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三十路から始める撞球道  作者: 想々
第二章、B級アマナイン編
49/52

アマナインベスト8 VS千葉さん


 ベスト8の対戦相手は、新潟代表の千葉さん、紛らわしい(笑)


 対戦表は5枠の千葉さんが持って来る筈なので、自分はそのままテーブルに向かう。

 一般にビリヤードの強豪県と言えば東京、神奈川、静岡、大阪、沖縄等。

 新潟を馬鹿にする訳ではないけど、なんとなく行ける気がする。


 そう思っていた____試合開始までは。



_________________________



「セーフティー」


 わざわざコールして千葉さんが手玉を撞く、3番をごく薄くカットした手玉は3クッションで9番の裏側へ。


 キツイ。


 現在のスコアは0-2、ここまでのゲームで千葉さんはミスらしいミスをしていない。手玉フリーからだと確実に取り切ってくるだろう。


 千葉さんは20代前半位だろうか、ひょろっとしたやせ型で、あまり特徴のない感じ。

 プレイスタイルも何かに特化してると言う訳でもなく、セオリー通り取ってくる感じに見える。今みたいなセーフティーも決めてくるし、クッションの使い方も上手い。


 コースを探すが、手玉と9番が近すぎて、1クッションのコースが無い、仕方なく2~3クッションのコースを探す。

「4×7=28、第一クッション28で第三クッションが7・・・」

 セブンシステムで3クッション、3番の裏から当てる様にセーフを取るが、当て重視のショットだったため勢いが弱く、結果として当たりはしたがその後クッションに入らない。


「ノークッションです」


 手玉をキューで動かし明確にファールであることを伝える。


 軽く会釈をしてボールを受け取った千葉さんは、3番に対して45度程振りをつけてコーナーへカット、押しで走らせて4番にポジション、4番は順引きの2クッションで・・・



___________________



 マズイ、本格的にマズイ、、一応2ゲームは取り返したものの3ゲーム取られて居る為、ゲーム差は1ゲーム広がって2-5の3ゲーム差。


 

 第8ゲームの5番、残り4球で自分に回ってきたボールは直接の入れの無いバンクの形。


 どうする?、多少強引だが、逆を捻って強めに撞き、反射角を詰めれば入れることは不可能ではないように思えるけど、もし外したら確実に終わる・・・


 序盤であったら攻めてしまいそうなボールだけど、この状況、このスコアではあまりにもリスキーに思えた。

「セーフティー」

 消極的だが仕方がない、5番に薄く当てて走らせる。狙いとしては6番に隠しながら手玉と5番の距離を離す、理想は手玉がクッションタッチで止まる事・・セーフティーの基本は「隠す・離す・撞き辛くする」の3つだ。


 少し甘いセーフティーになり、隠れているか微妙な位置、千葉さんはしゃがんで目線の位置をテーブルと同じ位置まで下げ、手玉側から覗き込んで厚みを確認している。


 しばらく厚みをのぞき込んでいた千葉さんは、首を傾げながら立ち上がり、やがて軽く頭を振った。


 その態度に少しホッとする「見えてはいるけど入れは無い」って感じか。


 「セーフティー」


 千葉さんは再び小さく呟くように言うと、5番の右を掠るようなショットを放つ、5番を1クッションで

長クッション際に移動させつつ、手玉を右捻りで2クッション。9番を挟んだ同じ長クッション際見持って来るセーフティー。

 しかしその手玉のラインは・・5番への当たり方がズレたのか、それともクッションの噛み方が悪かったのか、真っ直ぐとコーナーポケットに向かっていた。


 スクラッチ。


「ファールです」


 手渡された手玉を手に、配置を見る。

 残り4球、トラブルは無い。3ゲームダウンのこの状況、ここは絶対に取らなければ!


 たかが4球、されど4球である、まあ5番は問題なくポケット出来る。だが6番と7番の位置が厄介だ。


 6番は丁度フットスポット上にある、7番はヘッド側5番と逆の長クッション際。

 5番を入れた後ストップなら6番はサイドに狙うことになるが、振りがマズイ。

 振りを調整するなら5番を入れながら数センチ単位のポジション調整が必要になるし、そもそもこの状況で浅い角度からサイドを狙うとか入れにリスクが有る事はしたくない。


 6番をコーナーに取るにしても、加減の難しい引き玉でボール数個分引くか、押しなら出しは簡単だけど、その場合5番をロングのコーナーに取る事になり、入れの難易度が上がる・・


「・・・まずは一球ずつだ」

 自分はリスクを避けた。


 とにかく外したらアウトなのだから、入れにリスクが有る様な選択は外していこう。


 5番をコーナーに狙うよう手玉をセット、入れは特に問題ない、あとは・・・撞点を下げる、下げすぎないように、ちょうど2ポイント位、手玉が今ある場所のほんの少し後ろ位まで戻ってくるような、そんなイメージで突き出す。


「カッ!」


 コトンと音がして5番は無事にコーナーへ、そして手玉は、5番をポケットした後微妙にかけられたバックスピンによって戻ろうとする。


 一瞬の停止の後動き始めた手玉、通常ならば2ポイント、ボールで言うならば10個分も進まずに止まる。

 ラシャとの摩擦による抵抗のためだ、しかしここは特設会場、全ての台がサララシャ。

 普段撞いている店よりも抵抗が少ない、結果は


「止まれ、オイ・・・」


 手玉はまるで「ガラスの上を転がっているのか?」と言いたくなるほど中々止まらない、やっと止まったのはサイドポケットを過ぎ、ヘッドスポットに近くなってからだった。


 明らかな引きすぎ・・・・


 残り3球、6番はロングの逆振り、、でも撞点下で右コーナーへシュートすれば2クッションで出る!?


 そうだあと3球、何とか入れ繋げば!

 メソッドに従い構える、6番を右コーナーへ、スクラッチを回避するために()()()()()()()


 直そうとしても治らない悪い癖、思いっきり引こうとすればするほど無駄な力が入る・・


 そしてストロークがブレる。


 6番は()()()()、1ポイント余りも薄く外れ、手玉はそのままコーナーポケットに吸い込まれた。


 頭が真っ白になる、リピーターに帰ってきたボールを相手に渡すことも忘れ、呆然と席に座る。


 いやまだ終わった訳じゃない、気を取り直さなければ・・・


 千葉さんは残り3球を手玉フリーから取りきる。


2-6


 リーチを掛けられた、ここからの逆転には相手に1セットも取らせずに5連取しかない、キツイけどまだ分からない・・千葉さんのブレイク、3番、5番がイン、取り出しの1番は見えているが簡単な配置ではないように見える。


1番、コーナーカット走らせて2番にポジション。

2番、フット側コーナーへ逆押しで2クッション4番へはほぼ真っ直ぐに、残り5球。

4番、ストップショット、6番をコーナーに取り、7番はサイドに狙えそうだ・・

6番、コーナーへ、1クッションで止め、7番はサイドへのイージーボール・・ほぼ形になったように思える、いやまだ分からない!

7番サイドへちょっと引いて止める。

8番、コーナーへ。1クッションで9番をコーナーに狙える位置にポジション、だけど少し振りが有るし、タッチでは無いけど土手撞き気味だ、これは嫌らしい!

9番、外せ、外せ、外せ、外せ!外せ!!


「ゴトン・・・」


 9番がコーナーポケットに落ち・・・手玉は1クッションで、バンキングの様にテーブルの中央をヘッド側単クッションに向かって走っている、スクラッチコースは無い。


2-7


「フゥー~~。」


 大きく息を吐いて立ち上がると、千葉さんが握手を求めてきた。


「「有難うございました」」


 お互いに検討を讃え合って別れる。


 大きく息を吐き出しながら、上を見上げる。天井にはかなり明る目の照明、それがやけに目に染みた。




「負けた、かあぁ~~~~~」




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