ここはどこ?私はだあれ?
「どこだここ?」
目が覚めるとそこは森の中だった。
「なんでこんなところに?」
う~んと頭をひねって直近の記憶を思い返してみる。
「あれ?何も思い出せない・・・てか、俺は誰だ?」
何度頭を捻ってみてもここが何処か、自分が誰なのかさえ分からない。
「おいおい、どういうことだよ!」
必死に思い出そうとするがどうでも良いような事ばかり思い出して、肝心なことがさっぱりだった。
そんな時、ふと足元に一枚の紙がある事に気づいた。
「なんだこれ?」
紙を拾い上げ見てみると
[ようこそ異世界へ!]
あなたは以前の世界で寿命を沢山残しながらも、運悪く亡くなられてしまいました。
そこで、そんな残念なあなたの救済処置として異世界へ転生させることになりました。
この世界はモンスターがあふれ、人間は剣と魔法で戦って自分たちの生活圏を守っています。
あなたはそんな世界の住人として新たな人生を生きてください。
ある程度、以前の世界の記憶は無くさせて頂いていますので、そこはあしからず。
あなたの新しい身体はある程度丈夫で、剣や魔法の才能もあるので努力次第で様々な人生が歩める筈です。
どうか今生は寿命を全うし、満足のいく人生が歩めますように。
P.S
近くに道具袋がありますので、ある程度必要な物がそろっている筈です。
先ずは近くの町を目指してみてください。
神より
読み終え、近くを見回してみると確かに腰にぶら下げれる程度の袋とベルトが置いてあった。
「小さいな」
拾い上げてみても重さも殆ど感じなかった。
袋を開け逆さまにしてみると中から袋の何処に入っていたのかという程の、食料や硬貨、一振りの短剣と小さな盾、小さな杖等の武器や様々な雑貨が出てきた。
「魔法の袋って奴か?すげーな」
整理してベルトに吊るした袋に戻していく。その際も重さも何も感じず、明らかに袋より大きな物もすんなりと入っていく。
取り出す際は袋の中に手を入れてみると、頭の中に何が入っているのか浮かび必要なものを思い浮かべながら引き抜くと取り出せた。
腰のベルトに剣と杖を挿し、手には盾を持って装備を整えた所でようやく歩き始める。
「先ずは町を目指せって書いてあったけど、こっちかな」
袋の中には地図も入っており、ご丁寧に現在の居る場所には印が付いていた。
暫く歩いたところでお腹が空き、食事を摂る事にした。
少し開けた所で、木に背中を預けながら食事を摂っていると、近くの茂みから物音がした。
「なんだ!?」
ビクッとしながらも素早く盾と剣を構える。
ガサガサと音をさせながら出てきたのはゲーム等でよく見るスライムだった。
「スライムか・・・こんな事は思い出せるんだから不思議だな」
スライムはこちらの様子を伺っているのかピクリともしない。
恐る恐る近づいて見ると、ヒュンっと触手が伸びてきて慌てて盾でガードする。
「あっぶねー!!この野郎!」
弾いた勢いそのままにスライムへ斬りかかる。
剣がスライムの半ばまで刺さったところでバチャっと音をたててスライムが崩れる。
「倒したのか?」
先ほどの事もありより慎重に様子を伺っていると、崩れたスライムは消え小さな青い石ころが残った。
「倒せてたか。これは・・・ドロップアイテムって事かな?」
拾ったアイテムを袋に入れ、食事が途中だった事を思い出し先ほどの木の所まで戻る。
食事も終え、再び森の出口を目指し歩き始めた。途中何度か先ほどのスライムや、色違いのスライムに遭遇した物の剣の一振りでたやすく倒すことが出来、問題なく進めていた。
魔法はどうやって使うのだろうと杖を持って悩んでいると、頭の中に使える呪文が浮かび上がってきた。
「おぉ、なるほどなるほど」
現在使える魔法はファイヤーボール、シャイン、ヒールの三つだった。
ファイヤーボールはソフトボール程の火の玉が一つ、まっすぐ飛んでいく攻撃魔法だった。
シャインは10分ほど周囲を照らす光球を頭上に浮かばせる魔法だった。動くと後を付いて来てちょっと可愛かった。
ヒールはちょっとした怪我だったら素早く治せる回復魔法で、どの魔法も精神力か何かを使っているのか、使うと気だるくなり余り連発は出来無そうだ。
暫くすると気だるさは無くなってきた。
徐々に暗くなってきたので、調度良く洞窟があったので休むことにする。
ファイヤーボールで上手く焚き火に火をつけ、袋に入っていた毛布に包まり休む。
「突然こんなことになったけど、何とか頑張っていかないとな・・・ふぁ~あ、おやすみ」
焚き火と毛布の暖かさに包まれながら、突然始まった異世界での新たな人生の一日目は過ぎていった。