アマナイン ベスト16 VSオーガさん(裕〇郎じゃないよ?)
一つ言っておくと、自分はノーマルシャフトのキューを使っていますがハイテクキュー否定派では有りません、初心者にオススメするならやっぱりハイテクシャフト搭載のキューを進めると思います。実際ブレイクキューはBKラッシュを使っています。(ラッシュのロゴは結構カッコいいしね)
呼び出されたのは男子B級戦の一組目、第9テーブル。
観客席から一番近い列であり、用意されているスコアボードやパイプ椅子の後ろを振り返ると、すり鉢状の客席がそびえ立っているように見える。
いやまあほとんどの観客の視線はA級戦のテーブルに向いているだろうから、自分がそんなに注目される訳では無いと解ってはいるけど、なんか変な事をやれば目に付く位置では有る。
こういう時気を付けなければいけないのが、ギャラリーの目を意識した「よそ行きの球」を撞いてしまう事だ。
「魅せプレー」ともいう。
「せっかく見てる人が居るんだから」と、変に捻ったり、確実性よりもカッコよさ重視と言うか・・まあぶっちゃけ見ている人達から「あの人スゲー、カッコイイ、やるなぁぁ」と思われたいという、承認欲求まる出しのオシャレプレーを選択してしまう事だが、大抵は「成功すればカッコ良かったんだけどね」で終わる事になる。
用意された椅子に座れば、観客席には背を向ける事になる訳だが、後ろから聞こえる話し声や大勢の人の気配にどうにも落ち着かない。いかん、集中しないと・・・まあ試合が始まればソレ所じゃ無いんだろうけど。
「・・お待たせしました」
やって来たのは3回戦とは打って変わった「壮年」というのがしっくりくるような男性。片足が不自由らしく、少し左足を引きずるように歩いてくるその姿が印象的な対戦相手のお名前は「相賀」さんと言う。
口調は丁寧だけど服のチョイスから纏う雰囲気まで「私は堅気の人間ではありません」と、全力で主張している何かが有った。
公式の場所で人目が有るから、刑事事件的な何かに巻き込まれる事は無い(と信じたい)けど、深夜繁華街等で見かけたら、全力で関わり合わない様に距離を取るタイプである事に間違いは無い。
例えるなら一回りガラを悪くした習近平みたいな感じである、真嶋君が暴走族ならこっちはプロの人、と言うか雰囲気が首領って感じがする。色んな意味で強そう・・・最初に名前を聞いた時「え?オーガ?」とか思ったけどあまり違和感は無い。
そういう人が、光沢のある深紫のシャツに白ネクタイ、黒系のベストでビシッと決めているのだ。
ややビビりながら試合前の握手。
幸い指が何本か足りないという事は有りませんでした(笑)
ブレイク権を取ったのはオーガさん(もうこれでいいや)
司会者からの一斉ブレイクのアナウンスに会場が静まり返る、昨日は「いよいよ大会だ!」と、興奮して迎えたオープニングブレイク、しかし、流石に昨日一日このホールでプレイしたお陰で、大分緊張は収まっている。
オーガさんが取り出したのは禍々しい漆黒のブレイクキュー、バットだけでは無くシャフトまでもが黒い。というかA級の選手の何人かも同じブレイクキューを使っているようだ。
「あれは・・・BK=Rush・・・」
キュー購入で悩んでからすっかりキューが好きになってしまったため、カタログでは見たことが有る。
木材では無くカーボン材を使用した「レボ・シャフト」搭載の漆黒のブレイクキュー・・数十年前の某漫画では「メチャメチャしなる為凄いスピンをかけることが出来る」と言うトンデモキューとして描かれていたカーボンファイバーのキューだが、実際は固く、トビが少ない安定感のあるハイテクキューとして生み出される事になった。
オーガさんが漆黒のキューを持って静かに進み出る、うーん迫力だ。ちなみにこのキューを製造しているキューメーカーの名前が「プレ〇ター」である。
あのなんか光学迷彩でシュワちゃんと戦う奴の名を冠したキューメーカーとか怖すぎるんですが。
ナインボールのブレイクの基本はどのキューで撞こうと変わりは無いみたいだ。左側のレール際、オーガさんは静かに手球をセットするとオープニングブレイクのコールを待つ。
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「ブレイク用意・・・・・・・・・ブレイク!」
アナウンスと同時に会場のあちこちでブレイク音が響き、目の前でもオーガさんが今日最初のブレイクを放った。会場からは大きな拍手が送られるが、自分は目の前の光景に釘付けになっていた。
真嶋君の様な大きな体重移動で、全体重をキューに乗せるようなダイナミックなブレイクでは無かった。どちらかと言えばコントロール重視の様な動きの無いブレイク。
勿論ブレイクは力じゃないってのは解るけど、それにしてもフォームから感じられるパワーと実際のブレイクのパワーが乖離しているように見えた。
実際ブレイクはコントロール系なのだろう、手球はキッチリと台の中心付近にコントロールされている。それなのにあのパワー・・何が違うって言ったらやっぱりキューだろう。
「確かあのキューって、ブレイクキューなのに10万円位するんだよなぁ」
でも欲しい、、今日学んだ事、ブレイクは金で買える。
「いやまあそう簡単では無いんだろうけど、、うん、買おう」
自分が心の中で一人納得し、大会終了後ブレイクキューを買い替える事を決意している間にもオーガさんのプレイは続いている。
ブレイクは3番、5番がイン、取り出しは1番になる。
オーガさんが取り出したのはブレイクキューと同様、一部に銀の飾りが有る以外はシャフトもバットも全て真っ黒なプレイキュー。恐らく同じメーカーのP3シリーズ・・そのシャフトをプレイ用のレボシャフトに変えてあるんだろう。
やや遠く厚い一番、さほど強く撞いたとも思えなかったショットだったが、1番をポケットした後の手球は切れのある押しで加速して1クッションで戻ってきて2番にポジションされる。
ブレイクキュー同様かなりのパワーだ。
1番を入れた時点でテーブル上、手球と9番以外に明るい色のボールが無くなる。その2球以外に残ってるのは2番(青)4番(紫)6番(緑)7番(茶)8番(黒)見事に寒色系(茶色は一応暖色か?)まるで9番が闇の軍勢に包囲されている様である、そこに君臨するオーガ様。
しかし二番はポジション的にイージーでは無く若干逆振りなのだが、これも力強く叩き込みながら入れに対しての逆捻り(裏回し)3クッションで出して来る。
もうなんていうか「入れやすく、かつ出しやすい位置にポジション」とかでは無く、「見えてる所に出ればOK」みたいな出しなんだけど・・・・・
それから数分後オーガさんは1ラック目最後の9番、やや振りの付いた9番をセオリー通りの順引き(スクラッチ回避のため)でポケットしてマスワリ。
0-1
ベスト16のオープニングは、いきなり撞き切りでセットを取られてしまうと言うハードな展開となった。
オーガさんは「見越しが出にくく、強い捻りを加えてもシュートが安定する」という「ハイテクキューの利点」を十全に生かしたプレイを見せつけてくれた。
出しの基本は「近くて球なり、無理をしなくても入れれば自然に出せる所に出す」が基本、そう考えると先程のセットのオーガさんの出しは、むしろ「あまり上手とは言えない」様な出しだった。
しかし「入れさえ有れば、後は何とか出来る」という自信が有るのだろう。とにかく「見える所に出す」そして「それを入れながらまた見える所に出す」その繰り返し。
普通だったらどこかで限界が来るはずだけど、結果を見ればマスワリ・・・
ホームの店の相撞きでも、メチャメチャ捻りを入れたショットを成功させるハイテクキュープレイヤーを見る度に「ズルい・・」と思ってしまうことが有った、オーガさんのプレイはその究極の形だ。
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2ゲーム目、再びオーガさんが真っ黒なブレイクキューを取り出す。
自分に出来る事は、ひたすら自分の番が回って来る事を待つ事だけだ。
集中を切らさなように、オーガさんの「強者のオーラ」にやられない様にその時を待つ。
実際「ハイテクキュー買えば?楽だよ?」とか腐るほど言われた、でも力技で解決するのはリスクが大きいという事をこのキューから学んだ、他にも学んだ事は数多いと思っている。
負けられない。
カスタムキュー使いとしての矜持を胸に秘めてその時を待つ。すでにオーガさんと言う人物の外見はどうでも良くなり、テーブル上の配置を見つめる自分の頭の中では「この配置を攻略する為に必要な事、やってはいけない事」が箇条書きされ始める。
いくらハイテクキューと言えど万能ではない、多少リスクが下がるというだけで「無理なスピンやハードショットを必要とするボールは難球である」という事に違いは無いのだ、そうそう上手くいく訳が無い。
来るべき時に備えて、テーブル上の配置を見つめる。不利な状況では有るけど、心の中はやけに落ち着いていた。
前にプレ〇ターのキューについて「性能はともかく、ロゴのジャガー?のマークがカッコ悪いから使う気がしない」と話していたら、二つ向こうのテーブルで撞いてたのがプ〇デター所属のプロで「ブレイクはラッシュ使ってます!売り上げに貢献してるので許してーw」とか慌てて言い訳。笑って許してくれましたが、皆さん周りには気を付けましょう(笑)




