表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
三十路から始める撞球道  作者: 想々
第二章、B級アマナイン編
46/52

アマナイン ベスト16 VSオーガさん③

この話の冒頭の配置図をアップした後、配置図アプリの調子が悪くなって配置図の追加や削除しようとするとフリーズ、作成済み配置図の編集は出来るけど保存しようとするとフリーズ、アンインストールして再インストールしても配置図が消えなくて結局配置図無しになってしまいました。解りにくくなってしまったら申し訳ありません。

作中の(注)は後書きに説明が有ります。



 挿絵(By みてみん)



「ふむ、問題はこの6,7番のトラブルにどこかでアプローチしないと、そこで手詰まりに成ってしまうだが、1~4番までは入れも出しもイージー、逆に言えばいくらでも工夫の仕様が有るという事なんだけど・・・」


 トラブルがフット側の短クッション付近であるのに対し、1~4番がヘッド側と言う位置関係が悩ましい、どこかで割りに行ったとしても残り球がロングボールになるのは避けられないからだ。


 まあ4番は穴前だしロングボールでも入れるのは容易い、だけど3番を入れながらトラブルを割りに行くラインが思い浮かばない・・1番を入れて引いて、2番をサイドにシュートしながら割りに行くというのも手だけどクッションを使わずに直当てに行く場合かなり正確な手球のコースが要求される・・そして最悪なのはトラブルを割った挙句3番へのコースが9番で隠れる事・・・4番を入れた後2番の位置あたりに手球を持ってこれれば5番を入れながら1~2クッションで行けるけど、少しでも薄くなったら割りに行けなくなる・・


 割りに行くなら2~5番のどれかを入れながらアタックする事になる訳だが、数々の選択肢が有るものの同時にそのデメリットも浮かんでしまい、何をしていいのか解らなくなる。


「30秒です」


「エクステンション!」


 時間を延長して考えをまとめる、そして一つの考えに辿り着いた。


「よし、これで行こう」




_______________________________________





「日吉さん、かなり考えてますね・・・」


 隣で沙樹が悔しそうにつぶやいた。


「あの6,7さえ無ければ完全に『出来てる(注1)』配置なのにぃぃ、なんであそこでトラブルかなぁ!?」


 まあ沙樹の言いたいことも解る、1~5番までは入れも簡単だし、入れただけで次に出る様な簡単な配置だ。6,7番の位置がちょっとだけズレてシュートラインが通ってさえいれば、ちょっと上手いC級の子でもマスワリが出せるような配置と言っていいだろう。


 しかし実際トラブルになっているんだから仕方がない、さて、日吉君はどう出るかな?



 そして試合が動く。


 日吉君はしばらく悩んでいたが、やっと納得がいく考えに辿り着いたのか、ゆっくりと1番に対して構えを取った。



 一番を狙うのは当然サイドポケット、ストップショットでポケットすれば自然に2番を逆側のサイドポケットに狙える位置に出る。


 予想通り1番をサイドに・・・強い!?


 これだけ近い距離なのだから普通に軽く、やや下を撞けばストップできる。しかし日吉君はあえて強めに弾くように1番をポケットの左サイド一杯にシュート、厚みがズレた事によって手球はストップでは無く分離角方向に横滑りしたように動き、5番に当たって止まった。

 一見ストップショットに失敗したのが偶然5番に当たって「当て止め」の形になってくれたように見えるけど、もしかしてこれは・・・


「あっぶなー、今ギリギリだったよ、日吉さん何やってるかなー、もっとリラックスして!深呼吸・深呼吸!」


 沙樹は単純なミスだと思ってるみたいだけどそうじゃない、日吉君の納得した表情を見てもそれは明らかだ。周りだと田辺君は軽く拍手していたから気付いているみたいだな。


 日吉君は1番をポケットした後少し考えてから、危なげなく2・3・4番をポケットしていく、そして5番。


 4番をポケットした後、手球は1クッションで丁度センタースポットのあたりにコントロールされている。そして5番と言えばフット側コーナーポケット付近、丁度9番の少し上あたり。


 ここで沙樹も気付いた様だ。


「あれ?コレ普通に5番入れればトラブル割れる!」


 沙樹が「ラッキー!?」みたいな言い方をしているので、思わず口を出してしまった。


「偶然じゃないよ、1番を入れた時に手球を5番に当ててただろう?あそこで5番を「寄せ」て、ブレイクボールにしたんだ」

 1番の時点で寄せて置きさえすれば、5番の移動した先を見て4番からの出しを決めればいいのでリスクが少ない、いいアイデアだ。


『ブレイクボール』と言うのは14-1(フォーティーン・ワン)、あるいはストレートプールと呼ばれるゲームの用語だ。

 このゲームは15個のボールを使い、14個のボールをポケットした時点で残り一つのボールを残したまま14個でラックを組み直し、その残っているボールをシュートしながらブレイクするという高度な事をやらなくてはいけない。

 当然残す1球にはブレイクに適した場所にあるボールを残しておくわけだが、そういったボールが無い時、プレイ中に「的球をポケットしながら手球を他の的球に当ててブレイクしやすい場所に動かす」という事をしたりする。


 これを「ブレイクボールを()()」と言うが、今、日吉君がやったのはまさにそれだった。


「こう言う発想はナインボールばっかりやってると中々浮かばないんだよね、沙樹も帰ったらやってみるかい?14-1を」


「え?うーん」


 沙樹はあまり14-1をやりたがらない。14-1もある程度ランが出る様になってくると面白いんだけどねぇ。


 そうこうしている内に日吉君は5番をポケット、軽く転がすようにして撞いた手球がトラブルに向かいヒットする。7番は長クッション際に走って行ってしまったけれど6番は穴前に残った。


「これで形になったな」


 6番を薄くカット、バタバタで7番を同じコーナーに取る、7番は少し撞点下で入れるだけでいいだろう。


 大きく深呼吸をした日吉君が、9番をポケットする。


 「今の取り切りは良かったよ!」 

 そんな思いを込めて拍手をしていたら思わず声が出ていた。


「ナイスシュート!」


 日吉君は一瞬こちらを見上げると・・・少し照れたように笑った。



(注1:出来ている(あるいは出来た、出来配置)

形になっていて、最後まで取り切れる様な配置の事。


「あの配置はまさか・・・」

「知っているんですか!?叔父さん」

「うむ、聞いた事がある・・・」

今回は沙樹ちゃんが虎〇、古賀さんは雷〇ポジションです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ