夢のプレゼント(インジュン版)
今宵、訪れる聖夜
きっと世界中で
あらゆる人々が
この聖夜を祝うのだ
僕が居るここでも
雪が降り注ぎ
街に光が溢れ
笑顔が道に咲く
Merry Christmasの音が鳴り響く中
僕の
前を、後ろ、横をを
親子達が、カップル達が、夫婦達が
通り過ぎる
その全てに
その顔に浮かべるのは笑顔
偽りではなく
心からのモノだろう
きっと
あの子供達は
今夜、赤い服を夢見るだろう
あのカップル達は
今夜、永遠を夢見るだろう
あの夫婦達は
今夜、愛の結晶を夢見るだろう
すべての願いを
この星光る地上から
白き流星の降る空に託すのさ
降り出した雪に
沸き上がる歓声
それが心に突き刺さり
乱れ咲く笑顔が眩しすぎて
僕は顔を俯けた
孤独な僕には
この聖夜を共に過ごす
友も、家族も、動物も
誰も居やしないからさ
辺りに満ちるのは
手で繋がった人々で
街灯樹さえも
光る鎖で繋がれているんだ
孤独な僕を囲うのは
繋がりという輪っか
それは別々のハズなのに
僕以外の全てが
繋がっている様に思えて
僕だけが、世界中で一人の様な気がした
「なんて惨めなんだ」
歯軋り鳴らしながら
込み上げる叫びを押し潰した
「なんて寂しいんだ」
目を強く瞑りながら
流れ落ちる思いを塞き止めた
「なんて悲しいんだ」
耳にイヤホン捻じ込んで
聞こえる福音を消し殺した
そうやって立ち止まった僕の傍を
絶え間無く流れるのは
繋がる人々の線
その中で僕だけが
止まっていたんだ
繋がっていないんだ
やがて僕は埋まっていったんだ
人々の群れに
けれど、虚しい事に
その幸福には埋もれる事が出来ない
どうしようも無かった
どれほど我慢しようと
僕の本音は
「孤独は嫌だ」
「一緒に居てくれよ」
「誰か僕を見つけてよ・・・」
ずっとずっとこれなんだ
閉じても溢れる思いは
閉じても零れる思いは
閉じても聞こえる思いは
どうしようも無い
顔を上げて空を睨んだ
咲き誇る笑顔が
僕の顔を照らしだす
降り注ぐ流星は
僕の涙を表すようで
鳴り響くMerry Christmasの音は
僕の耳に響く
人ごみの中
存在を叫んだ
声に成らぬ声で
心の中で大声上げて
天の神様に向かって
「何も望まないから、この孤独を癒してくれ!」
ただただこう叫んだんだ
願ってもどうしようも無い願いをね
Merry Christmasの音が止み始める
もう道に人は居ない
日が変わり、溢れる光が消える
聖夜は終わりを告げ
日常に足を戻す
その中で僕だけが
変わらない
ただただ孤独に沈む
闇夜に溶けてしまいそうになった
この夜の闇だけが
僕の心と繋がってる気がしてさ
叫んだ声なき声は残響さえ残さない
ただただ心の闇に沈む
沈んで消えるなら
このまま天の闇まで届けばいいのに