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学園【鬼】戦記物語〜midnight crazy〜  作者: 望月 ワン子
【吉備 美琴】戦記 エピソード2
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灰色のハンカチー4月14日

鬼門並木の入り口、神社に続く階段が現れた場所に着いたが、思った通りその階段は姿を現さなかった。

あの時空鈴さんが言っていた第六感という不思議な力、私にはその力があると彼女はいっていた。その力があるから私にはこの場所の本来の姿を見ることができ、彼女達がいる神社へも行くことができた。力があるのなら私の視界はこんなに紅くないはず。


私は力を失ってしまったのだろうか?

それとも最初からそんな力、私にはなかったのだろうか?

わからない。

まだ私にはわからないことだらけだ。


結局ここへきても彼女達には会えなかった。

というより、会うことを許されなかったと言った方がしっくりくる気もする。

どっちにしろ、長居してもなにもないと思った私はそのまま並木道を通り家に帰った。


ー翌日ー


4限が終わりお昼休み。昼食はいつも屋上の日陰ができる場所で食べている。もちろん一人で。

一緒に食べようと甘ったるい声でしつこく誘ってくる人間もいるのだけれど毎回用があると言って断っている。事実、用があるのは本当のことで嘘は言ってない。ただ、それは誘いを断るための口実で、実際のところ一緒に食べたくないというのが本音だ。


『けど、今日は(お誘い)なかった。あの三馬鹿、あれだけしつこかったのに。…ま、ありがたいことだけど。』


こうして一人でご飯を食べることにもうすっかり慣れてしまった。私にとってはそれが当たり前の日常だ。


「うぅー…寒い!」


屋上ということもあって風も強く冷たい。日陰じゃなくて陽の当たる場所にいれば少しはマシなんだろうけど、そこには輪になって座ったり、隣り合わせに並んで座ったりしてワイワイとおしゃべりしながらお弁当を食べている生徒達がいる。もし私がそこで一人お弁当を食べていたとしても誰も気にしないだろうけど、そんな賑やかな場所で食べるより多少寒くても、誰にも干渉されない静かな場所で食べるほうがマシだと私は思う。


動かしていた箸の手を止め、何かを求めるように見上げた独り善がりの空。掴めそうで掴めない雲を今はただ見つめることしかできない。そんなどうしようもない思いが溜息となり消える。


「…ちょ、離して!!!」


突然どこからか誰かの嫌がるような声が聞こえた。私は声が聴こえた方へ耳を傾けてみる。


「言われなくても放してやるわよ!」


別の女の子の荒々しい声がした。どうやら私のいる場所の先の下、屋上から見下ろした場所から声が聴こえてくる。私はゆっくりと立ち上がり声がする方へと歩み寄って行き、屋上の柵を乗り越えフェンスにしがみついて下を見下ろした。念のため下にいる人間がこちらを見上げた時に姿が見えないように姿勢を低くする。


「なんなのよ!いきなり人の腕掴んでこんな場所まで連れてきて!」


『ん?あれは…。』


見たことのある並んだシルエットと聞いたことのある強気な声。


『三馬鹿ギャルと正義の申し子だ。なんでこんなところに…。』


この時間は人気のない自転車置き場。その端っこにある物置小屋の前に彼女達がいる。


「別に大したことじゃないよ。ちょ〜っと目障りなお邪魔虫さんを一度懲らしめてやろうと思ってさ。」


「そうそう。正義の味方ごっこかなんかしらないけど、他所でやってくんない?私達とっても迷惑してるんだよねー。」


相変わらず息の合った二人の交互口撃。口裏でも合わせてるのか?


「何わけのわからないこと言ってるの?私はあなた達に一度も迷惑をかけたことなんてないし、正義の味方ごっこもしていない。もしかして人違いなんじゃない?」


こっちはこっちで相変わらずな強気の態度。

あの子、3対1ってあからさま不利な状況でよく立ち向かっていけるよ。あの子がまったく怖気づかないから、余計に火に油だよ。一人を除いてだけど…。


「しらばっくれないでくれるかなぁ?」


三馬鹿ギャルのリーダー的存在のあの子。

入学当初から執拗に私を遊びや買物に誘ってくる子で、私の視界に彼女が映った時は必ずニコニコと笑っている。一体何を企んでいるのやら。

聞き覚えのある声がしたから何事かと覗いてみたのはいいけど…。とりあえず厄介ごとに巻き込まれるのはごめんだ。


「なにをしらばっくれるっていうのよ。」


強気な正義の申し子に対して不敵な笑みを浮かべるリーダー。一方的な暴力や辱めをするわけではないようだが、何かあの子を追い詰めるような武器を隠し持っている雰囲気を漂わせる。そして、


「吉備さんと友達になりたいんでしょう?」


その問いかけに私は少し驚いた。

リーダーが確かめるように投げかけたクエスチョン。

投げた武器が一体どれほどあの子にとって致命傷となるのかは私にはまったく想像できないが…。


「なにを言い出すかと思えば…。」


威勢のいい強気な態度から一変、どこか動揺した様子の申し子。


「吉備さんと仲良くなりたいけどうまくきっかけが掴めないんでしょ?だから私たちが吉備さんに近づくのをいいことにそれをうまく利用して仲良くなろうとしてるんでしょう?」


「そんなことしてない!私はただ、あなた達が吉備さんにしつこく付きまとうから!」


「付きまとうから…、なに?」


「なにじゃないわよ!吉備さんが迷惑してるって言ってるの!」


正当化。感情を剥き出しに力で押し切ろうとする申し子。

そんな申し子を見て呆れるようにため息を深く吐くリーダー。周りの二人はクスクスと笑っている。


「…よくもまぁそんなことを平気で言えるわね。」


「…何が言いたいのよ?」


「何が言いたい?そうね…。」


リーダーはニヤっと笑う口元に人差し指を顎に当てた。


「私たちの行いが吉備さんにとって迷惑だというのなら、放課後あなたが吉備さんの後をつける行為は一体なんなのかな?」


「…!!」


「相手が気づかなかったら何をしてもいいんだね。不快な思いをさせることも、迷惑をかけることもない。嫌われることもない。あ、それともその逆かな?そこまでしてまでも気づかれたかった。…とか?」


「…。」


目をそらし何も言い返そうとしない申し子。


「なにも言い返さないんだ。そりゃそうよね。実は私ストーカーなんです。なんて自分の口から言えないもんね。…ねぇ?正義のストーカーさん。」


追い詰めるリーダー。それを見てケラケラと笑うギャル二人。


「ヒロナいいすぎだよ〜。」


「こいつなにも言い返せなくて固まっちゃったじゃん。キャハハ!」


「あとは2人に任せるよ〜。コケにされた分ちゃ〜んと!お返ししてあげてね。」


「ちょっ!な、なにすんのよ!!!」


ギャル二人はそれぞれ申し子の右と左の腕を掴んだ。


「さっき言ったのにもう覚えてないの?あ、ヒロナに言われたことがよっぽど堪えてるのね。」


「二度と生意気な口がきけないように懲らしめてあげるのよ!!」


「ちょ、は、離して…!!」


必死に逃れようとジタバタするも体を抑えられ身動きがとれない。二人の手によって彼女の制服が破かれていく。ビリビリと鈍い音を上げながら。


「たすけて…」


衣服が破かれる鈍い音に混じって誰にも届かない振り絞った彼女の声が聴こえた。

誰にも届かない声が私には届いた。見てしまった。

面倒ごとはごめんだ。知ったことじゃない。

ただの巻き込まれ損になるだけだ。

ホント中途半端なことに私を巻き込まないでほしい…。


胸の中から混み上がってくるどんよりとした葛藤が私の胸を詰まらせる。苛立ちにも似たなんとも言えない感情。


これだから退屈は…。


私はその場に立ち上がりポケットに入れていた灰色のハンカチをフェンスの網目を通るくらいの大きさに折りたたみ、そのままフェンスを通して屋上から落とした。

落ちたハンカチが風に煽られ宙を舞う。


「あああああああぁぁぁぁぁ!!!私のハンカチがぁぁぁー!!!」


私の出した大袈裟な声に反応し申し子を追い詰める二人の手が止まる。そして、下にいた四人が私の方に顔を向けた。その視線を感じた私はあたかも今四人が下にいることに気づいたふりをした。


「あ!あのぉぉ!!すいませぇぇぇん!それぇぇ!その飛んでるのぉぉぉー私のハンカチなんですけどぉぉお!キャッチしてもらえますかぁぁぁぁぁ?!!」


風に乗ってひらひらと宙に浮かぶ灰色のハンカチ。

形を変え誤魔化しながら舞い落ちていく。

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