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Operations

 生徒会室――――

「ふふ、何だかんだで思惑通りになってくれたわね」

 生徒会長席では美里が嬉しそうに笑みを浮かべ、理江はそれを見て呆れている。

「はぁ……。塔子には悪いがな」

 ダズが地下から出てきてからの一連の事柄は、もちろんすべてが美里の策略のうちだ。

「攻撃のための大義名分と他の超人への知らせ(・・・)にもなったわけよ。一石二鳥ね」

 美里の作戦はつまり、塔子をダズにあてることによって、力量を知らない相手に対して動こうとしない超人達にダズの能力の高さをしらしめ、さらにダズに対する攻撃に『仲間を攻撃した(泣かした)ため』という理由(塔子が負けることは想定済み)をもって大義名分としたのである。

「これで合従策が生きてくるわ。私に楯突いた罪は重いのよ」

「なあ、どうも今日のあの男の様子を見ていたら、それほど悪い人間には見えなかったぞ。この前は悪人そのものだったのだがな」

 美里は理江の言葉を聞いて「呆れた」と一言。美里に言わせれば理江は甘いらしい。

「そんなだから梅沢にも舐められるのよ。武士道精神もいいけどもっと己を誇示しなきゃ」

「口が過ぎるぞ、美里」

 理江はこの前退治したときの目で、軽口をたたいた美里を睨みつける。美里は軽く両手を上げて首を横に振り、自分に悪気が無かったことを示した。

「とりあえず皆を集めましょうか。私は校内の超人に招集をかけるわ。理江は運動部を頼むわよ」

「心得た。しかし……『廉華』はどうする」

 その名を聞いた瞬間、美里の表情が強張る。

「……動くかしら?」

「分からん。だが、奴に限って静観するという事はありえんだろう」

 二人の間に沈黙が流れる。廉華という超人の存在は二人にとって、いや、この学校にとっても重い。二人に決断をためらわせる理由がそこにはある。

「やはりやめるか?あの男はそれほどのリスクを負って打ち倒すべき相手ではないと思うぞ」

 しばしの逡巡の後、美里は口を開いた。

「いえ、やるわ。廉華も私の策に組み込む。彼女の本質は『武』。使い方を見誤らなければ、私のような人間にとって最も動かしやすい人間よ」

 理江は美里の考えを聞き心底驚いたが、その自信のある表情を見て薄く笑った。

「いいだろう。我らが敵はあの男だ。任せたぞ美里」


「ぶえっくしょい!?…ズズ。何だ誰かに噂されてるような……。んん?……電話が鳴ってる」

 後ろポケットからケータイを取り出してサブディスプレイを覗くと、表示は『倉橋大和』。(実の話、ダズのケータイに電話をかけてくるのは殆ど倉橋でしかない)

「はい。何ですか」

「もうそろそろ下校の時間だよ。今日はまだ神代さんに会ってないでしょ。一応挨拶をして寮まで送ってあげなさい」

「俺は彼女のボディーガードじゃないぜ?」

「何を言ってるんだい。君は全校生徒のボディーガードだろう。それに彼女はまだ学校にも不慣れだろうし、知り合いの君が気にかけてあげなくてどうするんだい。とにかく頼んだよ」

 倉橋は言いたいことを一気にまくし立てるように言うと、さっさと電話を切ってしまった。

 このまま、倉橋の言を無視するのも悪いので、ダズは渋々と神代のクラスに向けて歩き出した。

 向かう途中にふと誰かの視線を感じた。

(うん?誰かに見られてる?……物珍しいから注目されてるだけか)


「ふんふん。なるほどなるほど。彼は今から2-3に転校生のお嬢様を迎えに行くわね。っていうことは…こうだから……二時間後くらいに寮前広場がいいんじゃないかしら」

「おお、さすが情報の神様!そんなことまで分かるのか!」

 校舎の影からダズの動向を窺っていたのは、今朝の喧嘩のときにダズが話しかけた元気のよさそうな生徒と『情報の神様』と呼ばれた眼鏡の女生徒。眼鏡の女生徒は小さな通信機器を覗き込んで何かを操作している。

「早く美里様に報告しなくちゃ!」

「もう、報告した。今頃は美里が動いてるとおもうわ。それより、私は本当に廉華についていなくていいの?」

「美里様が大丈夫だといったので、大丈夫なんですよ!そんなことより私たちも準備を進めましょ!監視は福崎さんが請け負ってくれる筈ですし」

 眼鏡の女生徒は近くの木を見た。

「福崎はそこら辺にいるの?」

「あはは!わかんないです!あの人を感じれるのは廉華くらいですからね!」


『目標は二時間後に寮前広場。誘導頼むぞ』

 裏門、両手にバンテージを巻いた少女は秋月理江からの通信を受けた。

「了解」

 通信機器を横に放り目の前を見やる。眼前には鉄パイプを携えた生徒。髪は長く、優秀な学校にしてはめずらしく金髪に染め上げられている。

 その生徒は鉄パイプで少女を指していった。

「ボクシング部主将“柿崎 亜矢音”。俺に一騎打ちを挑むか」

「“篠崎 廉華”。負けるつもりは無いぞ」

 廉華は鉄パイプを地面に突いて、せせら笑った。そして肩に担ぐようにして持っていた鞄を放り投げる。

「ふふふ、負けるつもりじゃあ困る。まあ、わざわざ私に喧嘩を売るくらいだから、きっと何かあるんだろうが……それはどうでもいい。せっかくだからせいぜい足掻いてくれよ」

 亜矢音は拳を構えた。軽く足を開いてファイティングポーズをとる。

「貴様も私も同じ超人。油断した貴様の顎を打ち砕いてやる」

「やってみな!!」

お読みになられた方々に折り入ってお願いがあります。

実はこの『中古プロレスラーとスーパーガールズ』という題名を作者はあまり気に入っておりません。自分ではいい名前が出そうにないので、お読みになられた皆さん、よかったら感想に題名案を書いていただけないでしょうか。なかから一番しっくり来たものを選ばせていただきます。採用の方には後ほどお知らせいたしますので、皆さんどしどしお寄せください!

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