2010年代邦楽ベストトラック 30位→1位
インスト曲がないから、「2010年代ベストソング」でも良かったんだけど、歌としてだけではなく音楽としても注目しているという意味を込めてこの記事タイトルにしました。
それでは、早速いってみよー!
30位から21位まで一挙にカウントダウン!!
【30位】マカロニえんぴつ「ヤングアダルト」
この歌は誰にでも届く分かりやすい言葉とメロディで、深い絶望に囚われたリスナーの「私」や「僕」を救い出す歌だ。しかし、曲調は全く重たくなく、軽快でキャッチーなのが、マカロニえんぴつだからこそ為せる技。「誰も知らない優しい言葉で/あの子の孤独を殺せてたらな」という歌詞に胸打たれる。
【29位】笹口騒音オーケストラ「TOMORROWLAND」
チェンバーポップの傑作。「多幸感」という言葉を聞いた時に僕はこの歌を思い出す。みんなの明日がこんな明るい曲調みたいな明日だったらいいのにね。「いつか朝と夜が一つに交わるよ/いずれ夢うつつが一つに重なるよ」という歌詞にまだ見ぬ明日への想像を膨らませる。芸術が価値規範の世界だったら、そんな明日も可能かな。
【28位】銀杏BOYZ「ぽあだむ」
収録アルバム『光のなかに立っていてね』の名のとおり、光の中にいるようなキラキラしたポップ感に満ち満ちた曲。峯田さんは、「夢で逢えたら」やこの曲のような、誰もそのキラキラ感を批判できないようなポップな曲を時々作る。
【27位】毛皮のマリーズ「愛のテーマ」
毛皮のマリーズ『ティン・パン・アレイ』はチェンバーポップの傑作だ。悪意の入り込む隙のない善意で満たられている。この歌を聴いていると、中村一義の歌じゃないけど、博愛の気持ちになれる。聴き終わると現実に引き戻され、あの気持ちは幻だったのかと思うことになる。しかし、この音楽の優しさは自分の心の奥底にしっかりと記憶されている。
【26位】amazarashi「カルマ」
amazarashi初期の傑作。メロディがあるが、ポエトリーリーディングの要素を感じる。歌詞は具象と抽象を色鮮やかに描き出し、情景が目にバッと飛び込んでくるこの感じは素晴らしい。戦場のリアリズムを詩的で辛辣に描くが、「どうか、あの娘を救って」という最後の歌詞に、空疎で寒々とした戦場の中の温かな芯ある心を感じる。
【25位】ゲスの極み乙女。「ロマンスがありあまる」
「死に物狂いで生き急いでんだ」という歌詞が示すとおり、性急感のあるトラックだ。美しいファルセット、キレのあるギター、うねるベース、演奏を綺麗に一つのまとまりにする鍵盤、グルーヴィーなドラム、5人のメンバーそれぞれが実力派のミュージシャン。スキャンダルがあっても潰れなかったのは、楽曲とメンバーに力があったからだろう。
【24位】ASIAN KUNG-FU GENERATION「ソラニン」
歌詞は浅野いにおによるものだが、先にある字余りがちな歌詞にメロディをはめていくゴッチの才能に惚れる。アジカンの持ち味である歌心のあるロックソング。歌メロが生き生きと躍動し、ギターも分かりやすく曲を盛り上げ、一曲を通してストーリーを描く。
【23位】転校生「空中のダンス」
硬直した実存を軽くしていくような、フワリとした歌。物悲しい気持ちは、曲中の飛び降りる主人公のようにフワリ空中へ飛んでいく。「きっと誰も見ていないさ」と彼女は歌ったが、飛び降りようとする瞬間は見てくれなかったとしても、日常では主人公を見てくれる誰かはきっといますよ。
【22位】サカナクション「グッドバイ」
生と死の境界の世界から生の世界に行く覚悟を歌ったかのような曲。不確かな未来を行った先に待っているのは不確かな果実だからこそ、僕らは生きているのだ。MVもそのような世界観の作りだ。生と死の世界の狭間にいる主人公を見守るようなアコギのストロークが優しく感じられる。
【21位】スピッツ「さらさら」
重い現実を受け止めつつ、次の朝を信じたい思いが、寂しげなコーラスと夢見がちなアルペジオの下に歌われる掛け値なしの名曲だ。「眠りにつくまで そばにいてほしいだけさ/見てない時は自由でいい」と歌われるが、「誰も触れない二人だけの国」と歌われた「ロビンソン」からの変化が垣間見れる。
【20位】cero「大停電の夜に」
これぞ、究極のチル。何かにいらだったり、焦ったりして、気持ちを落ち着かせたい人がいたら、この曲をまずオススメします。
震災前に書かれたのに、震災を予見していたような曲。震災後に注目を集めたのは、もちろん、大停電を歌った歌詞が一番の大きな理由だ。だが、震災で傷ついた心をレイドバックしたサウンドで癒されたかった人が多かったからだろうと僕は思う。目一杯にボーカルにリバーブをかけて浮遊感のあるサウンドには独特の味わいがある。
【19位】くるり「glory days」
アルバム『坩堝の電圧』の最後の曲、glory days。この曲がアルバムで一番好きだ。
ストイックに4分のスネアを刻むドラム。流れる時代のようなギター、過去を時折思い返しているようなトランペット。過去の歌の歌詞が歌われるところで胸が震える。過去と現在の岸田さんと僕たちを一緒くたにして遠くへ連れて行くようなディストーション。この箇所を全19曲のアルバムの締めくくりに聴くと、長い旅路の果てにどこか別の次元にたどりついたような心地になる。
【18位】MOROHA「革命」
無為無策で大きな夢を持つことのロマンチシズムを、夢に向かって本気で努力する現実のリアリズムで叩き崩す曲。もしくは、夢を持つことを嘲笑う人たちのリアリズムを、本気で夢を信じるロマンチシズムで叩き崩す曲。この曲の熱量あるラップに突き動かされていた時期が僕にもあった。
【17位】andymori「1984」
冒頭のベース4音からして何かしらを語っている。トランペットがファンファーレであると同時に、夕暮れの風のようだ。楽器隊がボーカルと同じくらい雄弁に語る曲はだいたい名曲だ。そして、ボーカルの歌もとても歌心にあふれていて、夕方5時の叙情を余すところなく描いている。
【16位】NEW OLYMPIX「NO! feat.RYOFU KARMA」
漆黒という言葉がこれほど似合う曲もないのではないだろうか。「YES」という欺瞞にあふれた世の中への漆黒のカウンター。声質が冷徹にも感じられる客演の呂布カルマのラップは切れ味鋭い。漆黒と冷徹さを感じても、人間的な温かさを感じられるのは、激烈な叱咤を通じてリスナーを勇敢に鼓舞する音楽であるからだろう。
【15位】不可思議/wonderboy「Pellicule」
彼の名曲「Pellicule」で「二人だけで話そう」とラップされると、もう故人の彼と二人で飲みながら話しているような思いになる。
この曲でラップされている「俺たちっていつかさ、結婚とかするのかな/子供とかできてさ/庭付き一戸建てとかをローン組んで買ったらできた気になるかな」という未来の可能性。だが、その可能性はその後の死によって否定されたことを思うと、やり切れない。だが、僕も彼のラップの密度の濃さくらい、人生を生き抜こう、そう思えるのだ。
【14位】フジファブリック「夜明けのBEAT」
生前の志村正彦が放った最後の煌めき。強靭なビートに乗る微熱の志村さんの歌唱。そこまで熱くなり過ぎない絶妙なバランスの歌唱が素晴らしくクセになる。熱くなり過ぎないのは、志村さんのキャラクターゆえのことでもあるのかもね。そして、ビートがここまで強靭なのは、バンドの演奏力のたまものだ。
【13位】相対性理論「ミス・パラレルワールド」
真部脩一作詞・作曲の曲。今のやくしまるさんの作る曲も良いが、この懐かしさと近未来の同居するファンタジー感のあるソングライティングは真部さんならではのもので、真部さん在籍時代が恋しくなってしまう。やはり、男性が作った歌詞で不思議少女にコスプレするやくしまるさんのボーカルがあの絶妙なファンタジー感を演出していたのだと思う。
【12位】リーガルリリー「リッケンバッカー」
この曲をyoutubeで聴き、頭から離れなくなってリーガルリリーが好きになったのでした。「おんがくも人をころす」という怜悧な認識があった上で、「おんがくよ、人を生かせ」と歌うのがグッときて音を感激と共に嚥下する。
通常のAメロ、Bメロ、サビの順番でないのに、比較的まとまって聴こえるのは、それぞれのパートの放つメロディがそれぞれにキャッチーだからかもしれない。テンポアップして「リッケンバッカーが歌う」と歌う箇所のかっこよさといったら!
【11位】羊文学「1999」
「『1999』にはどんな意味を込めたんですか?」というインタビュアーの質問に対し、ソングライターの塩塚モエカは「ノストラダムスの大予言の年で。(中略)『年を越えたら世界が終わるんじゃないか』って思っているときのクリスマスって不思議だなって。キラキラしているけど、世界が終わる……その対比ってどんなものだったんだろうと想像して作りました」と答えている。
インタビューでこう答えているように、この曲はキラキラしているけど、どこかしら切迫感があるのが、一つの歌ものとして理想の形に僕には思えた。とんでもなくキャッチーなので、羊文学に対して苦手感のある方でもすんなり聴けるはず。
【10位】RADWIMPS「スパークル」
歌ものRADの最高峰。こういう少し切なくなるようなフィーリングを醸し出すのがRADは本当に上手い。ボーカルの雄々しくも女々しい声質も影響しているのだろうか。あとは、ギターの高音の鳴りやピアノの凛とした響きだね。新海誠監督には、分かりやすい歌ものとしての側面をRADから引き出してもらって感謝している。
【9位】SEKAI NO OWARI「Dragon Night」
対立し合っているその双方に正義を認めるドラゲナイのやり方に深く共鳴した者として、この曲を後世に残すことは半ば使命であると考えている。アヴィーチーからニッキー・ロメロを経由したEDMサウンドとJ-POPの融合に酔いしれる。
【8位】中村一義 「世界は変わる」
本当にポップな曲はリスナーの世界を変え得ることを示した曲。メロディで、楽器隊によるサウンドで、思う存分に"ポップ"を表現する。遥かな地平を見やる視線がまぶしい、完璧な一曲だ。
【7位】宇多田ヒカル「桜流し」
エヴァQの主題歌として制作された経緯も含め、いかにも思わせぶりな一曲。後半のバスドラが心臓の鼓動のように切迫した曲の表情を伝える。
【6位】SAFETY SHOES「SOUL DRIVE 55」
SAFETY SHOESとは、桜井敏郎の一人の人生をかけたバンドプロジェクトであり、この曲はそのバンドの総決算である曲だ。人生に疲れた方に。心をソウルドライブする術を僕も探している。
【5位】大森靖子「ミッドナイト清純異性交遊」
驚くほどにポップでキャッチー。異性交遊が清純ということは、同性交遊は不純だということ。いかがわしい同性交遊をいかがわしげなキラーチューンで魅せる。
【4位】きのこ帝国「ユーリカ」
凶悪にも聴こえる動くベースと歌うドラムの上で、ギターにディレイとリバーブを目一杯にまぶす。その上に乗る佐藤さんのボーカルは清らかかつ神聖不可侵で、心を深くえぐってくるような曲だ。
【3位】ふくろうず「ごめんね」
歌ものとして最強の一曲。メロディも良いし、歌詞も良いし、サウンドも良いし、隙がない。「正しいも正しくないも意味はないのさ/君はすてきだ!/困った顔が良く似合う」というキラーラインは、一人の人間が一生かけて一つか二つ生み出せるかというくらいの発明だ。
【2位】うみのて「もはや平和ではない」
僕はこの曲をタワレコの試聴機で聴いて以来のうみのてファンです。冒頭のエレキギターの音から魅せる、ローファイと醒めた熱情の交差点。世相をぶった斬る、その視線がどこまでも鋭い。優れた曲は時代を映す鏡になるとは良く言われることだが、この曲も時代を映す鏡として適しているように思える。『笑っていいとも!』終了を予言し、もはや平和ではないことをも予言した漆黒のギターロック。
【1位】神聖かまってちゃん「ロックンロールは鳴り止まないっ」
タワレコの試聴機でこの曲を聴いて以来、神聖かまってちゃんに取り憑かれるようにして聴いている自分がいます。イントロのピアノのリフ、その後に雪崩れ込むように入ってくるエレキギター、それだけで彼らの世界に連れて行ってくれる。ボーカルの"の子"の声質は不気味にも聴こえるほど異様だったが、曲を何度も聴くうちに、この声質だからこそ、この曲を歌えるのだと思うようになった。ジャンクな演奏と唯一無二のボーカルという記名性でもって2010年代に名前を残した記念すべき一曲。
とかげ日記が選ぶ2010年代ベストトラック(邦楽)30位→1位
【1位】神聖かまってちゃん「ロックンロールは鳴り止まないっ」
【2位】うみのて「もはや平和ではない」
【3位】ふくろうず「ごめんね」
【4位】きのこ帝国「ユーリカ」
【5位】大森靖子「ミッドナイト清純異性交遊」
【6位】SAFETY SHOES「SOUL DRIVE 55」
【7位】宇多田ヒカル「桜流し」
【8位】中村一義 「世界は変わる」
【9位】SEKAI NO OWARI「Dragon Night」
【10位】RADWIMPS「スパークル」
【11位】羊文学「1999」
【12位】リーガルリリー「リッケンバッカー」
【13位】相対性理論「ミス・パラレルワールド」
【14位】フジファブリック「夜明けのBEAT」
【15位】不可思議/wonderboy「Pellicule」
【16位】NEW OLYMPIX「NO! feat.RYOFU KARMA」
【17位】andymori「1984」
【18位】MOROHA「革命」
【19位】くるり「glory days」
【20位】cero「大停電の夜に」
【21位】スピッツ「さらさら」
【22位】サカナクション「グッドバイ」
【23位】転校生「空中のダンス」
【24位】ASIAN KUNG-FU GENERATION「ソラニン」
【25位】ゲスの極み乙女「ロマンスがありあまる」
【26位】amazarashi「カルマ」
【27位】毛皮のマリーズ「愛のテーマ」
【28位】銀杏BOYZ「ぽあだむ」
【29位】笹口騒音オーケストラ「TOMORROWLAND」
【30位】マカロニえんぴつ「ヤングアダルト」




