雛(★)01
主人公視点ではありません(★)
ちさが話している最中に倒れた。
いつも突然でビックリするけれど、ちさは能力を使った反動で眠ってしまったのだった。
だけど今この場にいる人達は何となく、ちさの能力の事を知っているので大人な対応で大騒ぎしなかった。一部を除いてなんだが……。
その一部というのが、さっきまで騒いでいた人が忘れていった犬ちゃんのアリスちゃんは、ちさが倒れてから「クゥーンクゥーン」と鳴いてオロオロしている。
そんなアリスちゃんにケンが何かを伝えるように鳴いている。ケンも、ちさが大好きだからなぁ〜。まるで妹を溺愛する兄のような感じかな?
アリスちゃんは少し落ち着いてきたようだからケンに任せといて私は、ちさを----。
そのちさは今、男の人の腕の中で眉間にシワを寄せながら魘されていた。
ちさは知らないが昔は能力を使わなくても毎日のように、こう(・・)なっていたが今は使った時だけに、こう(・・)なってしまう。
だからいざという時用に、ちさはヘッドホンを持ち歩いているのだが----。
ちさの鞄の中を見てもなかった。
ちさママの方を見ると、いつのまにか出てきた母と話しているところだった。
私の視線に気付いた二人は更に二三話してから、ちさママが奥の部屋に行った。
多分ヘッドホンを取りに行ったのだろうと思う。
ちさママと入れ違いに父が出てきた。
そして母と二三話してから待合室にいる人達に話をして皆を帰していた。
その間に少しでもと思い私は、ちさの両耳を塞いでいた。
眉間のシワは、そのままだったけれど音を少し遮断する事ができたようで魘されることはなくなったようだ。
周りを見る余裕が少しできたので改めて、ちさを受け止めてくれた男の人を見た。!!
よく見ると兄だった。
兄の名は勝吾。
今年27歳で都会で警察官をしていて、なかなか帰ってこなかったので今、目の前にいるのがスゴく珍しかった。
確か前に帰ってきたのは去年の夏頃だったハズ。だけど、その時も結衣さんと過ごすとかで、すぐに帰ったんだけど……。
結衣さんとは兄の彼女で確か高校の時から付き合ってて十年になるんだとか。
ちなみに彼女も警察官だそうで兄より階級は上なんだとか。
兄には勿体ないくらい美人で出来た人だ。
ちなみに兄は世間一般で言うとイケメンの分類に入るらしいが私にとっては、いじられキャラだと思う。
そんな、いまだにラブラブだった彼女と過ごすより家に帰ってきたという事は、とうとう----
「フラレてないからな!?」!! 何故、分かった!? もしかして----
「超能力でもないし口に出して言ってもない!! 何故お前らは会うと似たような事を言うんだ!?」おお同士がいたらしい。----とまあ兄で遊ぶのはこの変にしといて。
どうやら、ちさママが戻ってきたようだ。
ちさママからヘッドホンを預かり、ちさの耳に当てた。
すると、ちさの眉間のシワもなくなった。
何か言いたそうな兄をほっといて私は、ちさから聞いた事を父に話す事にした。
ちさママは、ちさを一度家に連れて帰ろうとしたのだがアリスちゃんが鳴いて結局は待合室で話す事になった。
その時もケンがアリスちゃんを説得しているみたいだった。微笑ましかった。
◇◇◇
話を聞き終わった父はケンを褒めながらモフった。
ケンは嬉しそうにしていた。
そして次にアリスちゃんに話しかけながら触れた。
始めは戸惑っていたアリスちゃんも徐々に力をぬいていき最終的に父の手におちた。
さすが神の手だ。
ちなみに私が命名した。
父の手にかかれば皆うっとりしてしまう。
ちさに聞いた事は全て伝えたので後は、大人達の話で私は邪魔になったらダメだと思い自宅に戻る事にした。
ケンも一緒にと思ったが嫌がったので結局私だけが戻った。
『アリスちゃんと一緒にに居たかったんだなぁ〜』と思いながら父達が帰ってくるのを待っていた。
あの後ちさママ達が帰って少ししてからアリスちゃんを迎えに飼い主さんが来て、後日伺うと言って帰ったと先に戻った兄に聞いた。あっ!? そう言えば兄、何しに帰ってきたんだろう??