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三十路から始める撞球道  作者: 想々
第一章 ビリヤードを始めよう~C級編
17/52

まだ終わっていない!?

前話ベスト8の続きです、長くなってしまいそうなので途中で切りました。負けた。と思ったけど実は・・というパターン、使い古されたパターンだけど、一寸でも驚いてくれたらうれしいです。


 仕方ない。こういう事も有る。


 挨拶をしようと顔を戻すと、亀岡さんは9番をテーブルのフットスポットに戻しているところだった。


 一瞬「?」となったが思い出した。


「そうか、フット側コーナーへのエースは無効なんだっけ!」


 セルフラック・・自分でラックを組むレギュレーションの場合、ラックに細工をする事への対策だと思うが、フット側の2つのコーナーへのエースは無効になるのが一般的なルールだ。


 もし9番がフット側コーナーに入った場合、エースではなくフットスポットに戻される。ただしイン扱いではあるので、他のボールが落ちていなくてもブレイク側のプレイヤーの手番は続行される。


「まだ終わっていなかった!」


 亀岡さんはそのまま1番に向かってプレイを続けている。2番までポケットし3番バンクを狙ったところでミス、手番が回って来るが3番は4番の裏に入り見えていない。何とかセーフを取るが再び亀岡さんにチャンスボールが回ってしまう。


 その後も亀岡さんは何度か入れミスをして、手番は回って来るのだが悉く見えていなかったり難しかったりしてチャンスが来ない。なんとかファールだけはしない様に我慢のプレイが続く。


「流れが悪い・・」


 幸い亀岡さんに回ったボールも難しいボールになり、再びミス・・と思ったら外したと思った7番がフロックイン。


「失礼。」


「いえいえ」


 残り2球、流石に終わったかと思ったがその8番を亀岡さんは外した。


 頭を掻きながら苦笑いする亀岡さん、手番を交代し配置を見る、恐らく最後のチャンスだ。


 8番はコーナーに狙える位置に見えるが、そのシュートラインに被るか被らないかの位置に9番が居る。


 しゃがんで姿勢を低くし、手球の後ろから覗き込むように8番へのシュートコースを見る。


 ・・・被っている気がする。


 手玉の位置があと1ミリ右なら余裕で通っているのに。と言うか、そもそも残り2球でなぜ隠れるのか。


 これもビリヤードをやっている人間なら何度も経験する事だろう。あとコンマ1ミリズレていればOKなのに、「何故そこで止まる!」という。


 この配置でセーフティーとかも良く解らないし、もしかしたら薄め一杯で入るかも。

 そんな希望的観測の元、9番ぎりぎりのシュートコースで8番を入れに行くことにする。ただ9番に当たったらファールなのでそこは慎重に狙いを定める。


 いつも通りのメソッドで構えに入る、やっぱり若干薄いような気がするが、もう他にプランも無いことだし、いいや、行ってしまえ。半ばヤケクソ気味に8番を入れに行く。


 結果はやはり薄く外れる、が、薄く外れ、先に長クッションに入った8番は2クッションでサイドポケットに向かった。「あ、なんかこのコース見たことある。」


 練習の度、最初に行うセンターショット。それが失敗した時にたまに見る光景。


 8番はフロックでサイドイン、手球は短長短の3クッションで9番に出てきた。8番を狙った(結果入らなかった)ポケットにほぼ真っ直ぐの配置である。


「ごめんなさい」素直に謝る、完全に狙ってませんでした。


 亀岡さんは「いえいえ」と笑顔で答えてくれた。


 こういうラッキーフロックの後は、簡単な球を外しやすい。俗に言う「罪悪感ショット」が出ない様に慎重に狙い9番を沈める。


 3-2


「「ありがとうございました」」


 一度は完全に「負けた」と思った上、最後はフロックだったが何とか勝利。

 しかし亀岡さんは本当に上手だった。証拠にフルセットだったにも関わらず、自分達の試合は、C級の試合の中で一番早く終わっていた。


________________________________



「スリークッションって、確か穴の無いテーブルでやるやつですよね?」


 ほかのテーブルの試合が終わるまで、次の試合は無いので亀岡さんと少し話す。どうやら亀岡さんは「スリークッション」と言うポケットの無いテーブルでやるビリヤードのプレイヤーで、ポケットビリヤードの経験は殆ど無いらしい。


「同じ店の若い子に、一人で出るのは不安だから付き合ってほしいって言われてね。」


 自分が沙樹ちゃんと一緒に来たのと同じようなものか(微妙に違うけど)


「エントリーする時にどのクラスで出ようか迷ったんだけど、まあポケットの経験は無いからC級で良いんじゃないかって事でC級で出たんだけど、思ったより勝ててしまって、歴だけは長いから、何だか申し訳ない気分になって居た所だったんだよ。」


 話を聞いて、何だかちぐはぐな印象を受けた理由が分かった気がする。


 スリークッションは穴の無いテーブルで、手球、赤、黄色の3球のボールを使ってやる競技だ。


 手球をカラーボールに当ててから、3回以上クッションさせてもう一方のカラーボールに当てると得点になる(確かそんな感じの競技だったと思う)手玉を走らせないといけないので、基本、的球には薄く当てて走らせて、捻りの多い球を使い、クッションで走らせたりコースを変えたりとか、とにかくクッションの知識が無いとまともにプレイできない様な難しい競技だったと思う、スリークッションのプレイヤーなら、あの時ツークッションのキャノンショットを決めてきたのも納得だ。


 反面「手球ではなく的球を狙った方向に走らせる」とか「的球にものすごく厚く当てる」とか「的球に当てたボールを()()()()()」とかポケットビリヤードでは当たり前のボールに違和感を感じるといった所だろうか。


 同じ「ビリヤード」ではあるけど、さっきの亀岡さんは「スピードスケートの選手がフィギュアスケートの大会に出ていた」ような感じだったのかもしれない。


 ただ歴も長く、基本も出来ているから、C級戦位だとそれでも勝ててしまうと。



「それじゃ、頑張ってね。」


 キューを片付けた亀岡さんが席を立つ。


「はい、またお願いします」


 遠い店から来ているらしいし、もう帰るのだろう。出口に向かって歩いていく亀岡さんを見送った後、他のテーブルの様子を見る。B級の試合はすでに終わっていて、C級も9番テーブルの試合が後1セットで勝負が付く状態。あの試合が終わればベスト4の試合が始まる。


 流石に疲れてきた、少しでも休んでおこう。洗面所に行き、冷たい水で顔を洗ってさっぱりする。ウーロン茶を頼んで飲んでいると、9番テーブルの試合が終わったようだ。


 慌ただしく集計が終わると、準決勝のコール。正直もう少し休みたかったが、他の人たちはほぼ連戦同様なので、まだマシな方かもしれない。


 さて、次はどんな人が相手なんだろう、流石に亀岡さんみたいな人は、そう居ないと思うけど。


 ウーロン茶のグラスをカウンターに置くと、テーブルに移動するため、キューケースを手に立ち上がった。



亀岡さんは最初こんなキャラ(スリークッション出身のヒネリスト)じゃありませんでした。最初考えていたキャラは・・・名前を変えて次で使おうかな。

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