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大森靖子『kitixxxgaia』(2017年)

●歌謡曲の頂点

これは紛うことなき傑作。ハイブリッド(雑種)な歌謡曲の頂点に位置付けてもよいのではないかと感じている。ハイブリッドな点は大森靖子が好きなアイドルソングを範としているのだろう。


生きることへの貪欲さが凄まじい。電子音も含めたリズム隊の強靭なリズムにぶっ生き返る。前作『TOKYO BLACK HOLE』よりも、前作に感じられた不穏で仄暗い情熱による感情の抑制がなくなった分、ポジとネガのエネルギーの総量が曇りなく明るく振り切れている。昨今の作品の中でこれほど活力たくましく、熱量を持って生きることをまっすぐに歌う作品はなかったのではないか。


#1「ドグマ・マグマ」で「誰でもなれますGOD」と歌っているとおり、大森さんは個々人のそれぞれに他人には代えがたい個性を認めている。現在ベストセラーになっているアドラー心理学の書籍では、自分が特別ではないことを自覚することから幸せは始まることを説くが、大森さんは誰もが特別だよと説く。アドラー心理学の方法論の達成と同じくらい、方法論は真逆といってもよい大森さんの思想の根幹は強固に形作られているのではないだろうか。


本作は小室哲哉など多数のアーティストとコラボレーションしたことに特色がある。コラボする相手は他にも、fox capture plan、ヒャダイン、DAOKOなど実力派ばかりだ。#2「非国民的ヒーロー」で僕の好きな神聖かまってちゃんのの子ともコラボしていて嬉しい。の子と大森さんの二人の仲も良いようで何より。この曲で、の子のシャウトが混沌の一要素になっている構造は、神聖かまってちゃんと同じだ。


avexに行ってからの『洗脳』(2014年)『TOKYO BLACK HOLE』(2016年)は曲の持つ情報量の多さに自身が振り回されている感があったが、本作では情報量の多さを交通整理できていると思うのだ。情報量が多いのに、すっきりと鼓膜に届く。


そして、情報量の少なめな#10「オリオン座」。この一曲を聴いただけで大森さんの音楽は信頼できると確信できる名曲だ。メロディはこう行ったらこう行くだろうというクリシェ(常套句)の域を出ない。しかし、それは故意で、リスナーにもたらす安心感を狙ったのではないかと思う。「心の黒い穴は同じ誰かへと繋がるトンネル」なんて、書けそうで書けない歌詞だ。「最悪でも幸せでいようね」という歌詞に、僕のこれからの幸せを信じようと願ってみる。


そう、歌詞も素晴らしいのだ。前作までよりもその数は少なくなったが、最近の世の中の風俗を歌詞の言葉に取り入れている分、世俗的なのだが、高尚に感じられるほどリリカルなのだ。ぜひ、歌詞カードを手に取って素晴らしさを感じてほしい。


アルバムタイトルの『キ○ガイア』の由来は、「キチ(基地/聖地)」「ガイア(女神)」から。大森さんという女神が守る聖地で、それぞれに特別な人々がそれぞれに特別な輝きを放っている。このメチャメチャ楽しい聖地に憧れを感じている自分がいる。特別になれない自分が特別でいられる場所は自分からは遠いけれど、僕もこの聖地の不可侵を見守っていたい。


Score 7.2

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