表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役の双子の弟になった  作者: もち


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

21/22

21

 お腹が痛い。ズキズキとした痛みと身体が熱いせいで、意識がハッキリしない。ふわふわと夢見心地だ。


「ユウ……辛いか?」

「んっ……」

「ちゃんと守れなくてごめん」


 シャルル泣いてる?泣かないで、俺シャルルには笑って欲しい。

 ぼんやりとした意識の中、手探りでシャルルの手を求める。良かった、こんな状態でも感触だけはハッキリしてる。


「熱、辛いよな」


 冷たくて気持ちいい。少しだけ楽になった気がする。


「半分だけでも僕に移ればいいのに……」


 ダメだよ。シャルルはもう辛い思いしなくていいんだから。痛いのと辛いのは全部、俺が受け持つって約束したから。この熱も痛みも俺だけでいい。


「早く……目を覚まして」


 返事をしたいのに声が出ない。シャルルに伝えたいことがあるのに。


「ユウ……守れなくてごめん……」


 何度も謝らないで、俺はシャルルを守れて嬉しかった。俺がこの世界に来た意味を果たせて良かったよ。

 シャルルを救えたら、そのまま居なくなってもいい。なんて最初は思ってた。でも今は、ちゃんと伝えたい。あの日の返事を。




 *




「……んんっ、何時だ」


 目を擦りながら起き上がる。熱にうなされていたせいか、まだ少し身体はだるさが残る。ぼんやりとしながら辺りを見渡すと、そこは今はもう懐かしいはずの。


「俺の部屋……?」


 だけどここはウィリアム家の俺の部屋でも、アランと同室だった寮とも違う。シャルルがいる世界に転生する前に生きていた部屋だ。


「シャ……ル、ル……?」


 大きなベッドも調度品も、窓から見えていた西洋風の景色もない。代わりのようにあるのはシングルベッド、使い古された机、窓からは遠くにビルが見える。

 近くにあったスマホを取り画面を見る。日付を見た瞬間、忘れていたこの世界の昨日が鮮明に思い出された。


「あっ……いやだ……そんな……嫌だ!嫌だ!」


 そして記憶は勝手に上書きされていき、シャルルの世界で過ごした日々の記憶が。


「嫌だ!忘れたくない!お願い!止めて!」


 パニックになりながら頭を掻きむしる。

 嫌だ、せっかく会えたのに、忘れたくない、奪われたくない。お願いだから、これだけは奪わないで!俺はまだ何も伝えられてないから!お願いだから俺をシャルルが存在する世界に戻して!何もいらないから、辛くても俺はシャルルがいる世界で生きたい!

 願えば願うほどシャルルの声が、思い出が、顔が消えていく。


「嫌だ、これだけは、これだけは奪わないで……」


 最後に握った手の感触すら消えていく。そして掻きむしりたくなるほどの胸の痛みも、波が引くように離れていく。


「お願い……だから……」


 泣きながら蹲って、奪われないよう必死にもがいた。

 やっぱり現実はいつも俺に残酷だ。


「シャルル…………あれ?俺、なんで泣いてるんだ」

「ユウ!朝からなに暴れてんのよ!って、なんで泣いてんの?」

「姉さん……俺にも分かんねぇ」

「なにそれ、どうせ悪い夢でも見たんでしょ。受験終わったからって怠けてるから変な夢見んのよ」

「悪い夢、か……そうかも」

「ゲームの攻略依頼した私も悪いけど、変な夢見るくらいならゆっくりでいいから」

「あー……うん、分かった」


 姉さんが部屋から出ていった後、やっていたはずのゲーム画面を見る。


『TRUE END』

「クリアしたんだ。でもどんなエンディングだったけ?」


 エンディングの内容は気になるが、今はとにかく顔を洗いたい。お腹も空いたし、早くリビングに行こう。

 それが終わったらエンディング見ようかな。でもずっとゲームばっかやってたし、今日は久々に外に出ようかな。また夢で泣きたくないし。


「ゲームは帰ってきてからやるか。あーお腹空いた」


 なにか大切なことを忘れてる気がするけど、思い出せないなら大したことじゃないだろう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ