The Truth②
善三郎は地図に記されていた場所に向かった。『夜紅町12番倉庫』がその場所であった。名前のとおりの倉庫だ。昔は街中に工業倉庫なんかがあってもおかしくない時代だったからね。
しかし、いざ倉庫に来てみると中には何も無かった。随分大きな倉庫だったらしいし、実は12番倉庫は3棟の倉庫が連なったものであったからかなりの広ささ。だが、それら全てには何も無かった。善三郎はすでに盗まれたか処分されたものと思い、その時は捜索を諦めてしまう。が、三年後。善三郎は鍵の束の一本に妙な形のものがあるのに気付く。自分の家の床下収納を扱っているときに気付いたのだ。善三郎は倉庫に急いだ。そして、倉庫の端の床。隠すかのように敷かれた布の下に小さな扉を見つけたのさ。
「随分壮大になってきた……。というかまるで自分が経験したかのように語るな?」
「父さんが善三郎爺さんから憶えるまで聞かされて、それをまた僕に憶えるまで毎晩毎晩聞かせたんだよ。今、思えば僕の人格のゆがみはこの話が作ったんだろうな」
「そんな自嘲気味になるなよ……。すまん、続けてくれ」
彼が地下で見たものは……。
「いや、ごめん。ここは企業秘密でいえないや」
「何だよそれ!?」
「すまんね。ま、後で説明するから。今、言えるのは大量の金塊があったことだけ」
「つまり、金塊以外にも何かあったわけだな」
「まあね。とりあえず話を進めるよ」
その金塊を資金にして、これからを守るための組織。つまり、次の超人が生まれるのを阻止する組織を建てた。創始者は善三郎を筆頭に山名、ホーガン、趙の四家だ。これがそれぞれ『聖鉄学園』『山名女子学園』『講才塾』『趙国際学校』を創立した。
「ちょっと待てよ。何で学校を建てたんだよ?それと超人の増加を防止するのとどう関係があるっていうんだ?」
「それはその金塊とともにあった、多くのものが関係しているわけだが…………」
倉橋が黙り込んだ。思案するような表情を見せる。
「どうした?」
「いや……。いいか、もう。全部話そう。かわりに聞いといて降りるとは言わせないよ」
実はあの扉の奥にあったのは炭鉱だった。地下40mくらいの地点だろうか、開けた作業場があり善三郎がそこでまず目にしたのは、炭鉱の概観にそぐわない近代的な機械の数々。そして金塊だった。善三郎は今までのことが事実で、自分の首には超人の増幅を食い止める、という使命がぶら下がっていることをそのとき初めて実感したのさ。
善三郎はその作業場、善三郎が離反者から受け取ったメモにはメナスと書いてあったが、そのメナスの全てを一ヶ月かけて調査した。そうするとその機械の全てが超人の増殖を食い止めるためのものだと分かったのさ。それぞれの詳しい説明は後でしよう。とりあえず、その後の善三郎はさっき話したとおり、手に入れた資金を使い学校を建てたのさ。
「おい、だから何で学校建てたのかって聞いてるんだよ」
「ああ、うん。それは善三郎爺さんなりに考えた結果だと思うよ」
「はぁ?」
倉橋は椅子から立ち上がり、ダズを手招きした。
「この下がメナスだ。行ってみようか」
倉橋が指差したのは奥の扉。何があるのか今まで分からなかった、謎の扉だった。
「は?てことはこの学校って……」
「そう。ここがまさに『夜紅町12番倉庫』さ。過去の話だけどね」
立花美里はいつになく気が立っていた。その原因はもちろん今朝の一件のせいである。あの後、彼女は特権で授業を放棄し、彼女の居場所である生徒会室で自らの非は何かとひたすらに自問していた。なぜ自分があんな無様を晒さねばならなかったのか。そもそもなぜ自分は油断していたのか。などと型絵の無い問いを繰り返している。しかし彼女は己の醜態は自分の責任であると心得ているので、決して逆恨みなど他人への転換をしない。彼女が最も腹を立てているのは自分に対してであった。
「何なのあいつ……。警備がどうとかって言ってたわね」
美里はダズを思い出していた。彼は何者なのか。何のために理江との戦いを止めたのか。何よりなぜ自分の攻撃が効かなかった?
(いいえ、ありえないわ。私の攻撃は効いていた筈。私は超人なのよ。彼は一般人にしか見えなかったし……)
美里は自分が超人であることに誇りを持っていた。だから、超人としての力を信じていたし、一般人との違いも分かっていた。しかし、だからこそ自分の力が及ばなかったことがいまだに信じることが出来ない。それに、あまり言いたくは無いが、あの時は理江の攻撃もまともに受けていた。超人二人分のダメージをうけたはずなのだ。
――彼は本当に一般人だったのか?――
美里の中にふと疑問が浮かび上がった。単純だったからこそ見逃していた見方であった。
あの時は一般人だと思っていたが、ミサと理江、二人の攻撃でもびくともしないような男である。むしろ超人の気配を消せるような使い手と見なしたほうが自然ではないか。
「けど仮に超人だとして、そんなことが出来るってことは『廉華』なみの相手と心得るべきね」
「私も今しがたそう考えていた。やはりそう思うか」
「理江……」
何の気配も無く部屋に入ってきていたのは、部活動連合の大部長『秋月理恵』だった。彼女は美里を見て少し悔しそうにしながら言った。
「彼がどんな人間かは把握しておらんが、とにかくあのままには出来ん。しかし、このまま挑んでも敗北は必須。ならば、と思い、恥ずかしながら美里を訪ねた」
「いいわよ。学校の中でもこんな時くらいは。理江が来たのは【合従策】が目的でしょう」
理江は少し驚いた顔をして頷いた。
「私もそう考えるわよ。一人でかかっても敵いそうに無いもの。問題はどうやって皆を招集するかね」
「皆、あの男と実際に会ってないからな。危険度の分からぬ相手にわざわざ動こうと思うものはいないか……」
美里は閃いた顔をして言った。
「塔子を焚きつけてみるとかどうかしら?風紀を乱す怪しい男がいる!とか言って」
「うむ…それは彼女の性格を悪用しているようで気分が悪いが……。確かにいい案ではあるな」
「決まったら即実行ぉ!」
美里は嬉々とした表情で携帯を取り出し、『江崎塔子』のアドレスに彼女の謀略の詰まったメールを送った。




