ダンダンダ団
いやー随分期間が空いてしまった。ネタのキレがなくて困ってました。しかし、大丈夫。今回から復活してガンガン投稿していきます!
アクシデントというものは唐突に起こってこそだ。漫画の様に機を見計らったが如くに起こる事象は、アクシデントとは到底言えるものではない。それが起こるのは大抵が何気ない日々、人々が気を許した瞬間。例えば寝ているときや仕事をしているとき、もしかすると少し早い昼食を摂りながら、新たな友人と語らっている時かもしれない…。
地の唸るような音がダズと美里の耳に届いた。
「何の音!?」
「シッ!」
ダズは美里に静かにするようにジェスチャーで求め、音の正体を突き止めるべく己の聴覚に意識を集中させた。音は未だに鳴り続いているが何重にも音が重なっているようで、それ自体の音の形を見極めるのが難しい。
「正門側から聞こえるな。しかし何なのかの特定は難しい。行ってみたほうが早いかもしれないぞ、どうする?何か嫌な予感がするんだが……」
「同感ね。少なくとも会話を続けていい状況とは思えないわ」
「おっしゃ。なら行ってみようか」
お互い頷きあって食堂を飛び出した。正門は北にある。この学園はコの字の形をしていて、正門を取り囲むように校舎が建てられている。食堂は南西にあり、正門へ行くためには校舎を通り抜けなければならないが。
「むっ。生徒たちが廊下に出てる」
「野次馬のようね。この音、いやこの音の原因が彼女たちの注目を集めているんだわ」
生徒たちが廊下に出て、みんなで窓から正門付近の様子を窺っていた。廊下は押し合いのもみ合いで通り抜けるには骨が折れそうだ。
「くっ、どいてくれ」
多少力任せに列を割って前に進む。美里はダズの作った道を悠々と歩いている。
「おい。後ろにいないで会長の力でどうにかしてくれよ!」
「めんど……秩序あってこそなので」
「なら、お前なりにでいいから手助けしてくれないか!(というか今ものすごく腹の立つワードを言いかけなかったか!?)」
美里は手助けの方法を腕を組んで考えている。…ダズが奮闘している後ろで。
「あっ……じゃあ応援してあげるわ。コホン……私のために頑張ってダズくん!」
と、肩に手を置いて目をキラキラ。
(ム、ムカつくぞぉぉぉぉ!おちょくってるようにしか見えん!)
音の正体がわかった。目の前にあるのは、正門から中に入ってこようとするバイクの集団。俗に言う“不良”達だ。
「ダンダンダダン……」
不意にそれを見た美里が妙な言葉を口走った。
「は?何を言っているんだ?」
「奴らは廉華の束ねるここら一帯の不良グループ『ダンダンダ団』よ」
「だ、ダンダン?」
ダズは悪いと思いつつも軽く含み笑いをした。
「笑い事じゃないわ。こいつらはただの不良じゃないのよ、廉華がバックにいるのだから」
廉華…ダズは記憶を手繰った。
(ああ、そうだ。この前俺を棒で叩いてきた子の名前だ。確かあの子も超人だったよな)
「だけど何で来たの?ここにはこない約束じゃあ……」
その時、バイク集団の先頭の男(みる限りこの中のリーダーのようだ)がバイクを降り、金属バットを持って正門をくぐった。そしてバットを地面に叩きつけて大声で言葉を発する。
「ガァァァァ!れんっかぁぁぁ!」
彼が放ったのは予想外の言葉だった。
「は?」
「え?」
男はもう一度腹に力を込めて声を張り上げる。
「いつまで出てこないつもりだァ!テメェがガッコに来てるのは知ってんだよ!あんまし調子乗ってんじゃねぇぞ!」
周りの聴衆がどよめく。
「仲間じゃなかったのか?」
「いや、そのはずよ。何かの理由で内輪もめでもあったのかしら?」
男はバットを振り回し周りの女生徒達を牽制している。それに呼応するように、次第に音の大きくなるバイクのエンジン音。一般生徒は興味心を煽られるだけだが、美里のような治安を管理する役職の心境は穏やかではないだろう。現にダズの隣の少女は、先程から恨めしそうな目でバットの男を睨みつけている。
「むむむ…迷惑な。――――話しに行ってくる!」
美里は男の前に躍り出た。
(うわっ!大胆な!)
「ああ?何だよぉクソアマぁ。何見てんだコラ」
「あなたは無断で校内に侵入し、さらに武器を振り回し生徒を脅迫。一体どういうつもりですか?それとうちの生徒に御用があるのでしたら、事務を通してもらわないと困ります」
男が顔をググッと美里へ近づけ、バットを持たない左手で顎を掴み持ち上げた。
「おほ、かわい子ちゃん。威勢いいなぁオイ。しかしな、廉華は俺の女なんだよ。ふかーい愛で結ばれてんだ。邪魔すると犯っちゃうぜ。ちゃんと後で優しくしてやるから下がってろや!」
そしてそのまま後ろに突き飛ばした。
(あれ?何で美里は抵抗しないんだ?あんなひょろいのひと捻りだろうに)
「オオイ!さっさと廉華を出さねぇと、このアマを公開凌辱しちまうぜぇ!ヘハハハ!!」
ダズの眉間にシワが寄る。相手は子供だから手は出すまいと思っていたが、ダズの予想に反して美里が全く抵抗をしないため、これ以上状況が悪くなるようであれば見逃すことはできなくなってしまう。
「廉華ぁ、俺会えなくて寂しいんだぜぇ。早く……出てこんかい我ェ!このクソ下僕が!出てきたらその汚い━━━━を━━━━してやるからなぁ!━━━━をぶち破って俺の所有物にしてやらァ!」
ダズが仕方なく立ち上がろうとしたら、視界の隅に見覚えのある人影を確認した。
「おーおーおー!廉華ぁ!何してたんだぁ?心配してたんだぜぇ」
「…………」
「お前が長を務めてないとハリが出ぇねぇんだよ。あ、もちろん俺もさみしいぜ、ヒヒヒ!だからよぉ、抜けるなんて言わずに戻ってこいよぉ!」
(抜ける、脱退するということか?なんか仲間の間で揉めてるってのは違いなさそうだな……)
「お前らしくないぜぇ。急に興味の対象が変わったとか言って、ガッコに真面目に通いだすんだもんなぁ!お友達でも出来たってかぁヒャハハハ!」
「ハァ……うるさいぞ。帰ってくれないか?」
「あーあ、彼氏になんて冷たいんだろうねぇ。わーったよ、もう諦めっよ。たださぁ…最後にお前の新しい興味の対象ってのを拝んどきたいなぁ。会わせてくれたら手を引いてもいいぜ」
「それは……無理だ」
廉華の心底残念そうな表情を見た男は、頬を歪ませてニタリと笑った。
「へへ…そうかぁ。まぁ今日のところは帰るが、そいつに会わせてくれるまでお前のことは諦めないぜ。ふっ、どうしても無理なら帰ってくることだな。あんまり長引かせると暇でしょうがなくなって、そこのアマみたいな関係ねぇやつと遊んじゃうかもしんねぇからな!ヒヒヒィハハハハ!」
男は周りをニタニタと品定めをするような目で見回しながら、ゆっくりと自分のバイクまで戻った。そしてエンジンをひときわ大きく鳴らしたあと、手下の不良たちを見事に統率して何事もなかったように去っていった。廉華はバイクの集団が視界から消えたのを確認して、うつむき長いため息をついた。
「どういうこと、廉華?」
去ろうとする廉華の前に立ちふさがったのは美里であった。廉華は不機嫌そうな目で、下から睨みつけるように彼女に向き合う。その二人の姿は表のトップと裏のトップの対峙、今の学園の対立の図を如実に表していた。
「話を聞きたいわ。生徒会室へ同行してもらいたいけれど、拒む?」
「……いや。今回はお前と腹を割ってはなさなくちゃいかん。人目につかないところはむしろ都合がいい。抵抗はせんから安心しろ」
お互い数秒見つめあったあと、美里の方からゆっくりと生徒会室に向かい、廉華もそれに続いた。
二人が行くのを確認した野次馬たちは、教員方の指示もあって波が引くように教室へ帰っていった。残ったのはダズ一人。
「あれ?いつの間にか皆いなくなっているけど……。何がどうなってたのかよく分かんなかったし、なんか一人だけ取り残されてないか?」
突然の急展開にダズはただただ困惑するばかりであった。
とりあえずこの廉華ストーリーで学園オンリーで進んでいたところに区切りを入れます。
プロレスをそろそろ絡めていこうかな(ΦωΦ)フフフ…




