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図書室への憧れ

 ダズ、怒涛の週が明けた月曜日。彼はいつもどおり警備員室でモニターを見ていた。

「……うーむ。眠いなぁ」

 そしていつもどおり暇していた。最近仕事に慣れれば慣れるほど、単純作業のこの仕事に面白みが無くなっていくのである。ダズとしては非常に由々しき事態で、

「ゲーム持ってきてやろうかなー。あ、そういえばテレビないよ、ここ……」

 何とか打開すべく、必死(?)の試行錯誤が繰り替えされていた。

 ダズはおもむろにポケットからケータイを取り出し電話をかけだす。

「はーい。倉崎だけど、ダズ?」

「うん。倉橋暇でしょ?今から遊ぼうぜ」

「は?何を言ってるんだい。僕はぜんぜん暇じゃないよ。理事長も仕事はあるわけだし。というかみんな理事長には大した仕事がない、とか勘違いしてるだろうけどさぁ…」

「どーでもいいからとにかく暇なんだよ!」

 電話越しに倉橋はため息をついた。

「そんなの知らないよ……。あ、そうだ。暇なら見回りでもしてきたら?君の噂も広まってきたことだし、顔を見せるのも兼ねて。生徒とか先生とかと少し交流してみなよ」

「見回り?うーむ」

「あれ?気が乗らない?」

「いや、また変に怪しまれて襲われたりしないかと……」


 朝方、もうすぐ一限目が始まろうという時間、ダズは警備員室を飛び出し二階にいた。これまで施錠時などに訪れたことはあったが、生徒がいる教室を見るのはダズにとって初めての体験だった。しかし、今は授業中。生徒たちの邪魔はできないので、まともに中を覗くことはできない。

「うーむ。ミキの様子でも見ようと思ったが無理そうだな。昼休みまで時間潰すか」

 ということでどこに行こうかと思っていたとき、この前理江が言っていたことを思い出した。

(そういえば、超人は授業に出なくていい権利があるとか言ってたな。もしかしたら暇そうにしてる奴がいるかも……?)

 超人を探そうということになったダズはとりあえず図書室に向かった。一度行ってみたかったというのもあるが、やはり学校での出会いといえば図書室だろう、と思っていたからである。(ダズは学生時代、かなりのドラマ好きで、当時一番好きだった『ハイスクール・ジュードー』での主人公の学園生活を理想としていた。その中で主人公がヒロインと出会うのが図書室である)

 しかし残念ながら図書館には司書のお姉さんが一人しかいないようであった。

「誰もいないのか?いや、待てよ……あそこにいるのは…教師か?」

 よく見ると、図書室の一角でずいぶん大きな書物と格闘する教師風の女性の姿があった。なにやら調べ物か勉強でもしているようで、唸るように書物に向かって苦闘している。

「……う~ん。あれ?ここの計算が間違ってた?」

 彼女はどうやら数学の問題を解いているようで、ダズが近づいてみてもこちらに気づいていない。

「う~ん、あれぇ?解が一つしか出てこないよ。どこがおかしいの~?」

 ダズは彼女の手もとを覗くとごちゃごちゃとした数式が並んでいた。これはすべて彼女の計算のようで、ダズはそこからもとの問題をたどっていく。

(へぇ。こりゃ難しいや)

「う~もう一回ここの計算を……」

 ダズは少し手伝ってあげることに。

「これは式をもう一つたてれば解けるよ」

「?…………あ。そっか、そうすればこれが……」

 集中した彼女はダズには気づいていないようだったが、ヒントをもとに瞬く間に式をつくり計算していく。その様子から彼女が智者であることがうかがい知れる。

「で、できた~。しんどかったよ!ふぃー……ん?」

 解き終わって背伸びをしたときに、彼女はやっとダズの存在に気づく。

「……」

「解けてよかったね」

ガタガタッ! 

 彼女は驚いてか、椅子を倒しながらあとずさった。目を見開き、白黒させながらダズを見ている。

「あー、そんなに怖がらなくても……」

 いいよ、とダズが言い切る前に彼女は荷物を持って入り口に走り出した。が、入り口手前で止まり、もう一度戻ってきて倒した椅子を片付けた。そしてダズと目を合わせないようにしながら、そそくさと退出した。

「んー。俺ってそんなに怖いかなぁ?」

(ダズ:身長193cm 体重121kg 風貌・筋肉隆々、外国人。目の前にいたら化け物以外のなんでもないであろう)


今日の12時にもう一話更新します!

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