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聖鉄学園付近、コンビニ――――
近所のコンビニの女性店員□「ありがとうございましたー」
ダスティンは朝食を買いに来ていた。一週間に二日ほど幸子さんが居ない日があるので、その日は自分で作るか弁当を買うかにしている。今日は弁当にしたのだ。
「はぁ……」
ダズは昨日の一件のせいか精神的に少し疲れていた。
昨日は五人の不審者を捕らえたが、その後が何かすっきりせず心に靄がかった様になってしまっているのだ。
(昨日のなんだったんだろうな)
ここまでは自転車で来ていた為、それを取りに行くと……。
「はぁぁぁ~」
一気に疲れが増した気がする。自転車置き場に三人の学生が屯していたのである。
(こういうのだけは国境を越えた文化なんだよな。こんな朝っぱらからご苦労なことだよ)
彼らは服を着崩し、東洋人特有の真っ黒の髪を欧風に黄色で染めている。ダズのような外国人の目から見ても明らかな悪たれであった。
「ちょっと良いかな。自転車を取らしてくれ」
学生らは座ったままこちらを睨みつけた。そして、鼻で笑ったあと立ち上がった。退いてくれるのかと思ったが、そうではなく、むしろこちらを囲むかのように立ちふさがった。
不良少年B□「すっげ、外人や。でっけぇ!日本語バリうめぇし」
不良少年C□「てか、こいつ俺らに退けって言わんかった?なめとるやん」
不良少年A□「だよなぁ。おい、おっさん!退いて欲しかったら頼み方ってもんがあろうが」
ダズにとっては久しぶりに自分に対して向けられる敵意であった。ダズは頭に血が上るのを感じた。(余談だが、学生時代ダズには黒人の不良グループに襲われた記憶がある。それ以来、ダズはこのストリートを好むあぶれものたちが大嫌いになった。そしてずいぶんと短気にもなったらしい)
「HAN?」
ダズは一人の首元に手を掛けた。
「おいっ、てめぇ!?」
ダズはその少年の手から未開封の缶ジュースを奪い、それを少年の顔に突きつけた。
『グジャリ』
そしてそれを握りつぶした。
「――――――ヒッ!!??」
ジュースの中身が散乱する。三人の学生は青ざめた表情で握り潰された缶を見ている。
「退かないの?」
「い、いや――――!おいっ行こうぜ!」
三人はこちらをチラチラと窺いながら去っていった。
「ハハハ、子供だなぁ」
午前九時、聖鉄学園3階、3年生のフロア――――。
妙子□「ねえねえ、転入生が来るって聞いた?」
晴香□「え、そうなん?うちらのクラスに来るの?」
美奈子□「そうらしいですよ。どのようなお方なのでしょうかねぇ」
ここ3年9組では今日から来るという転入生の噂で持ちきりだった。
璃子□「もうそろそろ来る時間じゃないのか?というかホームルームまだかよ」
綾子□「転入生の関係で遅くなっとるんやないとかな。何かやっぱ色々あるっちゃないと?」
有紀□「何にせよ、はよして欲しいわー。一限目は体育やろ、はよサッカーしたか」
皆が転入生の話で盛り上がっていると、不意に教室の扉が開いた。
担任□「おーし席着けー。ホームルーム始めるぞー。あ、君はちょっと外で待っとって」
ざわざわと皆が席に着く。ただ、多くの生徒は教室の外が気になっているようだ。
担任□「よーし、お前らも聞いてると思うが今日は転入生がおるぞ。じゃ、入って自己紹介」
ミキ□「はい」
ミキが教室に入った瞬間、皆からため息のような感嘆の声が漏れた。
有紀□「うっわー。バリ美人やん」
綾子□「美里より可愛いかも……。え、何?帰国子女ってまじバナ?」
美奈子□「あらあら、随分と別嬪なお方ですこと」
ミキが自分の名前をカタカナで黒板に書いた。
ミキ□「ミキ=エイムズです。ミキが名前で苗字がエイムズ。一年間よろしくお願いします」
ミキが軽く頭を下げた。
担任□「よーし、二人のみエイムズへの質問を許す。誰かおらんかー」
月美□「はいはいはーい」
担任□「よーし、じゃあ月美」
月美と呼ばれた元気の良い少女が立ち上がった。
月美□「ミキちゃんは外国の人ですかー」
ミキ□「いえ、私は日本人です。ただ、保護者がアメリカ人で約四年間アメリカで暮らしてました。日本には兄と共に来ました」
担任□「へー。じゃ、他」
背が高く大人びた少女が静かに手を挙げた。
担任□「おっ、秋月か珍しいな」
理江□「エイムズは何か部活に入る気はあるか?」
ミキ□「部活?」
理江□「無いか。そうか……。ならば」
有紀□「あー!理江ちゃんずるい。抜け駆け禁止たいー」
担任□「おーい、止めんかー。ホームルームはもう良いから、さっさと体育にいけー。今日はサッカーだろうが。石崎先生に怒られても知らんぞー」
『えー』だの、『先生が遅れたんじゃん』だのと文句が飛んだが、皆は渋々と体操服を持って準備を始めた。
担任□「じゃ、エイムズは細かい説明だとかがあるからこの時間に終わらせようか。まずは……」
同時刻、警備員室―---。
「~♪」
ダズは暇だった。就業祝いに倉橋が警備員室にオーディオをつけてくれたので、家のCDを持ってきて朝からずっと聞いていた。ちなみにダズが好んで聞くのはイギリスのとある有名ロックバンドだが、ダズは彼らが好きすぎてレスラー時代に自分の入場曲を依頼しに行ったこともあった。(有休をわざわざとり自費で行くという暴挙であったが、もちろん依頼が通ったわけは無い)
『PPPPPP』
電話が鳴った。サブディスプレイを見ると『倉橋 大和』の文字。
「Hi」
「倉橋だ。そろそろお嬢様が御着きになるってさ」
「お嬢様ってーと、松浦洵子か。つまり警護対象との初顔合わせか」
「くれぐれも粗相は無いようにね。今回はご両親もいらっしゃるから、ちゃんと用意しておいた服で向かうんだよ」
「おう。じゃあすぐ行ったほうが良いのか?」
「いや、ゆっくりで良いよ。二十分後くらいに来客用玄関に」
「了解」




