千里19
だけど突然、救いの声が聞こえてきた。それと同時に犬さんの威嚇している声も聞こえてきたけれど……。
「もしかして千里ちゃん!?」
聞いてるハズなんだけど、それは私だと確信しているように聞こえた。
そして犬さんは私の名前が出たので威嚇を止めたみたいだった。
「那智だけど、あれ? 違ったかな?」
怪しくて返事をしないと思われたのかもしれない。
「いや違ってません。千里です。雛ちゃんも、います」
「どうしたの? なんかあった? 勝吾が慌てて出ていったんだけど何か知らない?」
「兄さん!?」
「お、俺っチに名前を付けて下さい!! 結衣さん!!」
結衣さんの声と、またまた口調が変わった犬さんの声も同時に聞こえてきた。
それで今、犬さんの所に置いてある携帯越しで話している事を思い出した。これでは話しにくいよね。
「那智さん少し待って下さい。犬さんから携帯を……」
「えっ!? あ、ああ……」
どうやら那智さんも忘れていたようだ。
「犬さんは結衣さんを知っているのですか?」
「俺っチを助けてくれたからナ。そう、あれは……」
犬さんの話が長くなりそうな予感がしたので遮って、結衣さんか那智さんに携帯を渡してくれるように頼んだ。
その時にも交換条件を出されたけ。
その交換条件というのが、犬さんのお気に入りの結衣さんから、ここにいる間は手ずから食べ物を食べさせてほしいのと、名前を付けてほしいみたいだ。
その事を結衣さんに、お願いしてみるから携帯を那智さんか結衣さんに渡してほしい。と犬さんに再度、言う前に自発的に結衣さんに携帯を渡した犬さん。
「今まで携帯を離さなかったのに、結衣には簡単に渡すんだな」と那智さんが不機嫌だと、結衣さんが笑いながら教えてくれた。
私達は、何て言ったら良いのか分からなかったので、先ほど犬さんから出された条件を結衣さんに聞いてみた。
すると結衣さんは快くOKしてくれた。
たぶんその声は犬さんも聞こえていたんだと思う。
犬さんが嬉しそうだと結衣さんが教えてくれたから。良かったね、犬さん。
そのまま話していたそうな雛ちゃんをおいといて、那智さんに変わってもらった。
そして勝吾さんに話していた事を那智さんにも話した。
いつもメモしている雛ちゃんに任せているんだけど、今回は何故か自分で伝えたかった。
雛ちゃんは私が、いつもと違った事に少し驚いていたけれど、何も言わないでメモしてあるノートを渡してくれた。
◇◇◇
「分かった。千里ちゃん達ありがとう」
那智さんは忙しいようで、結衣さんに後は任せて捜査しに戻った。
そして、さっき勝吾さんに了解を得たけれど、この状況では忘れていると雛ちゃんが教えてくれたので、もう一度、結衣さんに犬さんの事を頼んでおく事にした。
それを聞いた結衣さんは笑いながら雛ちゃんに同意していた。
さすが兄妹だ。喧嘩していても良く分かってらっしゃる事で……。
だけど、その事を雛ちゃんに言っちゃうと機嫌が悪くなるから、お口はチャックだ。
その後、結衣さんと話したそうだった雛ちゃんに電話を渡した。
少し話して満足した雛ちゃんは電話を切っていた。
何かあったら電話するので、その時は通訳ヨロシクと言付かっていた。分かった〜。
だけど分からない事が、また増えた。
雛ちゃんと話した結果、今日は電話がかかってきたらダメなので明日、実験してみる事になった。
結局その後、電話はかかってこなかったけれど。無事、解決したって事で良いのかな?




