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三十路から始める撞球道  作者: 想々
第一章 ビリヤードを始めよう~C級編
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決勝トーナメント前、移動と会話。

試合と試合の間の閑話その2、やっぱりかなり短めです。


「決勝に残ったプレイヤーの方は、速やかにナイン・スポットに移動してくださーい」


 時間は午後4時半過ぎ、最大あと3試合あるが、B級、C級それぞれベスト8だから合計16人、ナイン・スポットにはテーブルが10台あるため、もう待たされる事は無い。


 プールタイムの店長?らしき人に一言挨拶をして、再び徒歩でナイン・スポットへ向かう。周りには同じようにキューケースを担いで歩く人達、隣には沙樹ちゃんだ。


「初参戦で決勝に残れるなんて凄いですよ!」


 先ほどから、沙樹ちゃんのテンションがやけに高い。


「このまま優勝とかしたらB級に上がって一緒の試合に出れますね」


「いやぁ、そう上手く行くかなぁ?」


 さっきの伊達さんとの試合は自分でも中々良いプレイが出来たと思う、ただそれより前の試合は相手のファールからのスリーファール狙い、相手のスクラッチ、コンビ9、とにかく運だけの様な気がしてならない。


 一応B級の目安として、「ボーラードゲームで100点以上出せる」「マスワリが出せる」という二つの基準が有るみたいだけど、ボーラードで100点以上を出したのは1回だけ102点が出たことが有るだけで、それ以降は大体50~70点位が多い。マスワリに関しては未達成だ。


 そんな状態でラッキーだけでB級に上がっても、やっていけないんではないだろうか?


 まるでそんな自分の考えを見透かしたように、沙樹ちゃんが言う。


「店によって、実力が伴うまではクラスを上げないようにする店もあるみたいですけど、うちの店の方針は、『上がれるチャンスが有ればとっとと上がる、そして上の環境で揉まれろ』って感じなんですよ」


 つまり、ラッキーでもなんでも上に行けるチャンスが有れば行けと、ちなみにアマチュアビリアードでは、クラスの申告は「自己申告」である。初心者でも「俺A級です」と言って申告すればA級で出ることが出来る。昇級テストとかは無い。その結果下手な人がA級で出て、どんな末路が待っているかは言うまでもない。

 しかも厄介なことに、A級で申告して大会に出た人は、「やっぱり無理でした」と言ってB級に戻る事は出来ない。


 上がることは出来ても、下がることが出来ないのである。


 流石にあまりに無茶な申告をするプレイヤーは。、登録店舗のオーナーから止められるだろうが。逆に公式戦C級に出たことが無くても、店の人から見てB級相当の腕だと判断されればいきなりB級で登録する事も有る。


「今までもB級に上がった結果、全く勝てなくなってビリヤードが、『面白くなくなって』辞めてしまった人もいます」


「でも、上手くなるには、上手な人と撞くのが一番なんです。上手い人とやれば勝てないのは当たり前ですけど、そこから吸収できることも色々有るんです!」


 「むん!」と気合を入れて熱弁する沙樹ちゃん。


「ああ、ホントにこの子はビリヤードが好きなんだな」そう思う。


「それに今は上手い人と対戦して負けても、ただ『あー、負けたー』で済むじゃないですか。叔父さんの時代だと賭け球が普通だったんで、上手い人の技術を盗むにはそれ相応の()()()が必要だったんですよ!?」

 なんか物騒な事を言い出した。


 ビリヤードは知的で紳士なスポーツです。ホントです。


「多分、日吉さんは負けてもそこで腐らないで、次に勝つために練習をするタイプじゃないですか?」


 そんな質問を受ける・・まあ最初から「優勝するぜ!」と言い切れるほどアグレッシブなタイプでは無いので、負けてもそこまでショックでは無いだろう。でも負けて悔しい気持ちはあるので、次は勝ちたいと思うかもしれない。


「まあ、TAD買っちゃったしね、そう簡単に辞められないだろうと思うよ」


 答えになっているか解らないが、負けが込んだからビリヤードを辞めるとか、そんな気は無い。


「だったら大丈夫です。勝ちに行きましょう!」


 簡単に言ってくれる。


 それでも沙樹ちゃんの言葉で、明確な目標が目の前に表示された。


 「B級」


 相撞きしてもらっているB級の人たちに、今は勝てる気が全くしないが、少しでも近づきたい。


 そのためにはまず、C級戦で結果を出さなくては、今がそのチャンスだ。途中コンビニに寄り、10秒チャージ的なゼリーとおにぎりで小腹を満たす。


 ナイン・スポットの店の周りで立ち話をしている人達に、軽く挨拶をしながら店内に。


 負けて試合が終わってしまった選手は、そこで帰る人が多いが、「同じ車で来た人が残っている」とか「同じ店舗から出ている人が残っているので応援するため」等の理由で残っている人も多い。後は少数だが、「大会に参加はしていないけど純粋に見に来た」人もいて、ギャラリーの数は30人弱といった所だろうか。


 決勝のトーナメント表が出ている様なので確認する。自分の相手は「トライアングル」というお店から出場している、亀岡さんという人らしい。沙樹ちゃんに聞いてみると、選手の名前は知らないが、お店は県の西部の端に有るお店で、ここまで試合に来るのは珍しいという事だった。


 それだけやる気のある人なのだろう、気を引き締めて行かねば。


 ケースからキューを取り出し、組み立ててコールを待つ。


「それでは本戦、決勝トーナメントを開始します、コールします、ナインスポット・・・」


 どうやらB級の4組が手前の1~4番テーブル、C級の4組が奥の6~9番テーブルを使用する様だ。

自分の名前がコールされたのは7番テーブルでの試合。


 先に名前が呼ばれたので対戦票を取りに行く、ギャラリーの中にいる沙樹ちゃんと目が合ったので、軽くこぶしを握って「頑張って来るよ」的な事をしてみる。沙樹ちゃんも同じように答えてくれた。


 見ていてくれる人が居るというのは良いもんだな・・・まあ他人がこんな事してたら「爆発しろ」としか思えないが。


 テーブルに着くと対戦相手が声を掛けてくる。


「亀岡です、よろしくお願いします」

「日吉です、よろしくお願いします」と返す、ナイン・スポットは得点をカウントするのに使うのが、カードやマグネットではなく、黒板にチョークというレトロなスタイル、名前を聞いた亀岡さんが、黒板に十字線を書き「K」「H」と記入する。その下に得点をつける訳ね、なるほど。


 決勝トーナメントの開始はの一斉ブレイク、その権利を掛けたバンキングは亀岡さんの勝ち。


 椅子に座ってその瞬間を待つ。


「一斉ブレイクします・・・・・・ブレイク用意」


 今までしゃべっていたギャラリーの声がピタリと止み、静まり返る店内。構えに入るプレイヤーの真剣さが緊張感を生む。


「ブレイク!」


 静まり返った店内に次々と、ブレイク・ショットの音が響き渡った。




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