーマが心に刺さらない。このようにして、中盤も中だるみしてしまう。


本作が良いのは、後半だ。#9「ゲンゲ」のピアノの哀しげな深い響きは良かった。途中で4ビートになるのも凝っているし。PARKGOLFによる#10「私以外私じゃないの」のリミックスも、原曲をいい具合に破壊していて好きだし、ビートのデザインも最新の潮流に乗る新しさがある。#11「招かれないからよ」の歪んだギターと電子音の醸し出すラウド感も好みだ。このダウナーな感じは新奇性があって良い。#12「ホワイトワルツ adult ver.」の休日課長によるウッドベースとサックスの織りなすアダルトな響きは、リピートする価値がある。そして、最後の曲「アオミ」はバースのヒップホップ的な譜割りが良い方向に働いていて気持ちいい。


しかし、『達磨林檎』に収録されている「某東京」や「いけないダンスダンスダンス」のような洗練された深みは本作にはないと思う。がんじがらめの実存がプログレッシブに吐き出された、この二曲を超える楽曲は本作には収録されていないと感じる。


また、『両成敗』に収録されている「ロマンスがありあまる」「私以外私じゃないの」を超えるようなキラーチューンもないと思う。この二曲は普遍的な即効性を携えた完璧な楽曲だった。


だが、本作の後半の音楽性は、他のアーティストの追随を許さない音楽的な複雑さと深みによるカタルシスがある。唯一無二の個性がある彼らの行方が明るいことを願っています。


Score 7.0

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