後退
次の日の夜。
結論だけだ言おう。
ルシオンは政務室で撃沈していた。
前日にフェルディナンドだけ贔屓したらとか心配した事は無駄だった。
そもそも、そんな乙女思考回路になれた自分を褒め称えようかと思うぐらいだ。
指導はいつも通り何事なく終わり、強いて言うなら少し厳しくしてしまったようだ。
ウィンウッドからの哀れみが溢れた生暖かい視線を一身に浴びながら・・・。
コンコンと扉をノックする音が聞こえた。
「どうぞ。」
「失礼します。」
扉が開かれると、そこにはフェルディナンドがいた。
ルシオンは内心凄く動揺しているが表面上は冷静に保っている。
「ウィンウッド様から資料を届けるようにと。」
「そこにおいておいて下さい。」
「はい。では失礼します。」
横の机に資料をおいてフェルディナンドは帰って行く。
扉が閉まる音がしてルシオンは再び沈んだ。
二人っきりで会えた嬉しさ反面、素っ気なさ過ぎる自分に自己嫌悪。
仕事中だと自制心が強すぎるみたいだ。
私用で会える機会が欲しいと切に願うのだった。
「戻りましたー。」
「ご苦労さん。ルシオンどうだった?」
政務室からウィンウッドの所に戻りフェルディナンドは報告をしていた。
ルシオンの事を聞かれ
「何時も通りでした。」
「何か雑談とかは?」
「ルシオン様は忙しいんすよ?するわけないじゃないですか!」
フェルディナンドのいたく真面目な解答に正しいが頭痛がしそうなウィンウッドだった。