①
「ここで女装して教師をやってもらいまーす」
「えええええ!?」
父さんの勤め先が倒産、母さんは出ていった。
父さんはショックで寝込んでいる。
会社が倒産したことより母さんがいなくなったことのほうが大ダメージだったようだ。
俺がバイトしてなんとかするしかない。
と奮闘したが、高校生になっても脳味噌はよくて中学生、悪くて小学生レベルの俺を採用するところはなかった。
黒くなくて自分にできる仕事を探していた。
そんなとき丁度声をかけてくれたのが幼馴染みで名家の令嬢‘芦屋美代子’だ。
今はお嬢様ばかりが通う女学院の理事長を勤めている。
「苦手なのは視覚的な要因だから
女装してくれたら近づけるわ」
男は短命な女系らしく、彼女は生まれたときから男性恐怖症らしい。
「女装…」
アニメでよく学園祭に女装させられるシーンあったなあ。
だからといって女装でしかも毎日はな。
俺にだってプライドがある。
金をつまれてもさすがに断わ…。
目の前に見たことのないほど高い山が。
「美代子さーん更衣室は?」
「向こうにあるわーここで着替えてもいいのよー」
無視して更衣室にいく。
けど更衣室って女子用じゃないか…?。
「ちょっとアンタ!学校は男子禁制よ!!」
いかにも学級委員長、なタイプの子だ。
すっきりした茶髪ポニテで、一言で言えばお嬢様っぽくない。
「理事長の許可は貰ってるから」
狼狽えるな俺、毅然とした態度で返せばきっと大丈夫だ。
「うそね、理事長は男が超絶に嫌いな人なのよ!
たとえ警察、政府の高官、ハリウッドセレブでも男なら学園内に一歩たりとも入れない方だわ」
マジでハリウッドセレブまで来るのか。スケールでかいな。
「おっ男の子がいる!」
なにやら鼻息を荒くしたピンク髪のツインテ女子が近づいてきた。
しかたない、逃げよう。
階段をかけあがり、なんとか着替えられた。
女装しても声までは変わらない、男だってバレバレだろう。
屋上から去ろうとしたら背後から視線を感じた。
「ねえ…」
さっきはだれもいなかった。
屋上で授業サボりの不良が昼寝で使う所ににいたのだろうか。
「ワタシにはわかる…貴方はワタシと同じ魔界から地上へ転生した悪魔だわ」
ヤバイ…こいつは――――――
ただの中二病だ。
無視して理事長室に向かった。