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三十路から始める撞球道  作者: 想々
第一章 ビリヤードを始めよう~C級編
16/52

決勝トーナメント1回戦、ベスト8

本編再開です。相変わらずC級戦とは思えませんw



 一斉ブレイクが終わり、会場内からパラパラと拍手が送られる、自分も椅子に座りながら軽く拍手をしつつ、ブレイク後の配置に注意を向ける、いよいよ決勝トーナメントの幕開けだ。


 亀岡さんは、自分よりだいぶ上の小柄な男性、40代、もしかしたら50歳に届いているかも知れない。そういう意味では古賀さんと同タイプなのだが、大きく違うのは、度が強そうな黒縁の眼鏡を掛けている事。


 眼鏡のせいで見にくいのか、上体を起こした独特の構え方が印象的だ。


 そして何より、やたらと「捻り」、つまりサイドスピンをかけたショットをする。ほぼ真っ直ぐだったり「そこは捻る必要無いんじゃ・・」というボールまで捻ってくる。一瞬捻っているのではなく、中心が撞けてないだけなのかも?とか失礼な事を考えかけたが、これは明らかに意図的にかけられたスピンだ。

 当然捻るという事は、入れが難しくなって安定感が無くなるので、必要が無いボールまで捻るのは、あんまり良い事じゃないと思うのだが、これがこの人のスタイルなのだろう。


 構えの入り方などは、慣れた感じがするし、年齢と相まってビリヤード歴はかなり長そうに見える、何でC級の大会に居るのか不思議な位だ。


 しかし、構えに入ってから、的球の厚みを見るのにかなり苦労しているようだ。さっきからちょくちょく構えなおす場面がある。  


 ブレイクで、5番をイン、薄い1番をカットしてからの3クッションでの出しなんか、とてもC級には見えないのだが、それほど難しくない厚い2番の入れで苦しそうにしていたり、何だかちぐはぐだ。


 おっと、そうして見ている間に3番で単純に入れミス、手番が回ってきた。今の3番も普通に入れて、撞点真下でちょっと引き戻せばいいのに、無理やり押し捻りで入れようとしていた感じだ。そのせいで的球を外してしまったと言っていいだろう。


「????」


 まあ相手は相手、自分は自分。自分のプレーに集中しよう。配置を見回す。


 「3番はフット側コーナーに狙える位置で・・・」


 3,4,6,7、番をポケットしての8番、かなり調子が良く、4球連続のシュート成功だったが、7番を入れた後の走り方が短く難しくなってしまった。サイドへのバンクを狙うかセーフティーか。まあここは攻めるだろう、入れば残りは9番だけ、調子も良いし今までも攻めた結果勝ちを拾うことが出来た。


 かなり厚めのサイドバンク、撞点は右上、手玉を走らせて9番をコーナーに取れるようにするイメージ。


 いつものシューティングメソッドから構え、よく狙って・・


 撞く!


 8番に当たった手球は少し強かったのか、順捻りで走り、フットスポットの周りを一周する様にセンター付近に戻ってきた、8番はというと薄く外れて、バタバタの様なコースでヘッドスポット手前で止まる。


 ハイボールでのミス、8番は見えているし厚みもある。本来大ピンチだがこの配置は・・・・



 9番は相変わらずあまり動いていない、フットスポットのやや短クッション寄りに有る。8番はヘッドスポットやや手前、手玉はセンタースポットあたり。一見何の問題も無いように見えるけど、これどちらのポケットを狙っても上を撞いたらスクラッチじゃないのか?位置的に上を撞いてもスクラッチ、下をついても厚さ的に引き戻すのは無理、スクラッチは回避できてもヘッド側短クッションの近くで止まって、9番がかなり難しくなる筈だ。


挿絵(By みてみん)


 正直自分でこの配置をどうするかと言われても、とりあえずスクラッチを回避して出たとこ勝負、難しい9番を何とか頑張って入れるくらいしか思いつかない。


「もしかしたら、ラッキーでおいしい9番が回って来るかもしれない」


 そんな期待を込めながら亀岡さんのプレイを見ていると、亀岡さんは特に悩んだ様子も無く、スッと構えに入り、やや強めのストロークで、8番に向けてショットした。


 8番をポケットした後の手球の走る方向的に、やはり撞点下でスクラッチを回避に行った様だ、手球は長クッションに入り・・・・


「クンッ!」と加速しながら短クッションに向かう、そして、短クッション、長クッションとクッション入る度に加速して、3クッションでフット側に戻ってくる。


 「えぇ!?、なんだその球!」


 ええと・・左コーナーへ8番をシュートして、右に分離して長クッションに入った球が加速するって事は左回転がかかってる?つまり撞点左下か?、しかもあれだけ加速するって事は相当強烈な捻りが入っているという事だ、それをあんなにアッサリ。


 ちょっと走りすぎて、9番をフット側コーナーに狙うスペースを通り越してしまい、9番を狙うポケットは狭いサイド、又は遠いヘッド側のコーナーになってしまったので、出しとしてはちょっと失敗かもしれないが、かなりインパクトのあるショットだ、正直驚いた。


挿絵(By みてみん)


 亀岡さんは9番を狭いサイドに狙いに行くが、手前の角に当たり外れる。滑るようにクッションした9番は奥のコーナー近くの短クッションにタッチして止まり、手球はと言うと、フットスポットを通過したあたりで停止した。ポケットに近くカットも有りそうに見えるが、まず無理というほど超極薄だ。


 まださっき8番の余韻が残っている。自分はあんなショット考えつきもしなかった、はっきり言って凄い。でも・・どんなに凄いショットで8番を入れても、9番を入れられなければ意味が無いのが9ボールだ。


 ちょっとビビってしまった心を深呼吸で落ち着ける。


 入れに行くならカットの他に、長クッションからの空クッションも有るけどファールしたら終わりなのでそれはナシ。9番がクッションにタッチしていることを確認する。


 「これは、()()か。」


 少し前古賀さんに教わった、平行に近い厚みのほぼ無いような、クッション際のボールを入れる為のテクニック。


 手球の位置に戻り、ゆっくりと構えに入る。狙いはシュートコースのさらに1~2ミリ外側。


 撞点は左端、かなり強いサイドスピンをかけたボールが、ぎりぎり的球に()()()()()クッションに入るようにイメージする。


 ラストの9番、とにかく入れる!


 撞点左を捻りこんで放たれたショット、強いサイドスピンのかかった手球は緩くカーブしながら、9番にギリギリ当たらずクッションに入る、サイドスピンの無いボールであれば、そのまま9番に当たらずに戻ってきてしまいファールだが、ここから左を捻った意味が出てくる。


 強い左捻りの入った手球はクッションを噛んだ瞬間、跳ねる角度を左方向に変えた、そして結果、すぐそばに有る9番を真横から叩く事になる!

 

「引っかけ」と呼ばれるテクニック。

 文字通り手玉に真横から引っかけられた9番は、そのままコーナーポケットに向かい、ゆっくりと転がり落ちる。この「引っかけ」は手球と的球の位置関係から、シュート後の手球がスクラッチコースに乗りやすいのだが、何とかそれも回避してくれたようで安心する。


「ナイス・ショット」


 亀岡さんが掛けてくれた声に、軽く頭を下げて、次のセットのラックを組み始める。


「ふう、何とかなった」


 1-0、セットカウントで1歩リード。


 自分の勝者ブレイクで始まったこのセットも、亀岡さんは何でも無いボールを、度々入れミスする。結局このセットはアッサリ自分が取る事が出来て、2-0とリーチを掛けた。


 あの8番は偶然だったんだろうか?相変わらず亀岡さんは捻りのかかったボールを多用する独特のスタイルでプレイを続けている。そしてまた、何でもない様に見えるボールをミス。


 自分の手番、これを取れば勝ち。残り4球、6番、7番と順番にポケットしての8番。


「あっ。」


 2-0というスコアに慢心したのか、それとも連戦の疲れで集中力が切れたのか、今度は自分がイージーなミス。残りの配置は簡単で、流石にこのセットは亀岡さんに取られてしまった。


 2-1。


「いかん、ちゃんとゲームが終わるまで集中しないと」


 気合を入れ直し、亀岡さんのブレイクを見守る。

 サイドブレイクの形で放たれたブレイクは、少し芯を外したのかウイングのボールは入らなかったが、2番をポケット、複雑に動き回るボールに蹴られた9番が、コーナーポケットの淵で止まっていた。


 危なくエース(ブレイクで9番が入る事)だったが、3番が9番のすぐそばに有り、もうこれはコンビで決着が付くのは目に見えている。


 1番の位置によっては終わりだが、1番は9番と対角線状のコーナーの近くの短クッションあたり、手球は9番の近く、そして1番のシュートコースには6番がかぶっているためカットは狙えない配置だった。


 1番が直接狙えない配置に一安心、むしろ回ってきたボールがイージーならチャンスだ。


 流石に亀岡さんも少し悩んだ様子でテーブルを一周り、1番の位置を確認すると、今度は戻ってきて9番近くの長クッション2ポイントあたりから、1番の角度を見ている。

 

「???」


 まさかクッションから1番を入れに行くつもりだろうか?それは明らかに無謀な気がするが・・・


 しばらくクッション沿いで角度の確認をしていた亀岡さんだったが、やがて一番に向かって構えを取る。


 まあクッションからの入れはリスクが大きすぎるし、まずは1番に当ててセーフティーだろう。


 亀岡さんは独特の構えから、相変わらずかなり捻りの入ったショットで、6番の陰からわずかに見えている1番の左端に当ててセーフを取る。


「やっぱりセーフティーか」


 どんな配置になるか立ち上がって確認しようとした時、亀岡さんがその場から動かずにショット後の手球を見ていることに気付く。


 1番の左端にヒットした手球が、短長のツークッションで真っ直ぐ9番に向かっている!?


 そのまま走った手球は、当たれば入る状態だった9番にヒット、見事にポケットした


挿絵(By みてみん)


 ・・・ツークッションでの「キャノン・ショット」


 しかも偶然ではない、明らかに今のは狙って入れに行ったショットだ。やっぱりこの人めちゃめちゃ上手い!

 さっきまで2-0でリードしていた筈が、あっという間に2-2のイーブンになってしまった。


 そして続けての亀岡さんのブレイク。


 激しい音とともに散らばるボール、そして・・・


 複雑にぶつかり合った的球の内の一つが9番を蹴り、そのまま9番はコーナーポケットに。


 手玉はスクラッチしていない、セーフだ。という事は・・ブレイクエース・・2-0からの逆転負け。


 あまりのあっけない幕切れに、思わず天を仰いだ。



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