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三十路から始める撞球道  作者: 想々
第二章、B級アマナイン編
45/52

アマナイン ベスト16 VSオーガさん②



 そしてついにその時がやって来る。


 オーガさんは薄めの球を大きく走らせて出しに行くが結果隠れてしまい、クッションからのショットはセーフだったもののミス、手球、7番、8番がテーブルの上を走り回り、残ったのは()()()イージーなショットだった。

 まあいかにレボシャフトが優秀だろうとも、流石にクッションからのボールまで自由自在と言う訳じゃない。


 1ゲーム目はマスワリ、2ゲーム目も回ってきたボールが隠れていて、セーフを取るも、その後取り切られてしまった。

 しかし0-2とリードされた所でやっと入れが有る球が回って来た、しかもハイボールの7番からだ!


 ・・・それは良いんだけど。


挿絵(By みてみん)


 この配置、7番の入れだけを見れば全く問題が無い、ポケットにシュートラインも通っているし、角度的に難しい事も無く撞きづらい訳でもない、適度な振りも付いて居る。


 しかし問題はこの9番の位置だ。


 8番の位置的にテーブルの図で言えば右上に出したい、9番が無ければ普通に押し球でのバタバタでポジション出来る・・・

挿絵(By みてみん)

 しかしここに9番が居る事で全てが変わって来る。

 

 押し球や逆押し・・撞点右上のショットで8番方向に手球を向かわせようとすれば9番に当たる。しかも角度的に当たった後の手球はセンタースポット方向、つまり8番に対して薄くなる方向に転がる事が目に見えていた。


挿絵(By みてみん)


 かなり悩ましい配置・・・である筈だった。


 この残り球を見た自分は自然と笑みを浮かべてしまった。


 ココでこの配置かー(笑)



________________________________


 ビリヤードを始めたばかりの3年ほど前の記憶がフラッシュバックする。


 基本を教わり、何と無く中心・上・下の撞点の付き分けが理解出来て来た頃だった。


古賀さん:「今日は捻りをやってみましょう」


日吉:「捻りですか?」


古賀さん「まあ言ってみればサイドスピンの事です、サイドスピンはクッションに入った時に・・・」


 

 様々な「捻りによって出来る事」の実例を見せてくれる古賀さん、当時の自分は驚きながら見ているだけだった。

 そしてその最後に古賀さんが見せてくれたショットが正にコレだ。


 古賀さん:「例えば引き球による殺し球と捻りを組み合わせれば、こんなことも出来ます」


 その時自分が受けた衝撃は相当なものだった、、だからこそ、気が向いた時に定期的に練習する様になってしまったショットのその出番、それが・・・ここで来るか!



 それなりに難しいショットでは有るけど、定期的に練習している為成功率はソレなりに有る。多分練習だったら6割は決められる。


 それに皮肉な事では有るけど・・


「このショット、反発力の強いレボシャフトでやるのは、、ちょっと難しいだろう」


 若干の優越感、結局「全てが完璧な道具」は存在しないという事だ、キューにも「得意分野」と言う物が有る。


 この配置は自分のキュー(TAD)の出番だ。


 ゆっくりとしたテイクバックから、引き切らない位置でそれ以上引くのをやめる。


 短いテイクバックからコンパクトに、撞点右やや下を短く切るようなショット、スピンの割合は引き2に対して右捻り10。


 7番に当たるときには引き回転が解けて殺し球になるように、そしてその状態でMAXの右捻りが維持されるような、そんなショット。



 少し入れた引きは殺し球・・ドロー回転が終わる寸前に的球に当たり勢いを殺す、その後ドロー回転のままであったらクッションで死んでいる筈の右捻り、それは引きが解けたための慣性による前進回転によって、クッションに対して順に入った事により目覚ましい効果を発揮する!


 勢いを殺されてそのまま停止すると思われた手球は、押しでもなく引きでもない純粋な捻り(サイドスピン)の力によって、7番を追いかけるようなラインでクッション際を走り9番を躱す。

 手球の勢いを殺したショットではじき出された7番がトロトロとポケットに向かうのに対し、それを追いかける手球はクッションで加速、描くラインと動きが蛇を連想させる!

挿絵(By みてみん)


 ゆっくりと転がった7番は、やや薄目っだったもののポケットに拾われるように転がり落ちてシュートは成功、手球も8番のポケットが容易な位置に出た、これで後は油断しなければ大丈夫だろう。


 ほっと息をつくと背後から拍手と共に聞き覚えのある声で「ナイス・シュート!」って声が聞こえた。振り返ると、観客席の一番前に陣取る沙樹ちゃんと古賀さんの姿が見える。


「頼もしいけど、下手な所は見せられないな」


 気を引き締めて8番に向かい、8番を順引きでポケットして9番に出す。

 9番は近くて真っ直ぐ、ほぼベストなポジションだが油断なくシューティングメソッドから構えに入りこれも沈める。


 1-2


 1ゲーム取り返して少し気分が軽くなった、あまり大差をつけられるとメンタルがやられてしまうからねぇ。


 ちなみにオーガさんはさっきの7番をポケットした時も、9番を入れてセットカウントが動いた時も一言も発さず、腕を組んでテーブルに険しい視線を投げたまま微動だにしなかった。



_________________________________



 

 やはりオーガさんの入れの強さ・・特に捻りを入れた球を、ロングだろうが体制が少し悪かろうが確実に決めてくる・・そんな部分がかなり厄介だった、攻め合う展開は確実に分が悪い。


 お互いに積極的に、多少難しい球でも入れを狙っていく展開で2ゲームを連取された所で、このまま同じ事をしていては不利だと認めざるを得なかった。


 ビリヤードは、基本的に攻めきれるだけの攻撃力を持っている人がやっぱり強い。

 相手を上回る攻撃力でねじ伏せる様に取り切れればそれが一番だけど、自分の攻撃力を把握して、冷静な判断を下すことも大事な事だ・・特に試合では。


 チェンジ・オブ・ペース


 一転してそこから泥臭い仕合を選択。


 分の悪いショットを攻めるのは避けてセーフティーに切り替え、とにかく見えているボールや厚みのあるボールがオーガさんに回らない様に立ち回る。


 かなり厳しいセーフティーに対してもオーガさんの表情は変わらない(と言うか元々厳しい表情なので配置に対して厳しい顔をしているのかどうか解らない)が、オーガさんのミスも増えて確実にセットを取り返す。


 ファールで回ってきたフリーボール、残り4球を取り切ったところでセットカウントは逆転。


 5-4


 リードして迎えた終盤第10ゲーム、ブレイクで8番をポケットして取り出しの1番がイージー、更にポケットに近いボールが多い比較的簡単と言える配置となった、ただ一か所を除いては。


挿絵(By みてみん)


 こういう取り出しの時こそ一気に攻め切りたい所なのに、トラブルが1か所・・・


「何でこう素直に行ってくれないかな」


 思わずため息が出る、さてこの配置、どうするべきだろう?




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