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三十路から始める撞球道  作者: 想々
第二章、B級アマナイン編
39/52

アマナイン3回戦、VS真嶋君②


1-0


 2ゲーム目のブレイクが終わり8番がイン、取り出しの1番と全体の配置を確認する。


「うん、コレは流石にセーフティーだわ」


 難球だが、入れさえすれば後が楽になる配置だったら頑張る価値も有るが、入れても次が更にキツくなるんじゃあ頑張る甲斐も無い。


 短クッション際の1番は無理して縦バンクにはいかず、1番を長クッション際に送って7番に隠しに行く、手球が1番よりコーナー側になるように注意すれば、隠れなくてもロングボールの難球が残る、堅実なセーフティー。


 手球、的球共にやや弱く、隠すことは出来なかったがバンクかロングカットしかない残り方、しかも2番に対して逆振り。


 まあ及第点かな。


 手番を譲り座った自分と入れ替わるように立ち上がった真嶋君は、眉間にしわを寄せて1番にガンを飛ばしている。アフレコをするなら「てめぇ、何でそんなとこに居やがるんじゃ、あぁ!?」


 といった所だろうか、試合中に不謹慎だけど真嶋君の仕草が一々ツボに入ってしまう。


 おっと、肝心の真嶋君はしばらく1番を睨んでいたが、ふっと眉間から力を抜き「へっ、しょーがねーな」と言う笑いを浮かべながら構えに入る。


 ホント字幕でもついてるみたいに解り易い。


 そうして放ったショットはコーナーへのカット!


挿絵(By みてみん)


 入れたのも凄いけど出せるのがさらに凄い、かなりえげつない引きと左捻りが掛かっているのが良く解る。思わずと言った感じで「お~ぉ!」と声が出てしまった。


 それに対して得意満面の顔で2番にアプローチしようとした真嶋君の表情が一瞬で曇る、2番の厚みや振りに不満が有るらしい。


 少し腰を浮かしてみると、2番に対しては厚みが無くほぼ真っ直ぐ、3番の位置は逆側の短クッション際。2番の入れは簡単だけど、またもや出しに関してはかなり強引なショットが必要に見える。


 しかし表情が曇ったのは一瞬だけで、割とノータイムで真嶋君は構えに入った。撞点はやはりかなり下の様だ。


「やっぱり引くか」


 こういう配置の出しは一応知識には有る、ドローショットが苦手な自分は得意ではない、まず引きが思いっきり切れる事が大前提、しかもハードに引きつつ捻りを入れなければならないため、練習ではこの場合の2番が入らないという事も多いのだ。しかしあのロングボールを事も無げに引いて見せる真嶋君なら恐らく・・・


 見守る自分の前で、特に力む様子も無くショットに入る真嶋君、素振りの様子からはそこまでハードに引こうとしている様には思えない。しかし手首のスナップで送り出されたキューが撞点を捉え、2番がコーナーに叩き込まれた後の手球の動きは劇的だった。


 2番に当たった手球は一瞬停止、そして一拍置いた後、鋭く戻ってきて手前の長クッションへ。長クッションを噛んだ手球は、分離角を若干広げてヘッド側短クッション方向に走り出す。


 2番に当たった瞬間に手球が停止した時点で、ショットによる運動エネルギーは2番に移っている、つまりその後の走った距離は全てスピンによるエネルギーでの移動という事になる。


挿絵(By みてみん)


 相当なスピンの量を生み出す切るようなストローク、正確な撞点と正しい見越しを身に着けていなければ出来ないショットだが、それを事も無げにやって見せた。


 というか引き球に自信が有るからこそ、力まずリラックスした状態でストロークできるのだろう、自分みたいに引き球が苦手な人は撞く前に解るらしい。

 ロングドローの時とか、撞く前の素振りの時点で「さあ引くぞ!、頑張って下を撞くぞ!」と気負っているのが丸解りだと、笑われたことが有る。


 3番からは入れも出しもイージーなボールが続く、7番から9番への出しでやや引きすぎた点を除いて、全く危なげなく9番までを取り切った。


1-1


「っしゃぁ!」


 9番を入れた瞬間真嶋君の気合の声が聞こえた、ビリヤードの試合では珍しいともいえるけど、全く嫌な気はしなかった。


 むしろスポコン物の漫画のワンシーンみたいで、気分が盛り上がる気さえする。

 背景はやっぱり炎のエフェクトなんだろうか(笑)


______________________________________________________________________

 

 

 真嶋君のブレイクから始まった3ゲーム目以降、やはりと言うべきかお互い攻め合う荒れた展開となった。今の所真嶋君のプレイスタイルは攻撃10:守備0である。


 完全に隠れているボールとかはともかく、


「中途半端な守りなんて食い破ればいい」


 とばかりに、ロングやバンクなどの難球を入れて、そして出して来る。


 結果として、「完全に決まる」と確信できるセーフティー以外、つまり「難しく残してお茶を濁す」的な守りが凄くやり辛くなってしまった。

 だったら中途半端なセーフティーに行くよりも、多少強引でも攻めようと言う決断だ。そして今の所上手く行っている。


 今再び9番を入れてリードを伸ばす。


5-3


 2セットリードでのブレイク、このセットを取れば3セットリードでリーチを書けることが出来る、そうすれば精神的にかなり優位に立てる筈、そうすれば勝利はほぼ間違いない!


「このセットさえ取れば!」


 勢いに乗ってブレイク、取り出しの1番は見えたしトラブルもイリーガルも無い、いいブレイクだ・・入ってさえいれば。


 結果はノーイン、手番は真嶋君に回る。


 冷たい汗が頬を伝う。

「・・・あれ、コレ何かのフラグじゃないの?」


_______________________________________


 第9ゲームブレイク後の配置。

挿絵(By みてみん)

「次のゲームの配置をラストに持って来る」と言う終わり方にしてみました。

麻雀漫画なんかでよくある「何を切る?」では有りませんが、さて皆さんならこのラック、どう攻略するでしょうか?

「自分だったらこう出して、こう取っていくなー」とか考えながら楽しんで頂けたら嬉しいです。

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