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笹口騒音&ニューオリンピックス『2020"』(2018年)

今の日本、いや世界において笹口騒音&ニューオリンピックスほど面白く革新的な表現をしているアーティストはいないのではないだろうか。


1stは『2020』というタイトルだったが、2ndである本作は『2020"』。2020年の世界という近未来が笹オリのメンバーの想像力で二通りに表現されている。二つの次元は重なり合い、異なり合い、平行世界というSF的な想像力が音楽で表現されている。


編集を駆使した1stとは違い、基本は一発録りで録音されているのでバンドのナマなダイナミズムがある。そして、闇雲に音を重ねるのではなく、音の隙間を効果的に活かした音になっている。音の隙間のいちいちさえに冷静さと知性を感じる。音圧だけで勝負している巷のバンドに聴かせてやりたい。


1stをRadioheadの『Kid A』とするならば、生バンドで革新的な音を出そうと取り組んだ本作は『Hail To The Thief』ということになるのだろう。笹口騒音は日本のRadioheadだし、Radioheadを日本の情感を感じさせる日本ならではのアンダーグラウンドな音楽に巧みに落とし込んでいると思う。


そして、「Radioheadは革新的だったことは一度もない、曲が良かっただけだ」という意見があるように、笹口騒音の曲も革新的であるだけではなく、曲が良い。リリカルな歌詞、ファルセットを活かした歌メロ。元の曲の良さもさることながら、小宇宙を感じさせるアレンジの妙にも毎回唸らされる。


うみのてで演奏されていた「もはや平和ではない」もこのアルバムで演奏されているが、うみのてver.からの変化の様こそが象徴的だ。音楽性がパンクからダブへ変化すると共に、即効的だった音の快楽性もジワジワ来る性質に変化している。また、描いたストーリーの全体像でリスナーを快楽に誘ったうみのてverから、一瞬一瞬の不穏な響きで快楽に誘う笹オリverへの奇怪なる変身にも傾聴せよ!


そして、ラッパーの呂布カルマが参加した「NO!」はもはや事件ではないでしょうか。よりヘヴィでダークに生まれ変わったトラックの上で、エコーが効果的に使われながら呂布カルマの寒々としつつ重量があるラップが炸裂する。


4曲も入っているおまけも楽しめる。何度噛んでも味の途切れない、ますます味が深まっていく近未来のガムのように奥深い曲たち。「MY NATIONAL ANTHEM」の鍵盤の響きに僕は恋に落ちた。


笹オリこそが、音楽の最前線、芸術の最前線だ。レフトフィールドの芸術としての素晴らしさだけでなく、リスナーを楽しませるエンターテイナーとしての素質を持ち合わせた笹口さんは無敵だ。そして、笹口さんのアイデアを形にするメンバーの確かな実力。笹オリには芸術による革命を起こしてほしい。本作は革命の先鋒となり切っ先となる作品であることは間違いない。


1stと同様に長く聴き続ける作品になるだろう。聴く度ごとにドラマチックなベースラインに感激し、ギターの乾いた響きに興奮し、鍵盤のキッチュな質感こそが芸術だと思い、緊張感のあるドラミングに白熱し、アンサンブルの孤高に衝撃を受け、ボーカルの気高さに身震いするアルバムになるだろう。大げさに言いすぎじゃないかって? それほど嬉しいんです、このアルバムを作ってくれたことが。心の底からありがとう!


Score 8.8

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