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学園【鬼】戦記物語〜midnight crazy〜  作者: 望月 ワン子
【犬傘 麗子】戦記 エピソード0
5/17

犬猿

ー猿鴇 空鈴。ハグと同年齢の16歳。ー




「確かに鬼による被害は出ていません。けれどそれはハグさんのおかげじゃありませんか?それに、あなた程の実力の持主なら、この鬼が不の感情を集約し始める前に浄化することができたはずです。なのにできていないのはどうしてですか?」と笑顔で私に問いかける。




ー鬼愛が三人目に選んだ巫女見習い。ー




回りくどい言い方しないでいつものようにはっきり言ったらどうかしら?




「私はただ、目上の人に対する気遣いをしたまでです。それにわざわざ私が言わなくとも、麗子さん自身がよくお分かりになられているはずです。」と微笑む。




ーあどけなさ残る顔に左右対象2つに束ねられたお団子頭。長い振袖に隠れた手で口元を隠しながら話す癖、空鈴専用に作られた桃花の巫女装束は袴にスリットが入っており、その容姿はまるで巫女ではなく、チャイナドレスを着た中国の娘を連想させる。ー




「…クスクス。どうやら、自覚があるようですね。己の欲求を満たすため、故意に鬼を見逃し、町を危険に晒した。見習いとはいえ、町の守護を務める桃花源の巫女としてはあるまじき行為。やはり身内として見過ごすことはできないですね。」




…フフッ。おしゃべりな娘。それで、一体あなたは私をどうしたいのかしら?




「己の愚行を認めた。そう受け取ってよろしいのですね?」




フフッ。好きに受け取ってくれて構わないわよ。




「いけしゃあしゃあと、よくそのような態度でいられたものです。さっきも言いましたが、あなたの愚行を身内として見過ごすわけにはいきませんし、放っておくわけにもいきません。あなたの【座】を頂きます。」




おもしろいこというのね。あなたに私の代わりが務まるのかしら?いや、それ以前に私があなたの言うことを素直に聞くと思ってるのかしら?




「此の期に及んで、忠告や説得であなたをどうにかするつもりはありません。実力行使、力尽くで頂きます。なので聞く必要はありません。…覚悟はできてますか?姐姐おねえさま。どこに隠し持っていたのか長さ2m程の棒を右手で持ち、腕を曲げ、それを脇で挟み込むようにして独特の構えを取る空鈴。どうやら今回は力づくで私を楽しませてくれるみたい。




フフッ。単細胞バカなお猿さん。






「参ります…!」






退屈させないでね。ー真面目で生意気な私の妹弟子いもうと。ー






一瞬で間合いを詰め、私めがけて勢いよく振り下ろした空鈴の一撃を箒で防いだ瞬間、二人の周囲から衝撃の波動が町全体に広がった。




ぶつかりあったまま拮抗する二人の力。




「強さという刺激を求め、己は疎か、身内や町の人々の危険さえも顧ることのないあなたに任せてはおけません。さっさと退いていただけますか?」




よくしゃべるね。舌、噛むわよ?




一旦間合いを取り、態勢を整える空鈴。




「クスッ。今更後悔しても知りませんから…ねッ!!!」




後悔なんてしないわよ。私はいつでも後退させる側だか…らッ!!!




渾身の一撃どうしがぶつかろうとしたその瞬間、






「ストォォォォォッッッゥプ!!!!!」






ハグ?!




「ハグさん!?」




二人の間に割って入るように突如現れたハグ。呆気にとられる空鈴。私は箒を納め状況を理解した。その一瞬、少し辺りが静まり返った。






「…。ちょっとちょっとちょっと!!!喧嘩はダメだってあれだけいったのになにやっちゃってんのさ二人ともぉー!」




ー一撃目の衝突で起きた衝撃波のせいね。あれだけの衝撃なら気付かれて当然か…。ー




「は、ハグさん!そ、その…これはですね…!」口元を隠し誤魔化そうとする猿鴇。




遊びよ。と私が言う。




「遊び?」




そう。大人のあ・そ・び。ー私に合わせなさい。ーと空鈴に目で合図を送ると、わかったように頷く空鈴。




「くぅーちゃん本当なの?」




「え?!あ、はい!そうです!お、大人の遊びっていうのを麗子さんにですねレクチャーして…。」




「ちょっと待って!!!」




「ギクッ!!!ー私気付かれるようなこと言った!?ー。」




「麗ちゃん。」




どうかした?




「麗ちゃん…私…、くぅーちゃんと同い年だよ?なんで私には教えてくれないのよ!大人の遊び!!!」




「はぁ〜…。よかった。」




年齢は同じでも精神年齢が違うじゃない。お子様のハグにはまだ早いってことよ。




「ムキャーーーァ!!!(怒)」




フフッ。あの子がバカでよかったわね。と、一人で怒り狂うハグを余所目に空鈴に話しかけた。




「…そのハグさんのおかげで麗子さん命拾いしましたね。」よかったですねと言わんばかりの表情。




あら?それはどうかしら。




「今回は見逃してあげますが、次はありませんのでお忘れ無きを…。」ボソボソと小声で言う空鈴。




ご忠告どうもありがとう。忘れたらごめんなさいね。




「ちょっとぉー…!二人で何コソコソ話してんのさぁー。」二人の会話に気付いたハグ。




「ビクッ!」




「ねぇ〜えぇ〜何話してたの〜。」じぃーっと空鈴を見つめるハグ。




「な、なんでもないですよ!お子様には関係のない大人の話です。あ。」




「ガビーン!!!くぅーちゃんまで私をお子様扱い…。」




「ち、違うんです!これは麗子さんにつられて…」




そんなことよりハグ。




「そんなこととはなんだい!そんなこととは…!グルルルル…。」




「おほほほほー。(汗)」




どうしてあなたがここへ?




「……あっ!忘れてた!ついさっきね、鬼愛ちゃんが帰ってきたの!それで…。」




「それで?」空鈴が問う。




「険しい顔で私に言ったの。『あの二人に遊んでないで早く帰ってこいって伝えてきてくれ』って!」




「それって…お呼び出し…ということでしょうか…?」




「んーそうかもー。もしかして…、鬼愛ちゃん…。大事な私をのけ者にして派手に遊んだこの二人に裁きの鉄槌を…。」




「ま、まさか!?そ、そんな…。」




「この私をお子様扱いし、のけ者にした当然の報いだー!あーっはっはっはっは!」高笑いするハグ。




「そんな…、私は己の正義に従って…。」恐る空鈴。




おバカさんが二人。




「バカとはなんですか?元はと言えばあなたが。」




「そうだ!そうだ!私にバカって言い過ぎダァ!」




鬼愛が待ってるんでしょ?なら、さっさと帰りましょう。それとも、二人はここでコントの続きをするつもりなのかしら?




「コントなんかしていません。私、先に帰ります。」




「あ!くぅーちゃんちょっと待ってよー!麗ちゃんもほら!早く帰るよ!」




ホント、世話が焼ける姉妹。……これからも私を楽しませてちょうだいね。

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