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話せばわかるっ!

「ぐあー。暇だぁ。見回りも結局暇だぁ」

 図書室をあとにしたダズは時間をもてあましていた。ミキに会えるのは昼、昼まではあと三時間以上。それに授業中の校内は想像以上に人気の少ないもので、生徒はおろか先生さえほとんど見かけない。授業を見たり、校内の施設を使うこともおおっぴらにできないので、ただ歩き回っているのみになってしまっている。せめてトレーニングルームが使えたら、とダズは先ほどから何度も思っている。

「なんか腹も減ってきたし……。む、そういえば俺は食堂を使っていいのだろうか」

 学校のことで疑問があれば、即座に倉橋へ電話である。

『いいよ~』

 至極あっさりとしていた。

「んじゃ、食堂に行きますかねぇ」


――同時刻、生徒会室――

 授業の時間、生徒会室でパソコンに向かう影が一つ。もちろん生徒会長、立花美里その人である。

 超人の一人である彼女は現在、超人の特権を使って生徒会活動をしていた。先週はダズに構いっぱなしだったおかげで会長としての仕事を怠ってしまい、たくさんの案件が山積みになっているのだ。それに加え。

(ダスティン=エイムズめ…。お前という人間を今すぐにでも推し量ってやるわ)

 とまだまだダズのことも諦めていない様子。理江の心配をよそに一人で独走しているのだ。

「ふー。ひと区切りっと」

 仕事がある程度終わり、美里は会長席から立ち上がった。

(飲み物でも買いに行こうかな…。あ、ついでに朝ごはん食べちゃお)

 美里は生徒会室を出、食堂へ向かう。ちなみに彼女は部屋を出るときに生徒会の腕章をはずしていた。本人曰く、『学校内でも食事のときくらいは一般生徒でありたいのよ』とのこと。こういった自分の役職を誇示しないところも、彼女が超人でありながらも(・・・・・・・・・)生徒たちに会長として慕われる所以であろう。

「あ、朝定(朝専用定食)終わってる。もうそんな時間だったの?うーん、どうしよ」

 美里がメニュー表を見て悩んでいると、食堂のおばちゃんが声をかけてきた。

「あらぁ会長さんじゃないかい。朝定の材料が余ってるから、よかったら作ってあげようか?」

「え、本当ですか!ありがとうございます」

 食堂で『会長』と呼ばれたのは些か頭にきたが、朝定を食べられる喜びとおばちゃんの慈悲がそれに(まさ)った。

「はい、朝定おまち。あと、部屋の長机はおにぎりのパッケージ詰めに使うから、悪いけどバルコニーで食べてくれんね」

 おばちゃんに言われるままバルコニーへ。しかし、バルコニーにはテーブルは二台のみ。先客がいれば必然的に近くになってしまうわけで……。

「……(唖然)」

 美里にとっては運の悪いことに、そこには大量の飯を食らっているダズの姿があったのだ。

「あれ?君は確か生徒会長の……美里…だったか?飯食いに来たんだな」

 美里は定食を持ったまま踵を返して立ち去ろうとする。

「おおい!?そんなに冷たくしなくてもいいだろ。とりあえず飯くらい食ってからいけよ。別に話しかけたりはしないからさ」

 美里は立ち止まり、自分の持つ朝定食を見た。ここ以外では食べる場所がないことを思い出し、仕方なくバルコニーのダズの座ってない席に腰を下ろした。ダズに背を向けて座り、食事を始める。

「……(むしゃむしゃ)」

「……(もくもく)」

 特に気まずいとかではないが、なんとも言えない空気があたりに漂う。

(うーむ。彼女はまだ俺に敵対心を持っているのかな?会ったら聞こうと思っていたことなんかもあったんだけどなぁ)

 ダズは彼女の背中からあふれ出る、他を寄せ付けようとしないオーラを感じていた。

(うーん。あの男の顔を見るのもいやだけど、背中を向けるのもなんだか怖いわね。ええい、お願いだから近寄らないでよ!)

 美里も美里で、ダズの存在を若干気にしすぎていた。

「な、なぁ」

 ダズが沈黙を破り話しかけた。

「…何よ」

「えーっと…俺はダズって呼んでくれ。お前のことは美里って呼んでいいか?」

「……好きにすれば」

 が、やはり会話は続かない。

「あの、ね…」

 次に話しかけたのは美里。

「お、おう。どうした」

「えと、こっ、この前は急に襲っちゃって悪かったわね(なに謝ってんのー!?悪いとか欠片も思ってないわよ!)」

「えっ?」

 ダズ、驚きいささか沈黙する。

「あっ、いや、えっとぉ……」

 美里は自らの言葉にしどろもどろであるが、ダズはむしろ落ち着いた様子で、

「そうか、良かったよ」

 心底安心した、という表情で短く息を吐いた。美里にとってそのような様子は不可解であった。

「いやぁ理江から、随分お前が俺を嫌ってると聞いていたからな。どうにかしないといけないなー、と思ってたんだ。けどその様子から、それほどでもないのだと分かるとほっとしてね」

 美里はダズが思っていた以上の心優しい青年であったことに今更ながら気づき、今日までの自分の彼に対する行動を思い返すと、なんとも申し訳なく、恥ずかしくなってしまい、顔を赤らめてうつむいた。

(うわー。サイテーだ私。あいつの方を向いていなくて良かったよ、恥ずかしすぎてたまらないわ)

「しかし、美里が謝るなら俺にも非はある。お前が俺に攻撃してきたのは、初日に悪い印象を与えるような行動を取った俺が悪い。あの時もう少しまともな自己紹介で済ましておけばなぁ。ははは」

 美里はダズの言葉に耐えかねて振り向き、ダズに向かい合う形をとった。彼女は下唇をかみ締め、申し訳なさそうな、それでいて悔しそうな表情を見せる。

「それ以上言わないで。私も行為の善悪は分かっていたつもりだったけど、今回はそれを見失っていたわ。私はこれ以上あなたに謝らせていい立場じゃない。肉体的なダメージまで与えて……!ああっ!もうっ!私の悪い癖だわ。昔から直せないまま。せっかくいつも傍らに理江が居てくれるのに……」

 彼女、美里は突拍子無く行動を起こして周りを困らせるが、冷静になれば、たとえ自分のした行動であろうとも善悪を割り切ることができ、自分を優位に立たせようなどとは欠片も思わない人物である。その無邪気さと愚直な正義心は学校内での彼女の人気のもとであった。

「心から、ここ一週間のことを謝罪させてもらうわ。そしてついさっきまで、あなたを次はどうやって陥れようかと考えてた。それもごめんなさい。もう絶対しないわ」

「おいおい、急にどうしたんだよ。随分と素直になったな」

「私は自分が気に食わないことには絶対妥協しないの。理にかなってない行為とかは特に。今回は私自身の行動が気に食わなかった、それだけのことよ。迷惑を被ったあなたには本当に申し訳なく思ってる。あなたの気が晴れるまで謝罪するわ」

 あまりにも正直に頭を下げる彼女に、むしろダズが戸惑ってしまった。

「も、もう良いって。それよりせっかくだから、改めて自己紹介をしないか?俺たちはまだお互いの名前しか知らないだろ」

「自己紹介?うーんと…生徒会長よ。それでNo.3の超人でもあるわ。あとは……部活連と抗争してるわね」

「それだけ?もう少し無いのかよ」

 美里は片眉を上げて、考えるような素振りを見せた。

「うーん。急に言われても……。先に言ってよ」

「俺か?元プロレスラーでデトロイト出身の25歳だ。半年前に日本に来た。現職は警備員で今は見回りの最中。妹がこの学園の3年生で……クラスは忘れた。趣味は音楽で学生時代は本気でミュージシャンを目指したりもしてた、と。こんなところでどうだ?」

「うーん私は……」

 その後、昼休み開始の予鈴がなるまで、今までが嘘のように二人は語り合い、仲を深めた。

 美里はダズが日本に来て三人目の友人であり、二人目の女友達となった。

本日は二話更新でした。最近、滞っていたのでw

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