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三十路から始める撞球道  作者: 想々
第二章、B級アマナイン編
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37/52

二回戦終了、ブレイクタイム。




 何とか2回戦を突破して、県勢の皆の所に戻って来たのだが、何やら空気が重い。


 一体どうしたのだろうかと思い、古賀さんに声を掛ける。


「あの・・お疲れ様です、何とか勝ちました」


「ああ日吉君お疲れ様、2回戦突破おめでとう」


 ぎこちなく返事をする古賀さんの隣にその原因は有った、負のオーラ漂わせる沙樹ちゃんである。黒いオーラを纏った沙樹ちゃんが、首だけをゆっくりこちらに向けて抑揚のない声で言う。


「あー、日吉さん、おめでとうございますー」


 一応こちらに気付いた様だが言葉に覇気が無い、重症だ。背景に「どんより」と言う書き文字が見えそうだった。


「えーと、その様子だと・・」


「負けました」


 そう言うと、ハァ~っという溜息と共にガックリと肩を落とす沙樹ちゃん。


 古賀さんが言うには自分が呼び出された後、すぐに沙樹ちゃんにも試合の呼び出しが掛かった。

 その相手と言うのが、、


「アマチュアの試合に元プロの選手が居るのって、おかしくありません?」


 という事だったらしい。



 対戦相手は有村さんと言って、10年ほど前には女子プロの中でも上位だった程の選手、実際クロスにも来たことが有り、沙樹ちゃんはレッスンも受けた事があるそうだ。それが結婚・出産を機に子育てに専念するためプロを引退したのだが、子供が大きくなって手が離れたため今回アマチュアとして出場して来た。

 沙樹ちゃんにとっては師匠の一人と言っていい存在、その人と見事にぶち当たったと言う訳だ。


 1-7での完敗、一度引退してブランクが有るとはいえ、力の差は歴然だったようである。

「前の試合の対戦相手のお姉さんが、負けてもカッコよかったんで見習いたいんですけど、ちょっと無理かもしれないです」

 と言った後沙樹ちゃんは再び俯き、試合内容を思い出しているのだろうか。時折「あそこで何で・・」とか「無理に攻めたのがダメだった・・」とか「あのBB(それ以上いけない)」とか言う反省?の声がボソボソと聞こえてくる。


 そしてミスをした自分が情けないのか恥ずかしいのか、思い出しては「あー、もぅ!」って感じで悶えている。


 

 そんな沙樹ちゃんを見て安心した。

 一瞬闇落ちしちゃったのかと思ったけど、そんな事無かったわ、全く怖くないもの。

 コレはあれだ、せいぜい「まっくろくろすけ」とかそのあたり。



「今、何か失礼な事考えませんでしたか?」


「いや、別に」



 毎回思うけど、何で解るんだろう?



 と思っていたら唐突に話題が変わる。


「叔父さん!今日の晩御飯また居酒屋に行きたい。もう試合無いしお酒飲んでも大丈夫でしょ?」


 急に話を振られた古賀さんだったけど、年長者らしく「それは良いけど、飲み過ぎないようにね。お酒は楽しく飲まないとダメだよ?」と冷静に返していた。


 酒好きな自分としても反対する理由は無く「昨日のお店も当たりだったし、楽しみですね」と話に加わろうとすると、沙樹ちゃんから「日吉さんは次の試合に勝って明日も試合が有る様なら、お酒はナシで」とか無茶なことを言われた。


 「え・・・」しばらく何も言えないでいると、「冗談ですよ、そんなこの世の終わりみたいな顔しないで下さい(笑)」


 と笑われてしまった。

 自分・・どんだけガッカリした顔をしていたんだろう。


 ともあれ、そんなこんなでワイワイ話しているうちに沙樹ちゃんの闇落ち(まっくろくろすけモード)も解消され、通常運転に戻って来た。



 う~む、しかしお酒か、古賀さんはそんなに強くないみたいだけど、沙樹ちゃんはどうなんだろう?

 普通に考えれば家系的に同じだと思うけど、逆に物凄い酒豪とかだったら面白いよな。


 でもまあ最初は弱めのお酒を試してみるのが良いだろう、甘目のカクテルとか・・って沙樹ちゃんは甘いのあんまり好きじゃないんだっけ?

 清涼飲料水の好みを思い出し、「じゃあジントニックあたりかな」などと考えた所で、3回戦のアナウンスで自分の名前が呼ばれる。


 おっと、早い。


 今日の試合はこれでラスト、時間はすでに17時近くになっている。

 試合開始から7時間以上経過している訳で、流石に疲れを感じてきているけど、これが終われば一段落だ。

 さっきの試合はグダグダな展開も多かったとはいえ、ショット自体は悪くなかった。

 この後の晩御飯のお酒がどんな味になるのかは、この試合次第なのだから、勝利の美酒を目指して頑張って来よう。


 先に名前を呼ばれたのが自分だったので、今度は自分が対戦表を取りに行く。


 その道すがら初めてお酒を飲んだ時の事を思い出していた、あれは高校の頃だから・・えっ?もう15年くらい前になるのか!?

 改めて考えると結構な時間が経っていてビビるものの、結構鮮明に覚えている。


 確か3%くらいのリキュールを飲んでみたっけ、メルシャンから出ていた桃のカクテル。



 アレってまだ有るんだろうか?




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