人は何故生きている?
僕が覚えている中で一番古い疑問は〝人は何故生きているの?〟だった。
それは逆に一番新しい疑問でもある。
今も考えているのだ。
人に認められるため?
いやいや。じゃあ認めてる人は認めるために生まれてきた別物なのか?
死ぬために生まれてきた?
ははっ。そんなこと思うやつは今すぐここで死んでみろや。
人は生まれながらに業を持っていて、それを還元するために生まれてきた?
……逆に貯めていってる気がするのだが?
実はここが地獄であり、みんな記憶を消されて何度も繰り返されてる?
あり得るかもしれないが、死んだ人は戻るまでどこにいるんだ?
ミトコンドリアのように何かを生かすための役割?
……もしそれが本当だったら今頃、そいつは生死をさ迷ってるだろうな。
まあこういうように僕は生まれてからこの瞬間まで考え続けてきたのだが。
「この世界は地獄に入りきらなくなった人々を取り合えず置いといてる言わば監獄だよ?」
──と自称最強の悪魔を名乗る、最初に美をつけても良いほどの少女が意図も簡単に解決してしまった。
最強なのかは知らないが、いかにも悪魔っぽい羽と尻尾がついているのだから悪魔ではあるのだろう。
死ぬとこの世界での行動は一切関係無く地獄に送られるらしい。
「生きている内にそれを知ることが出来た貴方にファーストチャーンス♪」
「……いや、お前が勝手に教えたんだろ?」
「このわたくしと婚約を結んでくれるのであったら、晴れて貴方も魔族の一員!地獄に行くことはあっても地獄に堕ちる事は無くなります!」
「もし断ったら?」
「セカンドチャーンス♪」
「…………」
何故、断ってもないのに次に移ったのだろう?
「もしわたくしを好きになっていただけるのでしたら、晴れてわたくし達はアツアツカップル!貴方は地獄に行く事はあっても地獄に堕ちる事は無くなります!」
「……さっきと何が変わったんだよ?」
「え?いきなり婚約じゃ心配ってことじゃ……?」
「うん。無いね」
「さ、サードチャーンス!」
「…………」
少女はしばらく冷や汗をだらだらとかきながら唸っていたが、急に目をカッと開きわざとらしい笑みを浮かべた。
「永遠に続く苦痛を味わいたくなければわたくしの旦那さんになるのだ!…………なって下さいっ!」
「いや、それ、チャンスじゃなくて脅迫だから」
「……ほ、ホースチャーンス……?」
「何故疑問系?」
「………………す、好きですっ!付き合って下さいっ!」
彼女は涙目になりながら、上目使いで言う。
「まさか、演技じゃないよね?」
「こればっかりは本当に本当の気持ちですっ!神に誓って本当です!」
「いや、神に誓っちゃダメでしょ」
自称悪魔なんだから……しかも最強の。
「じゃあ悪魔に誓って!」
「…………そっちもそっちでダメな気がひしひしとするな」
なんか直ぐに裏切られそうだ。
「わ、わたくしの命に誓って貴方の事が初めて見たときから大好きですっ!」
「ふーん……貴方の気持ちはしっかりと分かったよ」
「~~~っっ」
「そこまで好きなのだったらその気持ちに答えないとね……まあ、まずは恋人からだけど」
「きゃゃゃゃゃゃゃゃゃゃゃゃゃゃあ~~~ッッ!」
僕があっけらんと言うと少女は壊れたように黄色い声を上げ、そのままその場に倒れてしまった。
…………心臓は動いてなかった。
嬉しさのあまり心臓が止まってしまったらしい。
「あーあ」
僕は勿体無いという気持ちを隠しきれていない声で呟き、自分の家に戻っていった。
「我、今こそ汝に〝悪魔殺し〟の称号を与えようぞ」
自分の部屋に入ると、今度は自称一番偉い天使を名乗る最初に美がついても良いぐらいのお姉さんがいた。
この世界に来た原因の業を今回の悪魔殺しの一件で全て帳消しになったらしい。
……キリスト教なのか神道なのかはっきりしてほしい。
それはともかくどうやら人間としてもう一度チャンスをくれるらしい。
「……断ったら?」
彼女は僕の頭に手を伸ばす。
「断ることは不可能」
──僕の人生はここで終わった。
コメディを書こうとして失敗した気がしますが……まあ、思い付いてもないのに勢いだけで書こうとしたのがいけないんですよね……
感想とかもしあったらお願いします!
というかこれコメディじゃないような……?