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動き出す敵

 夜、寮にて。

「理江。きちんと伝えてくれた?」

 食堂で少し遅めの食事を摂っていた理江のもとに、既に食事を終えたであろう美里が声をかけてきた。

「……ふー」

 返事にはため息。

「すまんな」

「やっぱり言えなかったのね…。まぁ表情からすぐ分かってはいたけど。どうして?」

「廉華がダズに気があるというのはあくまでもお前の推測なのだろう?私にはそうは見えなかったし、本当かどうかもわからないような話をするのも気が引けてな……」

 美里は理江の言葉に大きくため息を吐いた。いかにも呆れた、といった雰囲気で。

「もう!細かいことはいいのよ。廉華がダズに興味を持ってるのは間違いないんだし、何よりも優先するべきなのは二人の間に対話の機会を設けること。廉華が心を開かないと、升悟とか言う奴と交渉の一つもできないわ。そうなったら本当に大変なことになるって」

「むう……」

「はぁ……。アンタの言うことなら真面目に聞いてくれるだろうと思って頼んでんのに。ていうか他に適任者いないのよ」

 理江は心底申し訳なさそうな表情をした。それを見て、美里も何も言えなくなったのだろう。非難をやめて小さく舌打ちをした。

「……いいわ。何かまた考えましょ。おやすみ」

「あ、ああ」

(はぁ……理江も気負わなければいいけど。それよりも早く何か手を打たないと、手遅れになってからでは。一体何を……)

 その日は何も打開案を出すことができないまま過ぎていった。


 その二日後の夕方、最初の事件は起こった。

 学園裏のコンビニ。

「そうそう!高橋先生とかね!」

「わかる~。あの人も熱心だよね~」

「ん?あそこ……」

 放課後、6時ころ。居残りの生徒三人が間食を買いに行っていた。

「うわ…。感じ悪い人たち。不良?」

「…さっさと中に入っちゃお!」

 コンビニの前には数人のガラの悪い青年。店の入口を見張るように、駐車場にたむろしていた。 それぞれタバコや酒を飲んでいるが、メンバーの中には未成年らしき少年もいる。

「臭っ!」

 全国的に有名なお嬢様校ともあって、目の前の男たちは三人にとっては別世界の人間たちだ。彼女らがそれらを不快に思ったのは言うまでもない。普段から嗅ぎなれない酒やタバコの臭いに顔を歪めた。

「お、」

 三人が目を合わせないように気をつけながら、青年たちの横を通り抜けようとしたとき、その中のひとりが彼女たちを見て声を上げた。

「セイテツの()じゃん。やっと来た」

「おー。ちょっと君たち待ってよ」

「――えっ!あ……」

 声をかけられ、それに応じれば、すぐに周りを男たちに囲まれてしまった。

「あ、あのっ!何なんですか……!?」

「いやー僕さぁ、頭のいい女って好みじゃないんだよね。けど命令で君たちに悪戯せんといかんのよね。ちょっと付き合ってくれん?」

 そう言いながら、先頭のつり目の男が生徒のひとりの腕を掴む。

「い、いやっ!離して!」

 抵抗を試みるが、三人ともそれぞれ男たちに拘束されてしまう。

「よーし。これでいいんだよね。あとは適当に犯させて……」

「―――~っ!!!」

 生徒の声にもならない悲痛な叫び声が響いた。

「貴方たち待ってください」

「あん?」

 聖鉄学園にはどんなに些細な事であろうと悪事は一切許さない、風紀の番人がいた。

「聖鉄学園生徒会風紀委員長、篠崎塔子。生徒への攻撃を確認しました。早急に生徒を解放し、こちらの指示に従いなさい」

 『風紀』の腕章を見せつけながら、悪漢たちに向かって口上を述べる。男たちは唖然として聞いていた。

「ふ、ははっ!何だ、このちっせぇの。自分から向かってくるとか馬鹿やないとや!」

「さぁ、早く解放しなさい。でなければコチラも強硬手段に出ますよ」

 前で笑う男たちをよそに、つり目の男は後ろでじっと様子を伺っている。

「尼子さん!このバカもついでに捕まえていきますかぁ?」

「ふっ、出来るならそうしてくれ」

「へ?」

 ざりっ、と土を踏みしめる音が聞こえた。塔子がゆっくりと戦闘態勢に入っているのだ。

「最後通告だ。解放し、支持に従え」

「馬鹿なガキだぜ。ひん剥いてやらぁ」

 男が近づいて塔子の腕を掴んだ瞬間――――。

「おうっ」

 気の抜けたような声を出して男は倒れた。

「!?」

 他の不良たちのあいだに戦慄がはしる。何をしたのか全くわからなかった。が……。

「え、今何――うっ」

 二人目に至って塔子の拳が胸部にめり込んでいるのを、その場の全員が視認した。

「う、うわ……」

 突然の脅威に男たちは戸惑い、捉えていた生徒たちから手を離した。

「やった!」

 その隙にと三人とも学校側に走り抜けた。

「生徒の解放を確認。普通ならばこれで見逃してもいいのだが、今回はそうはいかない。貴方たちがダンダンダ団であるからね」

 塔子は集中を切らさずに、男達ににじり寄る。それなのに彼らが逃げ出さないのは、藤子の威圧に思考が潰されているからである。

「お前ら、適当に時間を稼ぐんだよ。僕はやられるわけにはいかないんだよね」

 塔子の威圧の中、平然な顔をしてバイクにまたがるのはあの男、尼子と呼ばれたつり目の男であった。

「む、待て!お前」

「ハハハ。待てと言われて待つ輩はいないんだよね~。じゃーねー」

「クソッ!」

 バイクは見る間に過ぎ去ってゆき、さすがの塔子でも追いつけない。

「お、おい俺たちも逃げるぞ!」

 つり目の男に気を取られた塔子の威圧が和らいだ隙に、男たちは我に返り、一斉に四方に逃げ散った。倒れていた者も回収されている。

「あっ!逃がしたか……。追いかける…いや、報告と生徒の安全確認が優先だな」

 逃してしまったことに心残りはあったが、何をまずすべきかを考えた塔子は、生徒会長である美里に事を伝えるべく学園へ急ぎ帰った。

なんとか書けました~。

最近は厳しいなぁ!

一気に書き上げたから誤字とかあるかもしれません。面倒でなければ妙なところなどは報告していただければ嬉しいです。

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