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修行!

ルーシーとの同棲生活がスタートしました。俺がこの世界で生きていけるようルーシーからご指導していただいています。

 ざっくりとしたトレーニングメニューを紹介します。


 起床:早起きだ。曰く早起きは気持ちがいいからだそうだ。確かにそうだが、早すぎね?って感じだ。寒いため起きるのがきついがそれも修行の一環なのだろう。ルーシー曰く、早起きは気持ちがいいだろ!だそうだ。

 朝のランニング:これがきつい。自身で魔力操作を会得するため、かんじきみたいな魔法の使用禁止だ。自身で魔力操作をすると力加減が難しい。弱いと埋まり、強いと雪が足を押し上げ頭から雪に埋まってしまうのだ。そのため、魔力量を調節しながら走らなくてはいけない。初日は足を雪にとられ苦労し、魔力調節に苦労し、体力の無さに苦労と、三重苦だ。曰く、基礎体力は必要不可欠だからな!走れ!だそうだ。

 朝食:ルーシーと会話しながらの楽しい食事だ。しかし、その実は毒入り料理を食わされている。味は絶品だ。毒さえなければ100点なのに。曰く、私も幼い頃、こうして母様に毒の耐性をつける料理をだしてくれたもんだ。・・ルーシーの家庭の話を聞くのは遠慮しようと思う。

 近接戦闘訓練:無手、剣、槍、魔法、暗器、飛び道具など様々な相手を想定しての訓練だ。組手をするなかで要所要所で、指導してくれる。直観的で擬音語多めの指導かと覚悟していたけど、思いのほか理論的だ。人間の体のつくり、相手の重心の位置、力の向き、予備動作、目線の動きなど知識を吸収しながら戦闘の訓練ができて有意義だ。不満を述べるなら、痛い!めっちゃ痛い!それだけだ。曰く、技術を吸収するには実体験が手っ取り早いだろ。だそうだ。

 狩り:狩りをする。自分の食料は自分で確保すべし。この過酷な北国にはキノコも野草も生えない。存在するのは魔獣だ。ここドランツ大陸の魔獣は極寒の地に耐えるべく、協力に進化している。大きな個体は、分厚い表皮に贋造な体毛、大きな角、牙!小さな個体も毒持ち!戦闘能力が高い。そうつらを狩るのだから命がけだ。本当にいつか死ぬかも。曰く、命がけの戦闘をしなきゃダメ!だそうだ。理由になってないが可愛いのでOKだ。

 夕食:ポイズン料理。

 勉強:文字が読めないためお願いして教えてもらっている。魔法の勉強をするにも本が読めなくては仕方がない。文字や歴史を教えるルーシー先生は素敵です。

 就寝:寝る時も襲撃を想定していろと言われた。時々抜き打ちでルーシーが襲撃してくる。それが少し楽しみなのは内緒の話だ。この世界ってどんだけ物騒なの?とか思うが、転移早々にボコボコにされたのを思い出し、納得した。


 これが、とある一日のトレーニングメニューだ。日によって内容が異なる。凄く気になることが一つ、暗殺技術のトレーニングや隠密行動の技術など、まるでスパイになるための訓練のようだ。これには違和感を感じる。物騒な世界というのは納得しているが、この訓練は護身の域を逸脱している。が、何かの役に立つとのルーシーの言葉に丸め込まれ精進することにした。


 ルーシーと二人の時間を過ごす中でお互いの話をする機会が多くあった。


「なーアキラ、お前の出身なんだが、本当のところどこから来たんだ?」



「正直に言うと、異世界から来たんだ。信じてもらえないと思って黙ってたんだ。」



「そうか、お前から感じた特別なものはソレが原因か。」



「それはどうだろうな。信じるの?」


「あぁ、お前の嘘は見抜くのがたやすい」


「うそ!なんで!?」


「秘密だ。」そう言って微笑むルーシーが妙に印象的だった。」




・・・・・・・・・・・

・・・・・・

・・


 どうやら俺は異世界に来て感じていた異常な成長速度は、五感に限らなかったらしい。それはルーシーとの修行生活で確信に変わった。異世界での俺のチート能力は超成長!ダサいな。ネーミングはさておき、この能力はかなり万能だ。

 以前は漢字を覚えるのに何度書き取っても、テストを過ぎると忘れ去っていた記憶がある。しかし今は一回覚えれば忘れなかった。おかげですぐに難しい本なんかも理解できるようになった。戦闘技術も一度見て覚えれば同じように動けた。一度コピーした技をかければ自然と応用までできるようになった。

 これにはルーシーもかなり驚いていた。


「アキラ、以前にこういう訓練を受けたことがあったのか?」


「いえ?初めてですよ。」


「そうか・・・筋がいいな。私の才能の無さが身に染みる。」


「そんな褒めないで下さいよ!調子乗っちゃうよ?」



 なんてやり取りを幾度となく交わした気がする。ルーシーと過ごす日々の中で、ルーシーの事を知れた。それが俺にとって何よりうれしかった。


 正直、ちょっぴり少しだけ、知らなきゃよかったこ事もあったにはあった。

 それはルーシーとお互いの過去の話をした時だ。何度か質問したが、はぐらかされることが多かった。修行に慣れてきたある日、ポツポツと語ってくれた。



「なー、アキラ、お前私の過去について聞きたいと言ったな。」



「うん、教えてくれるの?」



「あぁ・・・ただ、お前は成長した!」



 ルーシーの様子が少しおかしい。普段眠そうな目をしているルーシーだが、今はどこか悲しそうな顔をしている。感情をあまり表に出さない人だが、最近は少しの表情の変化から感情を読み取ることができるようになった。



「私がいなくとも、お前は生きていける。今のお前なら、この世界で普通の生活を送ることができる。あの時の話覚えてるか?」



「あの時というと?」



「お前を追い出すという話だ。もう自立できるレベルと認めてやる。旅立ちの手向けに私の過去を教えてやる。アキラ知りたがってただろ?」


 

 そう言って笑うルーシーの顔はひどく寂しそうだった。しかし、俺の脳内は真っ白になり、心臓の鼓動が早くなっていく。焦りが全身の動きを奪っていくようだ。




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