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金色の髪に翡翠の瞳、ゲームで見た主人公そのも
の。この子がノエル=ウィリアム。主人公なだけあって、もうなんかキラキラ度合いが違う。
すげぇ……ゲームじゃ姿を見ることはあんまりなかったから実感なかったけど、こりゃ性別関係なく惚れるな。シャルルを破滅に追いやる存在だと分かってても、好意を抱いてしまう自分がいる。
「ユウ」
「へっ」
「ぼーっとするな」
「ご、ごめんシャルル。えっと、俺はユウって言います。こっちのシャルルとは双子。よろしくねノエルくん」
「よ、よろしくお願いします!」
差し出した手をぎゅっと両手で強く握られ驚く。普通に挨拶したつもりだったけど、威圧感でもあったのかな。肩も少し震えてるし、ただの挨拶にこんなに強く握り返してくるなんて。よっぽど緊張してるんだな。
「……ユウから紹介あったけど、僕はシャルルよろしく。僕との握手は別にいらなそうだからしないよ」
「こらシャルル、せっかく兄弟になるのに冷たくすることはないだろ」
「うるさい」
「ユウ兄様ぼくはシャルル様との握手がなくても……」
「はい握手ー」
二人の手を取って無理やり繋げる。シャルルは分かるが、何故か怪訝そうなノエル。やっぱシャルルの言葉がキツすぎて怖いのかな。あ、でも俺の時もちょっと変だったし、やっぱ俺達のこと苦手なのかな。
そういや主人公はシャルルと出会った時から苦手って言ってたな。初手から嫌悪感がヒシヒシと伝わってきて辛かったって。
なら愛想良くしなきゃだろ。何事も最初が肝心。
「おいユウ勝手に何してる」
「に、兄様……」
「何って握手。これから寝食を共にするんだから、挨拶はちゃんとしなきゃだろ。握手はその証」
「「…………」」
「シャルル怖い顔しない。ノエルも大丈夫だから、そんなに緊張しなくていいよ」
ふぅ、少しは和らいだかな。種類は違うけど、なんか二人共ピリついてヤだったんだ。これから長い間共に過ごすんだから仲良くして欲しい。
それに仲良くしておけば、破滅を回避することに繋がるかもしれないし。
「さて、そろそろいいかな三人とも」
「はい、父上」
「あっ、はい」
「……はい」
突然上から声をかけられ驚いて見ると、これまた美形がそこにいた。いわゆるイケおじ。ノエルに目がいってちゃんと見てなかったけど、シャルルの父だけあって綺麗な顔をしている。
シャルルも俺も大人になったらこうなるんだろうか。それは楽しみだな。
「挨拶が済んだのなら朝食にしよう。その後はレイ、ノエルに屋敷の案内を。二人はお勉強を頑張るんだよ」
そう言うとイケおじ……は失礼だよな。まだ違和感があるけど父上って呼ぶか。
父上はノエルの手を引いて歩き出す。その後ろにレイが付き、俺とシャルルは最後尾について
歩き出す。
すると突然シャルルに手を握られ引き寄せられる。そして前を歩く三人に聞こえないよう耳打ちをされる。
「おいなんで勝手なことをした。僕はあいつと握手なんかしたくなかった」
「勝手って……仲良くした方がいいって思ったんだよ。良好な関係を築いたら破滅しないで済むかもだろ」
「……お前は甘いな。その手は最初の内に検証済みだ」
「てことは……」
「ああ、もちろん失敗だ。以降、僕はあいつとは上辺でも仲良くしないと決めている。無駄だからな」
「無駄って……そんなこと言うなよ」
「仲良くしようとしても向こうか嫌って、僕を破滅するんだ無駄だろ」
「シャルル……」
「……とにかく、あいつと仲良くするのだけは無理なんだ。他の方法にしてくれ」
一瞬シャルルの顔に悲しみが見え、手を握り返そうとすると。突き放すように離されてしまった。シャルルは先に行き、俺は一人取り残されてしまう。
そんな寂しいこと言うなよ。無駄かどうかはまだ分からないだろ。俺のようなイレギュラーが生まれたんだ。今度はきっと仲良くなれるかもしれないだろ。拒絶しないでくれよ。
ぐっと手を握る。置いていかれないよう前を行く背中を追いかけ、話さないよう握りしめる。
「急になんだ!」
「俺はシャルルのこと好きだから!」
「なっ!」
「絶対に離れないから。だから一緒に行こ」
「……勝手にしろ」
小さな力で握り返される。それがあまりにも嬉しくて、つい顔が綻んでしまう。
「うん、勝手にする!」
「うわっ!分かったから力を緩めろ!」
「えへへ」
「おやおや二人は本当に仲がいいね」
「旦那様、あれはどちらかと言うとユウ様がじゃれてるだけです」
「……ずるい」
「ノエル?どうしたんだい」
「ぼくも兄様と手を繋ぎたい……シャルル様ずるい……」
一人浮かれていた俺も、俺を構っていたシャルルも気づかなかった。ノエルから向けられる歪で熱の籠った視線に。