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サンタ見習いときらきら  作者: 上条ソフィ


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3/3

 ほんとうは、こんなことをしてはいけないのです。

 それでもパトリックは、ソリを走らせました。

 走って、走って、トナカイは疲れて止まりました。


 目の前の建物からは、灯りがもれています。

 温かい部屋の中にいたのは、きれいなおくるみに包まれた赤子でした。


 赤子は小さい手をぎゅっと握りしめながら、すやすやと眠っています。

 パトリックは吸い寄せられるように、窓ガラスに顔を近づけました。

 赤子が突然泣きはじめます。

 その姿はきらきらと輝いていて、泣き声ですら、光が弾けるようです。


 パトリックの目から涙がこぼれました。

 泣いたのなんて、いつぶりでしょう。

 慌てて赤子のお母さんが赤子を抱き上げます。

 パトリックは、お母さんの胸に抱かれる赤子を見続けました。


 頭に浮かんだのは、生まれてすぐに息を引き取った一番末の妹の姿でした。


 この子がすこやかに、大きくなるといい。

 パトリックは天に祈りました。


 ◆◇◆◇


 それからパトリックは、時々その子のもとを訪れました。


 ほんとうはこれもいけないことです。

 サンタが子どもに会えるのは、クリスマスの時だけ。

 それでもパトリックは、「これは、この子が大きくなって、サンタさんに手紙を書くようになったら、好きなものをプレゼントできるようにするためだから」と言い訳をして、その子のところに通いました。


 弥生という名のその子は、パトリックの願い通り、すくすく成長しました。


 お友だちとけんかをしたり、先生に叱られたりして落ち込むことはあったようですが、笑顔の眩しい元気な子どもでした。


 パトリックは毎年、サンタさんといっしょに、プレゼントを渡しに行きました。


 やがて弥生がサンタさんに手紙を書かなくなってからも、パトリックは影からそっと、弥生を見守りました。



 弥生が働き始めてからのことです。弥生はどんどん元気がなくなっていきました。


 笑うことも少なくなって、疲れてごはんを食べないこともあります。


 そして、またサンタさんに手紙を書くようになったのです。

 願いは毎年同じ。


『愛をください』


 サンタ宛てに手紙が来たからには、サンタさんはその子のお家を訪れなければなりません。サンタさんとパトリックは、弥生の家を訪ねました。弥生は疲れた顔をして眠っています。


 パトリックはなんとか元気になってもらいたいと思いましたが、きらきら一番星を渡すことしかできません。

 弥生の欲しい『愛』は、渡すことができないのです。


 そして、ついにパトリックはサンタさんに釘を刺されてしまいます。


 一人の子どもをえこひいきしてはいけない。

 サンタはすべての子どもに平等に、優しくすること。


 これがサンタのおきてだからです。


 それでも、サンタさんは言います。

「およめさんにするなら別じゃがな」、と。


「そんなつもりなんて、これっぽっちも考えていなかったです!」と、パトリックはサンタさんに慌てて言います。

 でも、サンタさんはおもしろそうに笑うばかりです。


「およめさんなんてことは、考えてないったら!」

 そう言い訳しながらも、どうしても弥生が心配だったパトリックは、サンタさんに一つお願い事をしました。


 パトリックは、今までサンタさんにクリスマスプレゼントをねだったことはありません。自分がプレゼントをもらうより、もっと世界中の子どもたちにプレゼントを配りたかったからです。


 パトリックが初めてねだったクリスマスプレゼントは、「弥生に会いたい。会って、プレゼントを渡したい」ということでした。

 サンタさんは嬉しそうな笑顔を浮かべて、「行ってきなさい」とパトリックの背を押しました。


 パトリックはクリスマスの日に、弥生に花束を渡しました。


 赤と緑のクリスマスカラーのバラと、ピンクのバラです。


 昔、ずうっと昔に、ママンが言っていたのです。

「愛する人にはバラを贈るといいわ。赤のバラと、そうね、その子が好きな色のバラが良いわね」


 弥生の家はピンクのものがいっぱいなのです。だから、きっと弥生も気に入ってくれるはずです。


 パトリックが初めて愛を込めて作った花束は、冬の間中、ずっと弥生の部屋をほんわりと照らし続けました。


 おしまい

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