前進
ルシオンは執務室で小さく溜め息を付いた。
魔王陛下直属の第6部隊に片想い人フェルディナンドが騎士見習いになったとの書類を見て知った。
内心だけで言ってしまえば凄く嬉しい。
が手放しに喜べないのだ。
魔王と言えど政だけをしているわけではない。
ルシオンの中では魔王である前に魔導士である。
魔導を教える事も勿論あるのだ。
ついに明日、その日が来てしまう。
もし万が一その時にフェルディナンドだけを贔屓してしまったら・・・
やっと会えるは楽しみだが複雑な心境だった。
「明日の魔導訓練には魔王様参加だから楽しみにしとけよー。」
歌唱訓練後にウィンウッドが言ったら一気にざわめく。
やはり皆、ルシオンからの指導は更に気合いが入るし楽しみにしていた。
歌唱士はウィンウッド、剣術士はティナが最強だが魔導士はルシオンが一番である。
この三人に指導してもらえるのは第6部隊の特権だ。
他の部隊にいても機会はあるが回数は少なくなる。
「嬉しそうだね。」
もし尻尾があったら千切れんばかりに振っているだろうと思える程に嬉しそうな気配を漂わせているフェルディナンドに声をかけるルイーズ。
「うん!憧れの人だからね。ルイーズは?」
「まぁ楽しみかな?」
「ちょっと疑問計系っすか。」
フェルディナンドは半ば呆れた感じだが屈託のない笑顔を浮かべる。
それを見てルイーズも笑う。