第16話:再練(さいれん)
皇都の外れ、霧深い神社の境内で、一条雄介は己の限界と対峙していた。
「冥鳥」の使用による存在の希薄化。それを繋ぎ止めるのは、おやっさんの指導による過酷な精神変革だった。
「いいか雄介、お前はこの世界の住人ではない。だが、この世界を愛する心だけは本物だ。その『楔』を魂に打ち込め!」
神主としての厳格な表情を見せるおやっさんの前で、雄介は神器との同調を深めていく。
一方その頃、皇立科学研究所の地下深層。
所長の小野寺和也は、幾重ものセキュリティを解除し、広大な開発フロアへと足を踏み入れていた。
そこには、解体されたメデューサ戦の兵装「カドゥケウス」のデータをもとに、膨大な予算と最新技術が投じられた光景が広がっていた。
「所長、振動弾の出力、安定しません。これでは魔人の表皮を貫く前に回路が焼き切れます」
「……ならば、回路そのものを生体金属で作り直せ。エネルギー源は、クロウから採取した極微量の残留波動をエミュレートするんだ」
小野寺は、巨大なカプセルの中で調整を受ける「それ」を見つめた。
それは、クロウの戦闘データを徹底的に解析し、人間が制御可能な「正義」として形にした結晶。
「霧島室長が時間を稼いでくれている間に、我々は『人類の盾』を完成させねばならない。……たとえ、それが禁断の領域に足を踏み入れることになってもだ」
小野寺の冷徹な眼差しの先で、金属の骨格がゆっくりと、人間に近いシルエットを形成し始めていた。




