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三十路から始める撞球道  作者: 想々
番外編、玉屋の日常編
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沙樹ちゃん視点の玉屋の日常 第1話 俺ってカッコいい(無いです。)

番外編をアップするにあたり、「完結」状態だと次話投稿・章管理が出来ない様なので、状態を「連載中」に戻さないといけない事に。何かもやっとします、「普通の女の子に戻ります」宣言の3日後にカムバック状態(聖・お兄さんネタ)


 玉屋(ビリヤード場)には様々なお客さんが来る。


 でもたまにちょっと困ったお客さんが来る事もあるんですよね。


_________________________



 私が常連さんと話しながら台の清掃をしていると、ガラスドアが開き、新規のお客さんが入ってきた。


「いらっしゃいませ!」


 すぐさま私は掃除の手を止め、お客さんの所に向かう。



 入ってきたお客さんは何か全身黒ずくめで、デザインはビジュアル系ロックバンドの様。今日は曇りで今すぐにも雨が降りそうな天気にも関わらず、濃いサングラスをしている。


「ビリヤード、一人だけど、いいよね?」


 なんか上から目線と言うか、ああ、あれだ。「正月番組の一流芸能人」その劣化版みたいな感じ。


 いやこの時点では普通に一人で練習に来る、ビリヤード好きなお客様です、ちゃんとテーブルにご案内。

「こちら、最近ラシャを張り替えたばかりなので、コンディション最高ですよ?」って言ったら「ああ、有難う」って言いながらサングラスに手をやってポージング・・

 完全に自分に酔ってるねコレ。



 いやまあ、ここまでは可愛いものだったのよ、ほかの人に迷惑かけて無いし。


 その彼はしばらく席でリラックスしていたかと思うと、いきなりボールの収納されているボードを目の高さで斜めにしてテーブルの上にボールをバラ撒いた。


 ラシャの下は石板だ、当然の様に「ガタッタンタンと耳を覆いたくなるような音が響き渡る」が気にした様子が無いどころか「皆が自分に注目している」のを楽しんでいる様子。

 

 あ、これ、ダメな人だわ。



 案の定、その後の彼の行動は・・目を覆いたくなった。


 過去に似たような事をしたことのある常連さんは、羞恥心で息絶える寸前だ。



「まずテーブル上でキューを転がして、キューが曲がっていないか調べる」


 これは大丈夫です、どっちかと言うと経験者はタップを見ますけど、あんまり曲がってるキューだとストロークが難しいのでここまでは有りです。(ネットカフェならともかく、玉屋ならハウスキューもまともです・・・多分)


「1球撞いたごとに煙草を吹かす、そしてその1球は入っていない」


 典型的ヴィジュアル系プレイヤーですね。球を撞くまでと、着いた後はカッコいいんだけど、撞いてる時のフォームはへっぴり腰、写真に撮って見せてあげたら自殺したくなるんじゃないでしょうか?



「外した後、首を傾げながら再度キューの曲がりを確認する」


 気付いて下さい、外したのはキューのせいじゃありません。



問題外:吸いかけの煙草をレールの上に置く、タバコを吸いながらプレーする。


 あなたは日本語が読めないんですか?



_________________



 すいませーん、良かったら一緒にやりませんか? 

 私は精一杯可愛く言う、二十歳過ぎてるけど、こうやってちょっと上目遣いで媚びるとかなり幼く見えるらしい。


「ああいいよ、教えてあげるから」


 案の定、鼻の下を伸ばしてOKしてくれたので・・・・・


 完膚なきまでに叩きのめしてやったわ!!!!


________________________



 そのナル男は「久しぶりで・・・ちょっと調子が出なかったかな?」とか言い訳しながら青い顔でスゴスゴと店を後にした。


 常連さん達から「お~い沙樹ちゃん、公開処刑過ぎるんじゃねぇの(笑)」みたいなコメントを貰っちゃったけど、本当にビリヤードが好きなんだったらまた来る、そうで無いんだったら、まあ見た目だけなんでしょう。


 今日も「ビリヤード・クロスロード」は平和です。



______________________________________



 撞球道の過去話


 その昔、二十歳前後で「俺って結構ビリヤード上手いんだぜ」と調子に乗っている少年が居ました。


 少年は「ボールの下を思いっ切り撞くと、ボールがジャンプする」ことを発見しました、そして友達プレーで「どうよ、俺、ジャンプショット出来るもんね!」と大いに自慢しました。


 少年は調子に乗り、18000円のプリントキューを購入しました、今考えると、性能的にハウスキューとほとんど変わらないしょぼい奴です。


 それでも、少年は「俺はマイキュー持ってるんだぜ」と大威張りでした。


 そして、「もっと上手くなって、友達に自慢しよう」と練習している時でした、一人の壮年の男性から話しかけられます、自分の父親と同年代の人から話しかけられるのに慣れていない少年は、ビビりつつも話を聞きました。


「君も、キュー買ってちゃんと練習してるみたいだから言わせてもらうけど」


_________________________



 告げられたのは今まで得意満面で放っていた「ジャンプショット」がルール上完全なファールである事、そして


「これがジャンプショットだよ」


 正しいジャンプショットは下から掬い上げるのではなく、上から付き下ろしてラシャに反射させる、そう言うショットだった事。


 実際目の前で「本当のジャンプショット」を実演してもらった。


 その時の恥ずかしさが解ってもらえるだろうか?今まで散々自慢してきたテクニックが、完全に勘違いだったと思い知らされたのである。


 その事も有って、「ジャンプショット」とか言ってる場合じゃない、事に気付いたのです。


_______________________


 その少年は、ビリヤードの基礎を調べ始めました、フォーㇺの基本、基本練習、狙い方の基本、いろんな本を読みながらビリヤード場に行って、一人研究を始めました、そうしたら、店員さんとか見ず知らずの人達が声を掛けてくれて、いろいろ教えてくれるではありませんか!



_______________________



 その後時間が経ち、少年もA級になりました。


 ここはネットカフェ、目の前には好き放題暴れている少年達。


 少年隊は笑顔で手玉が場外しても構わず大笑いしています、


 自分の方に転がってきたので、手玉を返しながらレクチャーします、ジャンプショットっていうのは下を撞くんじゃなくてね・・・


 実際にやって見せると「スゲェ、マジかよ、もしかしてプロなんですか!?」とか大はしゃぎ。

 いやいや、自分とプロや、あの寒気がするようなトップアマ達を比べるとか勘弁してくれよ、と思いつつ、この子たちの一人でもいいから。()()()()へ来てくれるといいな、と思っている自分に、不思議な縁を感じたのだった。


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