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暴力女の別の一面

「状況を説明して欲しいわね。アンタと族の間で何があったのよ、廉華?」

 生徒会室にいるのは美里と廉華。先ほど起こった突然の事件についての事情聴取であった。

「…………」

 しかし、廉華はだんまりを続けている。

 事情聴取を始めてから15分程だろうか、生徒会室のドアがノックされた。

「!入っていいわよ」

「失礼する」

 頭を下げながら入ってきたのは、大部長である理江だった。

「……秋月理江」

 廉華が顔を上げて、入ってきた彼女の顔を見た。

「理江、生徒たちは?」

「ああ、先生方の協力もありなんとか鎮まった。もう授業を再開しているだろう」

 美里はそれを聞いて深く安堵のため息をついた。本当にこれまで切羽詰っていたのだ。

「しかし、こんなことが再びあったら、生徒の不安は抑えきれんぞ。状況がイマイチ掴めていないのだが、一体どうしてこんなことになったんだ」

 美里は理江の言葉に回答する代わりに、仏頂面で口を固く結んでいる廉華を横目で見た。理江もそちらに目を移し、なんとなく言いたいことが分かったようだ。

「廉華……。最近おとなしくしていると思ったら」

「何か言っても無駄よ。私たちの言葉なんてハナから聞く気がないみたい。ただ抵抗もしないから何かあるんでしょうけど」

 廉華は苛立った様子で美里を睨み、小さく舌打ちをした。お前のことなどお見通しだ、という美里の口調が気に食わなかったらしい。

「美里。お前、広場で族と会話していなかったか?向こうは一体なんて言ってきたんだ?」

「あー。何か廉華を出せ、としか。私も普段から廉華が学校に来てるとは思わなかったから、対処のしようがさぁ」

「これが早々に解決できぬなら学園の混乱は抑えきれぬものとなろう。いざとなれば実力行使も致し方ないぞ」

 理江の言葉に廉華が舌打ちを重ねる。

「超人だからって力を過信しちゃァいけねぇ。一般人つったって俺が認めて下に置いてた奴らだぜ。そして晋也、立花に話しかけたリーダーの升悟晋也は侮れねぇ。過去、超人に最も近い野郎は晋也だ、と考えてた時期もあったくらいだ。それに抗争になったとすれば、襲われるのはほとんどが力が開眼してない生徒だろ?そうなって責任取れんのか、お前ら」

「ようやく口を開いたと思えば…。質問にさっさと答えなさいよ!」

 腹立たしそうな目で廉華を見た。

「あんたが事情を話してくれないから、話が物騒になっているんでしょうが。私たちだってなるべく事を荒げたくないのよ」

 廉華は少し目をそらし、遠くを見るような仕草を見せたあとゆっくり口を開いた。

「アイツ等は俺を族に引き戻したいんだよ。そうじゃねぇと結束を保てねぇからな」

「結束?族に?」

「族の中に派閥でもあるということか……。今のリーダーにつく者と廉華につく者。お前は族を離反でもしたのか」

「そうだが離反じゃねぇ。足を洗ったんだ。今は誰とも組んでねぇよ。真っ当な学生をしてる」

 ため息。廉華の腹の中にそれ以外の何かがあることを表しているようだ。

「そういえばそんな話をしてたわね。興味がどうだから、とか」

「興味?どういうことだ。」

「いや、相手のリーダーと廉華の話でね、『興味の対象が変わったから学校に通いだした』とか言ってたんだよ。それで男がその興味の対象を見てみたいだとか、ナントカ……」

 ふむ、と考える仕草をして理江は部屋の窓際を歩く。

「廉華よ。お前はつまりこの学園内にその『興味の対象』とやらがあるから通学している、ということか」

「……」

 廉華は答えない。

「…沈黙は肯定と受け取っておこう。ただこれだけ教えてくれ。それらの理由はあくまでも私的か?それとも誰かがまた一枚かんでいるのか?」

「族の脱退も学園への通学も、今の沈黙もすべてが私的な理由に起因してる。迷惑かけて悪ぃがどうしてもそうしてぇんだ」

「それは暴力行為など、直接迷惑をかけるようなものではないな?」

「それのせいで起こっちまう、アイツ等の嫌がらせでは迷惑をかけっかもしれねぇが、俺の目的自体はお前らに関係ねぇよ。迷惑をかけるようなことは絶対ねぇ。ただ、なんつーか…言いたくねぇんだよ。ハズいっつーかさ……」

 廉華の恥じらう表情に美里は軽く吹き出した。いつも傍若無人な彼女から『恥ずかしい』などという言葉が出るとは思っていなかったからだ。

「美里、笑うんじゃない。表情から分かるだろう、彼女はいたって真剣だ」

「マジでそんなこと言うから面白いんじゃない」

「……俺だってハズいことくらいあるんだよ」

 しかし、このままでは状況はドン詰まりだ。わずかに和らいだ場の空気の中で、理江は心の中、密かにそう思った。廉華の事情を聞き出すことができないということは、ダンダンダ団を抑えることができるカードが学園側にはない。外交的な対抗策は全く望めなくなってしまったこの状況。先ほど廉華が言っていた通り、武力行使に及ぼうにも相手の攻撃の方が速く、展開できる範囲が広いのは明確。そして何より、リーダーの升悟慎也という男を学園側は全く知らない。廉華の言い様であれば並々ならぬ男なのであろうから、下手な行動はとるべきでない。

「あんたが恥じらう事ねぇ……。人には言い難いような気持ちで、自分には絶対にないと思ってた気持ちを初めての抱いちゃった、みたいな」

 ニタニタしながら美里がうつむいた廉華を覗き込む。

「何だ美里?その確信めいた言い方は」

 美里は理江の言葉に少し驚いたような顔をして、呆れたような表情をした。

「理江、本当にわかんないの?……あんた達二人共鈍いなぁ~」

 と、そこで美里はハッ、と思い出したような表情をした。

「そーいえばダズを広場に置きっぱなしだわ」

「ダズ?お前と一緒にいたのか?あんなに嫌ってたのに」

「いや~あっさり仲良くなっちゃったんだよ、これが。一緒に食事してたの」

 二人の会話を横で聞いていた廉華が怪訝そうな顔をする。

「ダズ?誰の話をしているんだ、一体?」

「いやいや、あんたも知ってる人よ。ほら、この前お前が鉄パイプで殴っても死ななかった一般人のこと」

「なに!」

 椅子を倒しながら、すごい勢いで廉華が立ちあがった。理江も美里もその剣幕におされびっくりしていたが、その反応に最も驚いたのは廉華自身であった。

「あ……すまん。何でもない」

「急にどうした廉華?!もしかしてあの時の事で彼を恨んでいたか?」

 廉華は椅子を立て、座り直して再びうつむく。美里はそれを見ながら、探るような視線を廉華にあびせている。

「あの時のことは我々に責任がある。君たちをけしかけて戦わせたのは、こちらの策略であり、彼は何も悪くないんだ!そうだよな、美里?……おい、聞いてるのか美里!?」

 呼びかける理江に反応せず、考えの中で美里は一つの結論に至っていた。

(なるほどね。この反応は間違いない。廉華らしい理由だわ、思考回路が理江に近いんだもの。彼女の興味対象がこんなに近いところにいるなんてね。いや、興味対象というか……)

 この一件で美里の中には、今までなかった新しい廉華のイメージができた。

「アンタとでも意外と仲良くなれるかもね、廉華」

「……」

「急に何を言い出すんだ、美里。先程から話が見えんぞ」

正直、月一更新になりそうです……残念!

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