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三十路から始める撞球道  作者: 想々
第二章、B級アマナイン編
33/52

一回戦終了、ブレイクタイム



 一回戦終了。


 何とか二人とも残ることが出来た、しかし同県勢のAクラス代表や、アントニーの爺さんは一回戦で姿を消した。もちろんその二人だけではない、シングルイルミネーションのこの大会では参加者の半分、実に160人もの人が初戦で姿を消す。



 そう言えば会場をぐるりと取り囲むすり鉢状の観客席、その人口密度が明らかに薄くなっている気がする。


「疲れましたぁ~」


 帰って来た沙樹ちゃんがマイタンブラーで喉を潤している、中身は物凄く濃い日本茶、前に一回分けてもらったことが有るが、コレかえって喉渇くんじゃないかと言うレベルの濃さだった。


 見た目はマカロンをお茶うけにミルクティーでも飲んでいそうなのだが、中身は餡子とお茶をこよなく愛する日本のお婆ちゃんである。



「今何か失礼な事考えませんでした?」


 ジト目で睨まれ慌てて話題を変える。


「初戦突破おめでとう!、最後までハラハラしたけどいい試合だったね」



自販機で買ったコーヒーを飲みながら一回戦の試合をお互いに振り返る。


「解ってはいましたけど、7先は流石に長いですよね、すごく疲れました」


「まあ沙樹ちゃんはヒル・ヒルまで行ってたからねぇ、都合13ゲームもやればそれは疲れるよ。普段の試合で考えれば3試合位ぶっ通しでやってたようなものだもんね」


「しかも全国って事で緊張している状態でそれですもん、はぁ、でも今日中にあと2試合やるんですよね?」


 沙樹ちゃんがそういうのを聞いて思わず笑ってしまった、それを見た沙樹ちゃんが不思議そうに言う。


「・・って何笑ってるんですか?」


 本当にこの子はポジティブと言うか、敵わないなぁと思う。次で負けたらそこで終わりなのに、そんな事は全く考えていないのだ。


 その事を告げると、沙樹ちゃんは強気な笑顔でこう答えた。


「当たり前じゃないですか、負ける気で試合に出る人は居ません、全部勝ちに行きますよ!?」


 それがツボに入ってしまい、ひとしきり笑うと気が軽くなった気がした。



 そりゃそうだ。



________________________________




 しかし、すでに時間は午後に入って大分経っている、このペースで行って本当にあと2試合も出来るんだろうか?


 そんなことを何気なく口にすると、隣にいた古賀さんが答えてくれる。


「まあシングルイルミネーションだからね、1試合目で160人、2試合目で80人、3試合目で40人、3試合終わる頃には普通の試合と変わらないくらいの人数になって来る、それで台の数がこれだけ有る訳だから、試合が進むごとに待ち時間は少なくなるよ?」


 言われてみればそうだ、台の数が24台でそれぞれの台で2人ずつプレイする訳だから、最大で48人まで同時にプレイできる。って事は「あれ?もしかして4試合目以降、つまり明日って実質的に待ち時間ゼロになるんじゃ・・・」


「すべての試合がピッタリ同時に終わるわけじゃあないから、先に勝ち上がった方は、次の対戦相手が勝ち上がって来るまで休憩できるけど、試合に時間がかかった方は連戦になるね」


 沙樹ちゃんと二人で「うわぁ」っていう顔になる、あんまり長く待たされるのも嫌だけど、7先の試合で4連戦とかあんまり考えたくない。っていうかそれだと昼ご飯を食べる時間すら無さそうだ。



 今日は最初の試合が来るまでかなり時間がある事が解っていたので、会場近くのお店まで食べに行った、意外と美味しかったのでもし勝ち残れたら、明日もココに来ようとか思っていたけど、そんな時間は無さそうだ。


 それを沙樹ちゃんに言うと「コンビニとかで簡単に食べられるものを買ってきておく方が良いかもしれませんね」と言う、確かにその通りだと思ったので「ホテルから試合会場までの間って、コンビニとか有ったっけか?」と言ったら、なぜか沙樹ちゃんに笑われてしまった。


「??」


 思わず怪訝な顔をしてしまったが、その後の沙樹ちゃんのセリフで納得した。


「日吉さんだって明日の昼まで勝ち残る気マンマンじゃないですか(笑)」



あー、これは一本取られた。


悔しかったので、こう返しておいた。


「当たり前、負ける気で試合に出る奴なんて居ないよ」


それを聞いた沙樹ちゃんは、一瞬パチクリとまばたきした後、弾けるように笑う。


そんな事をしている内に、場内アナウンスが聞こえてきた「試合の呼び出しをします、○○県代表、日吉選手、24番テーブルで試合です」


「お、本当に早い」


さっきの試合から1時間ちょっとしか経っていない。


「じゃあ行ってくるね」


「頑張って下さい!」


キューケースを持ち、24番テーブルで向かう、さて、次はどんな相手なんだろう。すでに緊張は無い、会場の雰囲気にも慣れ、純粋に楽しみだった。




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