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パトリックはりっぱなサンタになるため、いっしょうけんめい働きました。
できることはどんどん多くなりました。
サンタさんは子どもたちに、その子の好きなプレゼントを配っているのではなくて、ほんとうは、きらきら一番星を配っているのだそうです。
サンタさんからもらったきらきら一番星は、ずっと心の中でひかり続けます。
それが、子どもの希望となるのです。
もっと幸せな子どもが増えてほしい、とパトリックはがんばりました。けれど、そんなパトリックを見て、サンタさんは困ったように笑います。
サンタさんは、パトリックにも幸せになってもらいたいのです。
パトリックは首をかしげました。なぜサンタさんがそんなことを思うのか分からないからです。そして、「今でも幸せです」と言いました。
ですが、サンタさんは困った顔のままです。
何十年も、パトリックはサンタさんの弟子として働きました。
パトリックはどれだけ経っても子どものままです。でも、パトリックはそれでいいと思いました。
大きくならなければ、ずっとサンタさんといっしょに働けます。
あるクリスマスイブのことです。一年で一番大切な仕事を終えた二人は、クリスマスランドに帰ってきました。
サンタさんはパトリックに、ホットチョコレートを作ってくれました。甘くて温かいホットチョコレートの香りが部屋にあふれます。
パトリックは、歯が溶けそうなほど甘いホットチョコレートに、ふうふうと息を吹きかけます。
こんなに幸せな時間なのに、サンタさんは悲しそうな顔をしています。
「サンタさん、どうしたのですか? どこか痛いのですか?」
パトリックはサンタさんに聞きました。
「パトリックよ、わしは、お前さんにも幸せになってもらいたいんじゃよ。その話をしたことは、覚えているか?」
サンタさんはパトリックを抱きしめながら優しく問います。
パトリックは黙って頷きました。その話を聞くのは、本当はちょっと嫌でしたが、サンタさんの話ならきちんと聞かなければなりません。
「今のお前さんは、ちっとも幸せそうに見えないのじゃよ。わしはお前さんをここではなく、家族のいる天へ連れて行った方が良かったのかもしれないの……」
サンタさんは悲しそうにつぶやきます。
パトリックの心臓はどきりと跳ねました。サンタの仕事をすればするほど、世界中の幸せな子どもと不幸な子どもの差に、胸が押しつぶされそうになっていきます。
サンタさんにはそのことを言っていないはずなのに、サンタさんはパトリックの気持ちをわかっていたようです。
パトリックは「もっと仕事をがんばるから、そんなこと言わないでください!」とお願いしました。
サンタさんは「また今度ゆっくり話そう」と言って家に帰って行きました。
パトリックは胸がむしゃくしゃして、こっそりトナカイを小屋から出して、クリスマスランドを飛び出しました。




