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三十路から始める撞球道  作者: 想々
第一章 ビリヤードを始めよう~C級編
12/52

敗者最終戦前・小休止

試合と試合の間のいわゆる閑話です。かなり短め。


 敗者ゾーンの二回戦に勝利し、次の試合に勝てば決勝リーグに残れる。


 B級の予選はすべて終了して、残るはC級の敗者最終戦のみ、(B級は4セット先取りで、参加人数もC級と同じくらい居るのだが、ミスが少ない分、試合が終わるのがC級より早い。)本来ならばすぐにでも試合を始めなければならない所だが、三連戦はキツイだろうということで、15分のトイレ休憩が与えられていた。


「お待たせしました、250円です。」


 届いたウーロン茶を一気に半分ほど飲み干すと、大きく息をつく。


「疲れた・・・」

 

 とりあえず1勝はしたいと思って出た大会なので、目標は達成した訳だが、こうなれば決勝に残りたいと思うのが人情である。達成感を感じつつ欲が顔をのぞかせる、一つでも先を目指したい。


 一般的にビリヤードというのはそんなに体力を使う競技ではないので、あまり疲れないと思われがちだが、それは違う。友人同士遊びでやっている分にはそうかもしれないが、スポーツとしてやると、体力的なものより「常に思考し続ける」とか「定期的に強く集中することを繰り返す」とか「ほんのちょっとのミスやアンラッキーにストレスを感じる」など、色々精神的に蝕まれる、ドMな競技なのだ。


 ちなみに「体力は使わない」とは言うが、配置確認のためテーブルの周りを歩き回ることでウォーキング的な部分があり、上体を起こしたり倒したりも多い競技なので、激しくは無いが、多少の運動量はある。ビデオゲームやマージャンのように、ほぼ動かないわけでは無い。


 実際休みにゴロゴロしながらゲームばかりやっていた自分は、ビリヤードをやるようになって、体重にして5㎏、ウエストにして7cm痩せた。(まあ、これは運動して痩せたというより、今までが動かなさ過ぎたとも言えるが)


 そんな感じで心地よい疲労を感じていると、「お疲れ様です。」と後ろから声が掛かった。


 振り向くと予想通りそこには沙樹ちゃんが居た。まあここには沙樹ちゃん以外の知り合いが居ないのだから当然だが。


「おお、こっちに来てたんだ、何とか残ってるよ。」


「私は負け・負けで終了でした。」


 沙樹ちゃんは予選敗退が決まってしまったらしい、あれだけのプレイができるのに・・・まあそれだけB級のレベルが高いということだろう。

「なので、こっちを見に来たんです、クロスの選手で残ってるのは、日吉さんだけなんですから優勝してもらわないと(笑)」


「クロスの選手」って二人しかいないじゃん。


 一息つけた事で気分が楽になり、軽口に笑顔で返すと、沙樹ちゃんは安心したように言う。


「今は大丈夫そうですけど、さっきの試合の最後の9番撞く時、日吉さん、笑ってるのに顔色が真っ白で、そのまま倒れるかと思いましたよ?」


 思わず「え?ホントに?」と聞くと、「というか今も若干白いです」との答え。


 確認を兼ねて、トイレに行き洗面所で顔色を確認してみる。「うーん、確かにちょっと顔色が悪いというか何というか」正直、自分の顔を鏡でじっくり見たりとかしないので、普段の顔色の方を思い出せない。だから比べることが出来ないが、確かに白っぽい気もする。


 よく顔色が悪い時に使われる言葉は「青い顔」なんて言うが、これはどちらかというと「血の気が引いた」といった感じか、緊張して力が入っているんだな。


 拳を強く握ると白くなる感じ?


 トイレから出て、首の後ろを揉むようにマッサージする。緊張でガチガチなのはよろしくない。


 そうしていると、両手をワキワキさせた沙樹ちゃんから「私やりましょうか?お父さんで慣れてますから結構上手なんですよ?」と、声を掛けられる。


 なんだ・・・と・・・


 今どきのJKが、お父さんに頼まれて肩を揉んであげるとか在るの?ファンタジーじゃないの?


 昭和ノスタルジーな孝行娘に衝撃を受ける。そして思う、ちょっと照れ臭いけど、ここはやってもらうべき!意を決して口を開く。「じゃあ頼も・・」


「そろそろ良いでしょうかー、敗者最終戦コールしまーす。クロス・ロード:日吉選手、プール・タイム:伊達選手3番テーブルです、プールタイム:山口選手・・・」


「アッ、ハイ。」


 いきなり名前を呼ばれ、妙な返事をしてしまった。ともあれ15分休憩は終わり、いよいよ敗者最終戦だ。対戦票を受け取り3番テーブルに向かう。


 向かう途中、沙樹ちゃんが「頑張ってください」的なゼスチャーをしてきた。ポーズ的には野球の、元巨人監督のソレなのだが、全く熱苦しさが無くて、ちょっと和んだ。


 ここには居ない、全ての娘を持つお父さん方も似たような感想を持つのではないだろうか、前も思った事だが、彼女にはこのまま成長していって欲しいものである。



ある程度ビリヤードをやっている人であれば、配置や状況なども頭に思い浮かべやすいと思いますが、全く知らない人が読んでどう感じるんだろう?というのは常に有ります。それでも読んでみた結果、「ビリヤードってどんな感じなのか、ちょっと行ってみようかな?」と思ってくれる人が、一人でも居て下されば幸いです。無論、経験者で今はやってない方が、ハスラー2のポール・ニューマンばりに「カムバック」するのも大歓迎です。

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