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学園【鬼】戦記物語〜midnight crazy〜  作者: 望月 ワン子
【吉備 美琴】戦記 エピソード2
16/17

ミエナイモノー4月13日

ーキーンコーンカーンコーンー


校内に響き渡るチャイムの音。

その音が鳴ると同時に教室のあちらこちらから聞こえてくる解放という名の雑音。

窮屈な姿勢からの解放。

緊張感漂う授業からの解放。

一日の学校生活からの解放。


「今日の授業はここまで。挨拶。」


教壇に広げた教材やプリントをまとめ終えた教師が授業の終わりを告げる。

授業の終わりは必ずクラス委員長の号令で挨拶をして閉める。


「きりーつ。」


椅子が床を引きずる音がほぼ同時に教室に響き渡る。

委員長は全員の起立を確認する。


「きおつけー。れーぃ。」


感情のこもっていない、あるいは別の意の「ありがとうございました。」という声が教室に広がる。


教師が教室から出て行くと、さらにざわつきを増す教室。

帰る支度をする人、部活の準備をし始める人、前後左右でおしゃべりをする人、そして、人数合わせか勢力拡大かは知らないが放課後の予定をしつこく訊いてくる人。


「吉備さ〜ん。今日の放課後って空いてるー?みんなでパフェ食べに行こうって話なんだけどさぁ。」


ほらきた。何度も断っているというのに、まったく懲りない連中だ。そんなにも都会から出てきたやつが珍しいのか。


「行かない。興味がない。」


頬杖つきながら窓の外を眺め、上の空口調に断った。

だが、こいつらはここからがしつこい。ゴキブリの生命力並みに。


「もぉ、吉備さんノリ悪いよー。せっかく同じクラスになったんだしさぁ。」


「そうだよー。いつまでもその断絶キャラで過ごすわけにもいかないでしょう?早いうちに仲良くなって損はないと思うよー。」


私を執拗以上に誘うリーダー、その金魚のフンAとBが背後から援護するように説得してくる。

彼女達は私にノリが悪いというが、それ以前の問題で私はノリというものを知らない。興味がないからだ。ましてや仲良くなることが損得だというこの子達に対しては尚更興味がない。まったく余計なお世話だ。


「断絶キャラでも絶縁キャラでもなんでもいいから、さっさとあきらめて違う人誘ったらどうですか〜?」


気の抜けた返事が窓の外へと飛んでいく。


「あんたいい加減にしなさいよ!」


「そうよ!せっかくあんたみたいなやつに声かけてあげてるのに何よその態度!」


あぁ、面倒くさいなぁ。誰にも干渉されない地味な高校生活を送るつもりだったのに。それに私はあなた達に構ってる暇はないの。


「ちょっとあんた達!また吉備さんにちょっかいかけてるんじゃないでしょうね?!」


あぁ、来たよ。面倒くさいのがまた一人。


「チッ、またこいつかよ。」


「ねぇ〜マジでうっとぉーしぃんだけど!放っておいてくれない?あんたには関係ないでしょ?」


「正義の味方気取ってんじゃねぇーよ。」


金魚の糞AとBが割って入ってきた女の子に反論する。

私からすればあんた達が今言ったことをあんた達の顔面にぶつけてやりたいぐらいだ。


「正義の味方気取りで結構よ。人が嫌がっているのにも気がつかない害虫みたいなあんた達よりはマシよ。」


見かけによらず気が強い子だ。正義に血を滾らせる情熱のようなものとは無縁に思える外見。

背丈は150㎝くらいと小柄で、少し茶色がかったショートボブで前髪はピン留めで七三に分けられている。顔が小さくパーツが整っているからこそできる髪型。だと私は思う。


「誰が害虫だって?あぁ?!」


あぁー、(金魚の)フンAを完全に怒らせたよ。

というか、私の近くで騒ぎを起こすのやめてけれー!


「スト〜ップ。」


キレッキレのフンAを止めたのは金魚リーダーだった。


「喧嘩はダ〜メ。みんな仲良くしなきゃ。でしょ?」


喧嘩はよくないが、仲良くする必要はない。

残念だけど私はあんた達に興味がないし、仲良くなりたいとも思わないんだ。好き嫌いの問題じゃなくて、直感というか少なくともビビッとくるものを何も感じない。というか、映画の中のクリオネにしか感じたことがない。彼女に出会うまでは。


「…吉備さん?…吉備さん?」


いけない。ぼーっとしちゃった。


「大丈夫?」


うん。大丈夫。

あれ?さっきまでうるさかった3人組は?


「あ、席に着いたよ。もう終礼の時間だし。」


そっか。意外と根は真面目なんだ。


「まったく、あの子達はほんとしつこいなぁ。吉備さんちゃんと断ってるのに。一回ガツーンっと言った方がいいよ!」


けっこうキツく言ってるほうだと思うんだけどな。

それより助けてくれてこんなこと言うのも悪いんだけど、私のことは放っておいてくれて大丈夫だから。さっきのようなことがあっても見て見ぬ振りしてくれて全然構わないから。


「なんでそんなこというの?困ってる人が目の前にいるのに見て見ぬ振りするなんて、そんなことできるわけないじゃない!」


困ってる人が助けを必要としていれば助けてあげればいいんじゃないかな?じゃないとそれは正義でもなんでもなくてただの余計なお節介になっちゃうと思うんだ。現に私はあの子たちのしつこさに困っていたけど誰かの助けを必要とした覚えもないし思ったこともないよ。だから、また同じようなことがあっても私のことは放っておいてくれて大丈夫。私なんかよりもあなたの正義感を必要としている人が他にいるはずだからその人のためにその正義感は取っておきなよ。と、自分なりの考えを彼女に伝え、自分なりに彼女をフォローした。すると彼女の顔からイキイキとした表情が消え、少し間が空いた。


「正義感なんてそんな大それたものじゃないない!なんだあ、私の思い過ごしだったわけかぁー。困っている人がいると見過ごせない性格が裏目に出ちゃったね〜。」


と、無理に明るく笑ってみせる彼女。

そんな彼女を見て何も思わなかったわけではないが、それ以上は何も言わなかった。

それと同時に担任が終礼をしに教室へ戻ってきた。

席に着けよと担任が言う前に彼女はごめんねと私に一言いって自席へと戻った。


その後終礼は終わり、何事もなく教室を後にした。

掃除をしている生徒や部室へ向かおうとする生徒、廊下で戯れる男子生徒達の中をくぐり抜けながら廊下を抜け、階段を降り、昇降口で上履きから革靴へ履き替え校庭に出る。帰宅する生徒達の中に今度は紛れ込み校門まで歩いていく。夕焼け色に染まった空に紅い桜の花びらが風に吹かれゆらゆらと舞っている。そう、今の私には鬼桜が見えている。どういうことかあの晩以来、再び見えるようになった。ここにいる私だけが知っているであろう真実。鬼桜これが幻だなんていったい誰がわかるのだろう。今の私ですら幻だということを忘れてしまうのに…そんなことを考えながら歩いていると、校舎入口と校門のちょうど中間地点に差し掛かった辺りで生徒と舞い散る花びらに紛れて誰かの視線を感じた。視線を感じた方へと顔を向けてみるとそこは学校の屋上で誰もいなかった。気のせいか…。あれ以来見えないものに対して感覚が敏感になっているのだろう。そう思い私は学校を後にした。


ブレザーに手を入れ住宅街を一人で歩く学校からの帰り道。うつむきがちに足を進めながら考えるのはあの四人のこと。あの日以来私はあの四人と会っていない。それどころか姿すら見ていない。

私は同じ学校なんだからばったり偶然会えるだろう。最悪不自然かもしれないが偶然を装い彼女に会いに行こう。と思っていた。流れからしても私の考えはごくごく普通の考えで何も難しいことじゃないと私は思う。考えてもみてほしい。学年は違えど同じ学校に通っているんだ、本命の彼女に会えなくてもあの四人のうち誰か一人ぐらい会える、会えないはずがない。偶像ばったりなんてことがなくても、少し時間を作れば会いに行けると考えるだろう。

だけどこの考えが通用するような連中じゃないともっと早くに気がつくべきだった。まさか、彼女達を見つけることすらできないなんて思いもしなかった。

まず「偶然なんてレベルでは彼女達に会えない、やっぱり直接会いに行こう。」と決心したのは5日前の水曜日。それから3日前の金曜日までの2日間、朝の登校時間や休み時間に放課後、学校で空いた時間ができれば彼女達を探し回る生活が続き、会えなくても姿だけでも確認できればと思っているのだけれど、姿どころか影一つ確認できずで休みを挟み今日の月曜日に至る訳だ。


ここ数日の私を振り返ると、


ー8日ー


偶然なんかに期待しちゃダメだと思い、まずは彼女達が本当にこの学校に在籍しているかの確認から始めた。

確認したところ、確かにこの学校の一つ上の学年に四人は在籍していた。学年を受け持つ先生に確認したから間違いない。クラスは見事に四人ともバラバラだった。


ー9日〜10日ー

私は朝早くから学校の校門前で彼女達が登校するのを待ってみた。が、一人として私の前に姿を現わすことはなかった。私がよそ見している間に通って行ったのかもしれないと思い昼休みに彼女達が在籍している各クラスに足を運んでみた。しかしそこにも彼女達の姿はなく、近くにいた生徒に話を聞いてみると毎日学校へは来ているらしいが、姿を確認できるのは授業中だけで休み時間になると姿を消すという。それは放課後も同じで気がつくといなくなっているらしい。それでなくても六時間目の授業が長引いたり終礼によって下校時間がクラスや学年によってバラバラだというのに…。仕方がなく私は彼女達がいる各教室を覗いた後、校舎内に彼女達が居残っていないか確認してから帰った。これを二日間続けてみた。が、成果なし。


ー現在ー


放課後までは9、10日と変わらない時間を過ごしたのだが、学校という限られた空間と限られた時間の中では彼女達と会うことはできないんじゃないかと思い、私は即座と学校を後にした。

そして私はこのまま家へ帰らず、この足であの神社へと向かうつもりである。


きっと無駄足になるけど…。


その理由は一つ。

あの日見えたものが今の私には見えないからだ。

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